「RくんとHちゃんのケンカから感じる上町の幅」(上町園内勉強会、事例)
RくんとHちゃんのけんかから感じる上町の幅
2023年4月4日 木村記
赤ちゃんスペースで鏡の場所の取り合いをしている、HちゃんとRくん。
「〇〇ちゃんはだめー!」
「〇〇くんはいいよ」
が口ぐせのおふたり。
そういう時期よね。ふたりにとって、誰々はだめ、いいよ、はその人との距離をはかっているから。
本当にその子が嫌いとか、好きとかそういう話ではない。
そんな2人は一緒に仲間になって、周りの子にだめ!という時もあるけど、たまに、お互いに〇〇はだめ!とか、ものの取り合いとかでけんかになる。
それが今日は、鏡だったのだ。
今日は勢いがちょっといつもより強くて、こっちにもあるよ、とか、もう一個探しに行こうとか、そういう話ではないみたい。
2人ともガンとして譲らず、押し合いは続いた。
すぐ横で見守っていて、Hちゃんの視線がけんかの相手のRくんではなく、私に向いてから、もう、Hちゃんは体から力が抜けてきたので、私は横から言葉をかけた。
「Hちゃんもこの鏡がつかいたいんだね」
「Rくんもこの鏡がつかいたいんだよね」
「どうしたらいいんだろうね」
「もうさ、Hちゃんはけんか(押し合い)はやめたみたいだよ」
なんて声をかけながら、Rくんの力も弱くなっていくのを感じる。
そこにIくんと、Tくんが通りかかる。
Iくん かがみ、こっちにもあるじゃん
Tくん じゅんばんにつかえばいいよ
木村 HちゃんもRくんもこっちがいいんだって
Iくん そうか、、、こうやってつかえば?
と、鏡にうつるRくんの顔の上に、Iくんの自分の顔を乗っけるようにして、2人で鏡にうつる。
けれど、表情も変わらず、うぇーんとHちゃん。またHちゃんの腕をつかむRくん。Hちゃんもキリッと表情に力が入り、またお互いの力が拮抗するも、Hちゃんの力が抜けて、同じように、また私も声をかける。と、Rくんの力も弱まる。
次は青山さん(保育者)が通りかかった。
青山さんは、Hちゃんに声をかける。
青山さんも同じくHちゃんの気持ちを代弁して、こっちにもあるよ、とかもう一個ないかな?と話す。
けんかとはまた違った、「Hちゃん何歳になったの?」とか違う話題も話したり。
と、なんかまたHちゃんのちょっと表情が力が抜けたというか、やわらかくなったというか、どうしてもこれ!という取り合いのけんかの気持ちから、ちょっと抜けてきているよう。
すると次には、遊びにきていた、Kちゃん(卒園児、小学1年生)がやってくる。
「どうしたの?」と聞くKちゃんに、「2人ともこの鏡がいいんだって」と話していると、Kちゃんは「あー、、」と、ちょうどいい間がうまれる。
(Kちゃんってこういう間がほんとうまい。とても心地がいい。)
その時、まっきー(保育者)が「そこにもう一個鏡あったんじゃないかな?」と教えてくれる。
探してみると、あった!!
あった鏡をHちゃんやRくんに見せると、Kちゃんが鏡を受け取って、ここがいいかな?と壁に付けて、支えてくれていた。
養生テープで貼り付けている頃には、もうHちゃんの表情もやわらんでいて、Rくんは「いいよ」とあんなに取り合っていた鏡を使っていい
よ、とHちゃんに話していた。
このやり取りを見ていて、上町って、いろんな人がいて、いろんな人が関わり合っているなと思う。
その時の気持ちを受け取ってくれたり、全然受け取ってなかったり、その子のアイディアをくれたり。
その気持ちを受け取る、受け取ってないは、年齢や発達という面で、受け取っちゃうなのか、受け取ってあげる(大きいい人が小さい人の)なのか、大きい人、小さい人関わらず受け取っていないというか、見えてないというか、距離感なのか、いろいろあるし、アイディアは大きい人だからこそのアイディアだったりすることもあるけど、その「人」であって、年齢というより、いろんな人がいるんだなという感じだ。
でも、これは上町が異年齢で、ごちゃまぜにいる、みんなで一緒にいるからこその、そのいろんな人という幅があって、その幅で、私も含めて、そこにいる人たちが救われてることとか、生まれてくるものはあるんだなと思う。
今回はそんな、いろんな人が、いろんな幅で関わってくれたからこそ、少しずつHちゃんとRくんの気持ちが変わっていって、軽くなっていって、また違う方向へ向いていく、
そんな感じがした。