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【読書日記】3/17 思い出を積み積み生きていく。「つみきのいえ/加藤久仁生」

つみきのいえ
 絵 加藤久仁生 文 平田研也 白泉社

子供の学校の読み聞かせ当番に行ってきました。
好みがさまざまな他所様の子供たちに向けての読み聞かせ、どんな本が良いのか選ぶのが難しいです。
コロナ禍で、3年ほど朝の読み聞かせ活動が中止されている間に、担当クラスの子供たちはすっかり大きくなっていて、それも本選びを迷ってしまう原因です。
しかし、再開できたことがうれしく、いそいそと出かけてきました。

今回選んだのは「つみきのいえ」
加藤久仁生監督による短編アニメーションの絵本版です。

少しずつ水面が上昇していく町、海の上に突き出た家でひとりのおじいさんが暮らしています。
水面が上昇するたびに積み木を積み上げるように家の上に家を建てて暮らしてきたのです。
3年前に奥さんを亡くしたおじいさんは、この家で魚を釣り、鶏や小麦を育てて暮らしています。
ある日、建て増しのための工具を海中におとしてしまい、潜水服を着込んで拾いに潜っていきました。
工具は三つ下の階は、奥さんと死に別れた家で見つかりました。

工具が見つかった後もおじいさんは、さらに下へ下へと潜っていきます。

カーニバルできれいにかざりつけた家。
娘を嫁がせた家。
幼い子供たちとくらした家。
初めての子供が生まれたときの家。
結婚したときの家・・・

下へ下へ。記憶をたどり続けるおじいさんの最初の家は・・・。

やわらかで落ち着いた黄色を基調とした絵、
独特のフォルムの家や部屋の様子など絵をじっくりと眺めるのも良いです。
淡々と綴られているだけで、特に目覚ましい事件が起きるわけでもないのですが、切なくもあたたかい気持ちがこみあげる絵本です。

とはいえ、これにジーンと来るのはどちらかというと年を重ねた大人でしょうね。
まだ10年そこらしか生きていない子供達にはピンとこなかったかもしれませんが、今、何気なくお友達と過ごしているこのひとときひとときが、後から思い出したときにかけがえのないものになるんだよ、と伝えたかったのです。

そして、今、ここにあなたが生きてるということは、沢山の人たちの沢山の愛が積み上げられた結果なのだよ、と。
生れてきて、良かったね、あなたとわたし、この場所で出会えて良かったね。
・・・というメッセージを込めて読んできたつもりです。

あっという間に金曜日。
こんなに時が経つのが早ければ、あっというまにおばあさんです。
おばあさんの自分が今の自分を見た時、どう思うのかな。未来の自分にわたしは精いっぱい生きていたよ、と胸を張れる・・・かな。