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【私の100冊】No6 本のもう一つの読み方を知った「花もて語れ」そしてaudible2024
花もて語れ1~13/著:片山ユキヲ 朗読協力・朗読原案 東百道/小学館
「花もて語れ」は、朗読をテーマにした漫画です。
私の100冊の中に挙げた本の中では比較的最近の約十年前に読んだ本です。
子供が生まれてから「読み聞かせ」をするようになりました。
そのうちPTAの活動で我が子以外の子供たちにも読み聞かせをするようになり、我流だと申し訳ない、きちんと学ばないとなあ、と思ってNHKの通信講座を受講したり本を読んだりしてみました。
その一環で出会った漫画です。
両親を事故で亡くし伯母に引き取られた佐倉ハナは、引っ込み思案で人前で話をすることができません。
その頃、朗読を学んでいる青年・折口柊二に出会います。その導きによって朗読の才を見出され学芸会「ブレーメンの音楽隊」のナレーションを見事につとめることができました。
そのことが縁になり就職で上京した後に「藤色朗読教室」に出会い、年齢も立場も様々な個性的な生徒たちと関り、朗読を愛する仲間たちと切磋琢磨し、また、朗読する対象の作品を深く読み込むことで成長していきます。
教科書の音読程度しか知らず、読書と言えば専ら黙読だったのですが、この漫画で「朗読」の奥深さの一端を知りました。
その分かりやすい例として、次の場面があります。
講師の藤色きなりが黙読と朗読の違いを示すためにハナに一文を示します
「その時、私は『お母さん』と言った」
この文を声に出して読んで、と言われたハナは、とまどってしまいます。
そんなハナに、きなりはそれで正解だ、と言うのです。
黙読ならば問題なく読めても、声に出すためにはこの一文だけでは全く情報が足りていないのだ、と。
「どんな人が、どういう時に、どんな距離から」という情報が無ければイメージができず、イメージできなければ声には出せない。
これを無意識で理解できているハナが、朗読の才を見出される場面です。
作品をイメージする。
もちろん黙読でもその場面を脳内で再生しながら読んでいるのですが、自分が声に出して読むためには、もう一段踏み込んでイメージを具体化する必要があり、そのためには作品をより深く読み込む必要があるということに気付かされました。
この漫画に取り上げられた作品は、「やまなし(宮沢賢治)」、「花咲き山(斎藤隆介)」「野ばら(小川未明)」「蜜柑(芥川龍之介)」「注文の多い料理店(宮沢賢治)」「瓶詰地獄(夢野久作)」等、様々です。
比較的有名な作品が多いので、一通り読んだことのある作品が多いのですが、これらが朗読の対象として描かれると、自分は全くこんな踏み込んだ視点では読んでいなかったなあ、と思い<じっくりと一つの作品を味わうこと>の面白さを知りました。
この漫画では、ハナと同年代の満里子、五十土らと朗読を通じて競い合う姿も見どころです。「朗読」にこんな個性の違いがあるのか、こんなに熱い競い合いがあるのか!と驚きました。
読書好きには嬉しい気付きの多い漫画だと思います。
13巻で完結していますが、続編出ないかなあ、と希望しています。
ここで聞きかじった知識は、読み聞かせ活動の際に大いに役立ったのですが、その活動も下の子が小学校を卒業して終了しました。
そのタイミングで、再び「朗読」というものについて考えています。
この漫画で「朗読」の魅力を知ったものの、実際に聴く機会はNHKラジオくらいであまり多くありませんでしたが、昨年からaudibleを利用しはじめたのです。
聴き始めの頃の記事がこちら。
様々な作品が音声化されていて「耳で聴く読書」が可能で、車での移動時、家事の時に重宝しています。
作品を選ぶページには、<お客様の声>欄があり「ストーリー」の評価と並んで「ナレーション」の評価も表示されます。
それを読むと「ナレーション」に何を求めているかは人によって違うことがよく分かります。
ざっくりと「ドラマ」派と「朗読」派に分けられるように思います。
大きな違いは「セリフ」をどのように読むか、でしょうか。登場人物そのものを演じてセリフを「喋る」のか、台詞は文章の一部として「読む」のかの違いかな、と素人なりに考えています。
どちらも良さがあるし、作品によっての向き不向きもあると思うのですが、私は、台詞として演じられるよりは朗読して欲しいと思っている方です。
特に悲鳴だの怒鳴り声だのをリアルに演じられるのは少し苦手です。
色々な読み手さんがいて、それぞれの個性があり、自分の好きな読み方というのも段々分かってきました。
自分でもまた朗読に挑戦してみたいなと思いながら聴いています。
そしてaudibleから年明けには、2024年のまとめ、なるレポートを送ってきてくれました。
![](https://assets.st-note.com/img/1738163599-NuzipsZQA5rVT7PqIRwYJltO.jpg?width=1200)
読書リストは年末にまとめたのですが、そこから浮かび上がる読書歴とはまた異なる読書歴が浮かび上がり興味深いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1738163720-07jtnMwZ4NRWcqJaxk89lEb6.png?width=1200)
運転中の眠気防止が大きな目的なので<軽さ>を意識した選書になっています。
ここでいう<軽さ>とは、主に以下のような特徴を指します
・あらすじがつかみやすい
・展開のテンポが良い
・登場人物の性格が分かりやすい
・テーマが重苦しくない
・再生時間は短め
補足しますと「テーマが重苦しくない」というのは、仕事先に向かう前(終わった後)にどよーんとしたくない、というところからきており、恨みや復讐などの暗い情念の絡むもの、社会派の重い課題を扱ったもの、悲劇的結末などは避けています。
また「時間が短め」というのは、一冊あたりにかかる時間が長くなりすぎると何日も何日もこま切れ状態で聴き続ける羽目になり、訳が分からなくなってくるからです。長編になればなるほど自分で読む時間と聴く時間のギャップは大きくなってきます。
流石に一冊43時間というものは手を出しづらい。
その点、連作短編集は良いですね。一冊分は7~8時間でも一話が1時間半から2時間程度なので行先次第ですが片道で聴き終わるのですっきりします。短編集でなくとも章立てが明快なものも好ましいです。
このように、自分の生活に組み込まれた感のあるaudibleですが、ひとつ、問題があるとすれば、audibleで聴いた本のことを思い出すと必然的にその時に向かっていた仕事先のことも芋づる式に思い出してしまうことです。
よく「この曲を聴くとあの時のことを思い出す」と言いますが、まさか朗読も同じとは。
仕事なので、そんなに楽しいことばかりではありませんから、あんまり余計な色はついてほしくないなあ、と少々困っています。
なお、2024のまとめの最後はこう結ばれていました
『新しい年が、ワクワクする冒険やミステリー、そして満足のいくオチに溢れた1年になりますように。』
車に同乗する子供のために、時折落語をかけていたから<オチ>を使ったまとめ文章になったのだろうなあ、と、恐らくはAIによる文章生成なのでしょうが、上手にくオチをつけられた>気分で面白く読みました。
さて来年はどんなまとめが来るかな、なども楽しみに「ストーリー」と「ナレーション」の両方から今日の1冊を選んでいます
おまけ<私的audible作品2024 Best3>
「夜の写本師」
著者/乾石 智子
ナレーター/下山 吉光 兼高 美雪
再生時間/9時間27分
月石、黒曜石、真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。だが、育ての親が目の前で殺されたことで、彼の運命は一変する。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジスト。アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。敵をうつべく、カリュドウは〈夜の写本師〉としての修行をつむが……。
「水車小屋のネネ」
著者/津村 記久子
ナレーター/神崎 寿美代
再生時間/16時間1分
誰かに親切にしなきゃ、
人生は長く退屈なものですよ
18歳と8歳の姉妹がたどり着いた町で出会った、しゃべる鳥〈ネネ〉
ネネに見守られ、変転してゆくいくつもの人生――
助け合い支え合う人々の40年を描く長編小説
「シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗」
著者/高殿 円
ナレーター/山口 立花子, 近藤 唯
再生時間/5時間54分
だめんず好きワトソンと半電脳探偵のロンドン女子的生活第2弾
2013年秋、ベイカー街221bで顧問探偵シャーリー・ホームズと同居生活を送る女医のジョー・ワトソンに、叔母キャロルがから結婚すると報せが届く。夫となる男性はデヴォン州の名家バスカヴィルの当主で、ジョーは屋敷に招かれるが、脱獄した殺人鬼と魔犬伝説が街を騒がせ、さらに叔母夫妻に脅迫状が。ジョーたちに見えない危険が迫っていた。半電脳と人工心臓のためロンドンを離れられないシャーリーはジョーを助けられるのか!? 性別逆転現代版ホームズ・パスティーシュ第2弾登場。