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【詩歌の栞R7】 2/28 数千年前から変わらない 心。吉野ケ里にて

先日、吉野ヶ里をたずねました
弥生時代の「クニ」。日本で稲作が始まり、定住して「ムラ」から「クニ」へ人々の社会が形成された時代の遺跡です

そこの出土品の鏡<連弧文鏡>に刻まれていた言葉が心に残りました
鏡を取り巻くように8つの文字

久不相見 長母相忘

展示品の写真は撮れなかったのですが、袋がちょうどこのデザインでした

読み下すと
久しく相見えず、長く忘る母らんことを

現代語で
長く会わなくても おたがい忘れないようにしましょう

2000年ほど前にこの場所で暮らしていた人たちの声が聞こえた気がしました

今よりもあっけなく命が失われてしまう時代
遠く離れた土地に住まう人とつながり続けることの難しい時代

長く会わなくてもお互い忘れないようにしましょう

優しく切ない祈りのことば

鏡は今と違って日用品ではありません。
祭祀の道具であり、権威の象徴でもあり、国や部族間の贈り物としても使われました

その大切な鏡に刻まれた言葉
誰が誰にあてたのでしょうか

遠くへ行かねばならなかった大切なひとへの贈り物?
国や部族の首長同士の友好の証?
先に亡くなったひとへの祈り?

お墓から出土した副葬品のこの鏡。
大切にこの鏡を抱いて逝った人はどんなひとだったのでしょうか
鏡だけ、いま、この令和の世にある不思議を思うのです

さて、2月が終わり、3月が始まります。
新たな旅立ちの季節、別れの季節でもあります。

その気になればいくらでもつながっていられる時代とはいえ、やはり寂しいものです

長く会わなくても お互い忘れないようにしましょう

心を込めてこのことばを贈りたいと思っています