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【読書日記】3/23 卒業おめでとう。「カーテン・コール/加納朋子」
カーテン・コール
加納朋子 著 新潮文庫
卒業式のシーズンです。今日も袴姿の女学生さんたちを沢山見かけました。
さて、ご縁のあった大学生におすすめ本を問われていくつかお答えした中の一冊がこの本です。
経営不振に陥って春に閉校が決まった萌木女学園、ところが学校側があれこれ手を尽くした救済策からも取りこぼされて卒業できなかった数名の学生たち。
なんとしてでも彼女たちを卒業させるべく、半年間、寄宿舎での特別補講が始まります。
理事長一家の奮闘と心づくしにも有難迷惑の素振りを見せるどんよりとした学生たち。
寝坊、無気力、怠惰・・・思わず眉をひそめてしまう彼女たちの体たらくの根底には様々な事情があることが次第に明らかになってきます。
LGBT、BL、過食、拒食、エナジードリンク、リストカットなど、彼女たちの抱える課題の背景に家族の在り方が大きく影響していることが描き出されていくのですが、子どもを育てている真っ最中の私としては恐ろしいことばかりでした。
親が子に期待するのも、経験に基づいた助言をするのも、厳しい言い方をするのも必ずしも悪いわけではないでしょう。
しかし、時に行きすぎてしまったり、子供の個性にその方針が向いていなかったりとボタンが掛け違うように溝が深まってしまう。
本当に悩ましいことです。私もこの混迷の道に踏み込んでしまうのかもしれない、そう思うと不安でいっぱいになります。
さて、半年間の寮生活の中で、彼女たちはお互いに理解を深め合い、支えあい、心と体を整える中で少しずつ変わっていきます。
萌木女学園は、無事その幕を下ろすことが出来るのでしょうか。
彼女たちの成長物語とともに、理事長夫妻が、なぜこんなにも熱心に「落ちこぼれ」を救済しようとしているのか、その謎も明らかにされてきます。
この理事長、教育者としての言葉には教えられることがたくさんあるので、若いひとにも子育て中の親にもぜひ本書を読んで欲しいと思います。
うーん、この学園が廃校になってしまうのはもったいない。
経営って本当に大事だなあ、としみじみ思います。
それはさておき、この卒業の季節。
新しい舞台へと旅立つ学生さんたちに、理事長が学生たちに最後に語り掛ける言葉を餞にしたいと思います。
父と私で造り上げが萌木女学園は、あなた方の卒業をもって今度こそ、本当に幕を下ろします。あなた方はこれより新しい舞台に立ち、新しい脚本で、新しい人生を演じるのです。どうか失敗を恐れないで下さい。観客を恐れないで下さい。大丈夫。とちったくらいで死にはしません。恥なんて、かいてなんぼです。あなた方の舞台で、あなた方は間違いなく主人公なのですから。
最後に、あなた方の背後に並び咲く、ひまわりの花言葉を捧げます。ついこの間、うちの妻から聞いたんですがね。
「あなたは素晴らしい」
あなた方は素晴らしい。過酷な灼熱の太陽の下で、すっくと天を仰ぐ大輪の花のように、とてもとても素晴らしい。
これは、魔法の呪文です。これから先、何か困難に出会ったとき、自己嫌悪に陥った時、そっとつぶやいてみてください。
「私は素晴らしい」と。
そしてどうかひまわりのように、常に明るい方、暖かい方を目指して進んでください。そうすればそんなに大きく間違えたりしませんから
ご卒業のみなさん、おめでとうございます。