
宇多田ヒカル
#いまから推しのアーティスト語らせて
そう、みんなが知っている宇多田ヒカル。
別に今更もなにも、彼女は過去から現在、未来にかけてとてつもなく進化しているし、それはもちろん僕たちと共に人生を彼女自身も歩んでいるので推しもなにもずっと推しだといえば良いのだろうか。
初めて宇多田ヒカルを聴いたのは小学生の頃。
父親が運転する白いステップワゴンの中、ウーハーがバンバン響きながら、Automatic やFirst Love が流れていた。
家族でおばあちゃん家に行ったその帰り。
家族でボーリングに行ったその帰り。
家族で大きいショッピングモールに出かけたその帰り。
行きにも必ず流れているはずなのだが、思い返すといつも夜のイメージがある宇多田ヒカル。
中学に入り、両親が離婚した。
当時、テレビでは波乱万丈が流行っていて、子育てに明け暮れたパートのシングルマザーが倒れる、というストーリーを嫌ほど観ていた記憶があった。
明確な言葉は覚えていないが、妹と共に父親と暮らす決断をした。
慣れない家事、掃除、洗濯と仕事とのバランスを崩した父親は、今から母親を迎えに行くと言い、強引に僕たちを白いステップワゴンに乗せて母親がいるおばあちゃん家に向かった。
衝動的な行動に結果は実らずとも、父親の様子が怖くて泣きじゃくる僕たちの声をかき消すように、車内では大爆音のTraveling が流れていたのは鮮明に覚えている。
皮肉にも夜の高速道路のオレンジがかったライティングがどこまでも続く様は、Traveling の世界観に合っているし、確かPVも宇宙のような感じだったと思う。
高校、大学と大人になった僕は、今まで単にメロディーを楽しんで懐かしんでいただけの宇多田ヒカルのその素晴らしい歌詞にようやく気付き始めた。
中でも Deep River が好きでその歌詞が遠藤周作の深い河を基にして書いてあることも知れた。
宇多田ヒカルを通して知れた遠藤周作のおかげで本が大好きになった。
社会人になり、今までとは違う社会のルールに辟易し精神肉体共に疲労困憊していた。
疲れて帰宅し、ふとネットフリックスを開くと、宇多田ヒカルのデビュー20周年国内ツアーのライブ映像が更新されていた。
人間活動をするという理由で休業して、永らく見ていなかった姿はショートヘアーの内側が少し刈り上げになっていてとても妖艶でセクシーな宇多田ヒカルだった。
2時間21分の映像は圧巻で、昔の曲はもちろん、今の曲も抜群に攻めていて、後ろのバックミュージシャン達がほとんど外国人なのも世界が支持している証拠だろう。
こうやって自分の人生に幾度となく寄り添ってくれる宇多田ヒカルは、僕の中で宇多田ヒカル'さん'のような親近感でこれからも共に闘ってくれるに違いない。