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マーケティングの範囲と主な対象

マーケティングの概要、マーケティングに取り組む理由や目的を整理したので、今度はその外形を整理してみます。一般的なマーケティングと仮面ライター流のマーケティングの違いも少し織り込んでお伝えしていきます。

前々回の講座でマーケティングの概要を、前回の講座でマーケティングの意義をお伝えして来たので、もう少し具体的な形や役割をお伝えしていきます。なお、本講座も独自解釈が多くなりそうなので、これまでの講座ならびに注意事項も踏まえた上でお読みいただけると幸いです。

■ コレまでの講座
・0-1.自己紹介(講座向け)
・0-2.本編へ入る前に、注意事項
・1-1.そもそも、「マーケティング」とは何か
・1-2.なぜ、「マーケティング」に取り組むのか

上記講座に、目を通していただきました? お読みいただいた方、もしくは続けてご覧いただいている方は次へお進みください。

マーケティング = 利益を上げるための工夫や調整

マーケティングが関係しない部門は基本的にない

マーケティングの業務はどこからどこまで、と綺麗に線引きができればよかったのですが、マーケティング = 「工夫や調整」、マーケティングは「利益を上げるため」に取り組むのであれば、基本的には全ての部署、部門に影響して来ます。特に、計画や戦略を組み立てる要素が関わる部門には根深く関わって来ますので、経営に直結する部分や経営企画、その他「計画」と名のつく業務には専門職でなくてもマーケティング的な業務には取り組んでいるかと思います。

しかし、「全部に関係するんだ」といってしまうと範囲が広すぎるので、仮面ライター流としては一部を対象外にします。主に対象外となるのは、セールス、購買に直接関わる買ってもらうことを促進するための広告、個別の顧客対応やアポイントメント取得に当たるコールセンターやカスタマーサポート、業績には直接関係しないネットワーキングや政治力強化のための取り組み、単純なコスト計算、経費削減だけを目的とした活動や部門です。

個別のお客様の購買行動やアフターフォローに、直接マーケティングとして接触することはあまりないでしょう。また、顧客の購買行動に無関係な部門にも、マーケティングが関係することは少ないでしょう。売り手自身や買い手自身、市場相手に調整や一手間をかける行為をマーケティングとしたので、直接影響を行使したり、個別の顧客と交渉なりその他の行動を起こすなり、個別の顧客とやりとりして成果を上げる場面に姿を出すというのは、あまり想定していません。

また、直接経営判断を下す部門というのも、マーケティングの範疇からは少し外れるでしょうか。あくまでも、「調整」が主務なので決断や判断、実働や実行までは行き過ぎでしょう。

購買に直接関与しない場合は、対象顧客の前や市場へマーケター(マーケティングを専門とする人材)が姿を見せるというのはあり得ます。対外的なコミュニケーションを目的としたPRや広報活動、市場調査などのモニタリング、顧客インタビューなど、人と直接触れ合ったり、対外的な交渉を担当することもあり得るので、完全なる影の存在とは言い切れません。

また、売り手の内部を調整するという観点、リソースの最適化という観点からすると、内部統制や業務変革もマーケティングの一環と言えるので、一般的にはコストセンターと呼ばれる社内の部門に対する働きかけ、IT推進や現状コストの再検討などはマーケティングの範囲でしょう。内部の状態も最終的には価格や商品内容に影響してくるので、顧客の購買行動に影響を及ぼします。そこが買い手にとってのネックになるようであれば、中から最適化できないか検討して、調整を図るのもマーケターの仕事でしょう。

つまり、マーケティングの範囲 = 買い手や市場に繋がる全て。ただし、実際に購買行動へ関与する部門、セールスや広告などは仮面ライターの流儀では基本的に範囲外、ということになります。

マーケターの主な業務

基本的な業務は調査、調整、根回し。内側と外側、上と下を行き来すること

一般的なマーケティングの書籍を広げると、やたらと「フレームワーク」とか「戦略」とか「計算式」とかが出て来ますが、実際にはそれよりも、「人と話すこと」とか「人の反応を観察すること」の方が重要な業務だと考えています。フレームワークなり、数々のテクニックで出てくるのは、話すための材料であったり、人の反応から新たな情報を見出すための手段なので、ここは間違えないようにしてください。

それから、マーケターで勝手に決めないのも大事なことだと思います。例えば、「買い手目線で〇〇を求めているという情報を得た(or 推測した)」として、それを自分たちで決めて商品開発部門なり、経営部門なりに指示をするのではなく、そういう「情報が出たのですが、歩み寄れませんか?」と一手間かけてもらえるかを打診すること、調整の打診をすることがマーケターの役割じゃないでしょうか。

あるいは、商品開発の部門なり、在庫管理の部門が「こういう商品や在庫を売りたい」と言ってきたから、情報発信を担う部署や企画を立ち上げる部門と「どうやったら売れるだろうか」と擦り合わせる、事前に「市場はこういうものを求めているらしい」とか「こういう法令があって対応しなきゃいけない」という情報を製造部門に伝えて、売り出す前に工夫できないか根回しするのが、マーケターの主な仕事だと考えています。

情報や反応を引き出すなり提供するなりして、決断や判断を「促す」ことはあっても、自分たちは促すなり後押しするなりに止まる。そこで実力行使をしなくても受け入れてもらえるように、伝え方を工夫したり、新しいエビデンスを実証したりするのが、具体的なマーケティングということになります。

また、「人と話すこと」や「人の反応を観察する」ために、会議室や事務所のウチソト、自社内と外部(=市場や買い手)、商品開発の現場と営業の現場、経営者と現場社員の間など、縦横無尽に動き回ることも、マーケティングを行う上で重要なポイントです。

座したまま机の上で考えて、各種テクニックを駆使して綺麗な資料を作り上げる、企画書をプレゼンするだけがマーケターの仕事ではありません。外部に働きかける、ウチソトの反応や小さな声を拾い上げる、全社一致の体制を作るためにトップダウン、ボトムアップといった双方向へ情報を行き来させる運び屋を担うといった、額に汗をかく、身体を使うことの方がより重要になってきます。

調整や根回しもカッコよくスムーズに決まることは稀で、気合と根性、泥臭い世界になるでしょう。頭を使って身体を酷使しないクールな職種だと思っていたら、大間違いだと思っていただいた方が良いかと思います。

マーケティングで取り扱うのは、インテリジェンス

インテリジェンス = データやインフォメーションから抽出される価値ある情報

経営判断の意思決定に関わる材料であったり、商品やサービスを大ヒットさせる要因であったり、市場に起こる大変革であったり。単純に収集していれば溜まってくるデータでもなく、そのデータを元に図式化するなりして整理したインフォメーションでもなく、そこから更に「こうではないか」という推察を補完してくれるような決定的な情報をインテリジェンスといいます。

マーケティングで主に取り扱うのは量の多い「データ」ですが、その中からいかにインテリジェンスを見つけ出すか、そしてその情報をいかに活用して売り手、買い手、市場に対して工夫なり調整をかけるか。関係する部署と折衝を行うかがマーケティングの肝になります。

「ただの情報」ですが、企業の運命や市場の命運を握る、大きな影響力を秘めた情報になることもしばしばで、これを見つけられるかどうか、見つけたインテリジェンスを生かせるかどうかで大きな企業に成長できるかどうか、大きなチャンスをつかめるか否かが変わってきます。

このインテリジェンスは、どこに転がっているかわかりません。また、収集されるデータの中にハッキリ埋め込まれているとも限りません。むしろ、直接は感知できないものであることや、「説明できないけど、なんとなくそう思う」といった直感でしか捉えられないこともしばしばです。

経営者の何気ない一言、現場社員の日々の振る舞い、買い手のアンケートや市場の反応など、色んなところから情報を得て、肌で感じて、色んな人たちとやりとりしていく中でやっと見つかるのがインテリジェンスです。

しかも、上手に関係部署を調整して、インテリジェンスを活かし切らなければ効果を十分に発揮してくれないぐらい、繊細なものであることもよくあります。丁寧に取り扱って、買い手や市場に送り出すには、やはりマーケティングが欠かせません。

自社の経営理念を形にするため、また自社の商品やサービスを大ヒットさせて利益を上げるためのヒント、インテリジェンスを見つけ出す、その存在や可能性を示すためにフレームワークやテクニックを駆使しなきゃいけない局面がある。その一連の取り組みがマーケティング、マーケターの仕事なんだとご理解いただければ幸いです。


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長谷川 雄治(仮面ライター)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 ただ、まだまだ面白い作品、役に立つ記事を作る力、経験や取材が足りません。もっといい作品をお届けするためにも、サポートいただけますと助かります。 これからも、よろしくお願いいたします。