本物の悪はとても繊細「ワールドトリガー/葦原大介」別役太一と鈴鳴第一のはなし
この記事はワールドトリガー1~24巻及び、コミックス未収録のジャンプスクエア連載分の内容に触れています。未読部分がある方はご注意下さい。各自の判断でよろしくお願いします。
毎月ジャンプスクエアで楽しく読んでいるワールドトリガーですが、6月特大号で休載されるお知らせがありました。葦原大介先生のご回復を心よりお祈り申し上げます。
ワートリ最新話が読めるのは早くてジャンプスクエア7月号になりましたので、発売を待つ間、現状の最新話をおさらいがてら感想を書いておこうと思いました。
ジャンプスクエア5月号にはワートリ221話と222話が同時掲載されていますが、私が驚いてしまったのは221話の別役太一くんの落ち込みようです。
私は元々ワートリの中では鈴鳴第一(来馬隊)が一番好きなのでよく読み返すのも彼らが出てくるシーンなのですが、閉鎖環境試験といういつもの隊とは違うシャッフルメンバーでの生活をどう過ごすのだろう……と期待と不安が入り交じった気持ちで読み進めていましたが、「本物の悪」こと別役太一くん、めっちゃオチコンドル……。
自分が戦闘シミュで足を引っ張る&自分の発言きっかけで先輩たちが揉め出す&そもそもドラフトで売れ残った上での加入、と確かに落ち込む要素は多いのですが、ここまで精神的に引きずるタイプだとは思っていませんでした。
でも今までのコミックス読み返すと、確かに自分がやったことが上手くいかずに失敗すると、泣いて落ち込んでいる描写があるんですよ(コミックス20巻175話)ただそのときは来馬先輩がすぐ隣に居て、すかさず励ましてメンタルケアしています。
今まで描写があった別役太一くんのやらかしで、分かりやすいところだと鈴鳴支部でのラーメンだと思うのですが(11巻94話)その際も、
・行動原理は『来馬先輩のために何かしたい!』という気持ち
・やらかしたことをちゃんと叱ってくれる今ちゃんの存在
・太一くんのやらかしを笑ってくれる&フォローしてくれる村上くん
・「大丈夫だよ」とまず安心させようとしてくれる来馬先輩
・おまけに食べようとしていたカップ麺よりも太一くんのことを心配してくれる
……という見事な別役太一フォロー体制が形成されています。
そもそも彼が「本物の悪」と読者に呼ばれているのは、コミックス7巻カバー裏の作者コメントが発端です。
重要なのは、『良かれと思ってやったこと』の部分。
同じこのカバー裏コメントで来馬先輩のアクアリウムを壊滅させたことにも触れられているのですが、それも恐らく『来馬先輩の大事なアクアリウムだから、おれもお世話しよう!』くらいの気持ちで触っちゃったんだろうな~……と推測しています。
鈴鳴第一は太刀川さんに「村上と太一はどんな状況でも来馬を庇うよ 鈴鳴第一ってのはそういう部隊(チーム)だ」(12巻102話)と評されるほど隊長に対する忠義心が厚い隊なのですが、自分のサイドエフェクトが原因で人間関係に苦しんでいた村上くんを来馬先輩の言動が救ったように(11巻95話)、恐らく太一くんも鈴鳴に配属されるまでは自分の天稟に内心苦しんでいて、アクアリウム事件のときに血涙を流しながらも許してくれた来馬先輩の存在にものすごく救われたんじゃないかなあと思います。
『良かれと思ってやったこと』=「本物の善意」が、壊滅的な被害を及ぼす「本物の悪」になってしまう。
それが別役太一くんの人生なわけで、それを考えるとしんどすぎてしまう。
来馬先輩がいてフォロー体制が整っている鈴鳴第一だったからこそ、彼はいつも明るく過ごすことが出来て、前からやってみたかったというスイッチョフこと暗闇戦術の提案も実行させてもらうことが出来た(19巻168・169話)ということが、221話でより明確になったなあと思います。
私がジャンプスクエア5月号掲載分を読み終わったときに真っ先に思ったのは「早く太一くんを鈴鳴のみんなに会わせてあげて下さい……」だったのですが、柿崎さんが影浦くんと犬飼くんを同じ隊に採った理由があるみたいなので、それが上手く作用してこの二人の空気が良くなれば太一くんの落ち込みも緩和されるだろうか……?とハラハラしながら続きを待っています。
ワールドトリガーのすごいところは、作中や作者コメントで突然追加情報を出されたり、誰かのセリフやキャラクター同士のやりとりで今まで知らなかった事実が判明しても、それを念頭に入れて読み返すとより納得出来たり、理解が深まったりするところだと思っているので、この221話や222話ももっと話が進んでから読み返せばまた違った感想を持つのかもしれません。
葦原先生、どうかご自身の体調を第一に考えつつ、この面白い作品を末永く続けて下さい。また続きが読める日を楽しみにしています。
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