リアルな夢に悩まされる日々
ご存知の方も多いかと思うが、三重県の多度大社の神事の中に「上げ馬神事」という残酷極まる、人間から馬に対しての行為がある。
現在弊社は馬に関わる者として、全面的に廃止を求める意見を述べている。
ご存知の方の方が多いかと思うし、長くなってしまうので、祭りの全貌は省略させて頂く事をご容赦願いたい。
さて、この神事を知ってからの私は酷いショックを受け、まるで物語や漫画の中でしかあり得ない光景に、精神が参ってしまっていた。
人間とは、自分と同じ生きている命に対して、ここまで残虐に残酷になれるものなのだろうか。
自分もその人間の中の一人である事に、強く絶望した。そして、人間である事が心底嫌になった。
それから、よく見る夢…。
そこは、神事の真っ只中である。
ゴールドトレジャーが神社にいる。
彼は白いので神明様か?悲しい目をし、ソワソワと遠くを見ている。
そのトレジャーが見つめる方向に歩くにつれて、人々の怒号や興奮の声で騒々しくなっていく。
その喧騒の中、私がその先に見た物は…。
藍姫が、ミルクが、坂へと引っ張られていく。
私は狂わんばかりに、
「やめてー!!うちの仔にさわるな!!」
と人混みに飛び込む。
自分も殴り、蹴られる。
どうにか二頭の側に辿り着いた。抱きしめた。
人だかりに四方八方囲まれている。
坂の前まで追い立てられる。
もう逃げられないと悟った。
「お母ちゃんが守ってやる。怖い事なんか何もない。安心しんさいよ。」
そして夢の中の出来事なので、現実的ではないが、
二頭を背負う。
そして、自分自身で坂を駆け上る。よじ登る。
背負った仔達の重さと急すぎる勾配なので、上がられない。でも、上がらないと殴られ、蹴られ続ける。
その痛みから二頭を逃れさせたい一心で、登る。
崖を掴む手は血だらけで、痛みで熱い。
「やるから!!ちゃんと登るから蹴らんで!!叩かんで!!お願い!!」
殴られ、蹴られる身体も、のたうち回る程に痛い。
でも、登り切らなければこの仔達は助からない。
人間達は笑っている。
成功するか否かの前に毎回目覚める。
痛みも風景も現実かである様にリアルな夢だ。
寝巻きは、上も下も汗だくである。
この様に事細かく記憶している程に、頻繁に見る夢である。
最近、眠る事が億劫となっている。
果たして、何故この様な夢を何度も見るのか…。
心の傷による心理が見せるものなのか、意味のある事なのかはまだ分からない。
しかし今夜も、この神事によって亡くなった馬達、亡くならずとも恐怖を味わった馬達の安寧を願い、手を合わせる。
馬達が、
「どうか僕達を忘れないで…。怖かったよ。苦しかったよ。痛かったよ。」
そう言っているのかもしれない。
私も人間。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
こんな事は終わらせなければならないね。絶対に。
夢を見るたびに、馬達の苦悩を体験したかの様な錯覚に陥り、項垂れる。
この出来事を忘れた時が繰り返される時である。
だから、この行為を忘れてはいけない。
絶対に。私はそう確信している。
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