トレジャーと藍姫の仲、その後…。
トレジャーと藍姫の仲に進歩があった…。
身体が小さくのんびりなミルクには興味がなくなり、売られた喧嘩は必ず買う藍姫が、トレジャーのホットスポットとなった今日この頃…。
昨日、この二頭にある変化があった。
人参を奪い合って、ギャンギャン威嚇をし合う最中、藍姫が自らの馬房の扉を後ろ足でぶっ飛ばした。
真っ直ぐになおされたばかりの扉は、アーチ状に曲がり、物凄い音と共に藍姫はぶち飛んだのである。
藍姫は扉をよくぶっ飛ばすのだが、この日のトレジャーはその現場をモロに見てしまった。
当然見てしまったのは初めてなので、後退り、ビビりすぎて、トレジャーは固まってしまった…。
身動きひとつしない白い馬…。
そんな光景も我関せずなミルクが不思議な訳で、
トレジャーの反応は、至ってごく一般的な反応である。
「にんじん……そのにんじんは…お前…うちのにんじん…」
眼光鋭く、ガンを飛ばす藍姫の先には、目を合わせまいと、穏やかに遠くを見ているトレジャーがいた。
「どこ見とんのじゃ…。やるんか?…」的な藍姫の顔。
「何でですか…?なにをやるんですか…??一体なにをやるんですかーー!!僕ぁ、はぁ…満腹ですけぇ…。なんか困った事あったら、いつでも言うて下さい!!僕ぁ、純粋ですけん、何でもしますよ!!ワハハ…!!」
満腹中枢はおそらく持ち合わせてなく、親切でも純粋でもないトレジャーはそう答えた気がした。
トレジャーは自分の方が弱い事に、やっとの事で気が付き、藍姫の前では大人しくなった。
「ナメんじゃねぇ…」
と、藍姫さん…。
誰かにチョッカイ出さないと一日を終えられないゴールドトレジャーは、窓の外から、遠くの厩舎の自分よりも絶対にちっこい、ポニーを威嚇している日々に変わった。
座高の低さが、トレジャーのチョッカイ先としての、白羽の矢が立った…。
絶対にできる事しかやらないのが、ゴールドトレジャーである。
今日となっては、リスクは犯さない男…それがゴールドトレジャーだ。
もはや、絶対に勝てる喧嘩しかしない男となった、ゴールドトレジャー…。
やがて、ポニーにも負けて、彼は真の平和主義者となるのであろうと、私は予言する。
隣のミルクにも、チョッカイは出さない…。
なぜかというと勿論、これまたミルク命な藍姫に、ぶっ飛ばされる恐れありで、ミルクにチョッカイを出す事は、頭脳明晰な彼の頭の中では、
「ウィーーン!!!!」
藍姫襲来!!
の警報のサイレンが鳴っているはずだ…。
意外と彼の頭の中は忙しいのである…。
そんなこんなで、力関係が明らかになり、藍姫は女王の座に君臨した…。
こうして、三頭での放牧が再開したのである。
ゴールドトレジャーよ…。頑張れ…。