ゴールドトレジャー(ゴールドゴールデン)放牧場からの大脱走。彼は飛んだ…
トレジャーの目を盗んでは、ゴールドミルクをコソコソと可愛がる日々…
ところがある日、ミルクのキラキラとした可愛すぎる眼差しを浴びて、うっかりと、若干大きめな声で叫んでしまった…
「ミーちゃん!!お母ちゃんよー!!あんたのお母ちゃんよーー!!」
トレジャーは放牧中…
ミルクが笑ったかの様に見えたその瞬間。
白い塊が、
「こりゃーーー!!今何を言うたんじゃー!!」
と言わんばかりに、
「ヒヒヒーーーーーン!!グワッ⁉︎⁉︎
ヒヒーン!!」
と華麗に柵を飛び越え、こちらへ爆速してきた…。
飛び越える際、若干足を打ち、おそろしく痛みに弱い彼は、嘶く途中に、
「グワッ!?」
という声とと共に、こちらへ突進してきた…。
柵の高さは1メートル位はあるのだが、そこは、乗馬のリトレーニングで調教されていた成果もあり、人の為には飛ばないが、自分の為ならば意外と飛ぶゴールドトレジャーである。
誤算はあまりに走らない、飛ばない事を忘れ、足をブツけてしまった事である…。
おそろしく早く、華麗に柵をジャンプするトレジャーを見たのは、出会ってから初めてであった。
本気で走れば早く、ジャンプ力も高い、スーパーホースなのである。
「わーーー!!止まりなさーい!!トレジャー!!
危ないけぇ止まりなさーーい!!」
と叫ぶが、
彼の言葉は、
「足がぁぁーー!!足がもげるんじゃーー!!
痛いんじゃぁぁぁ!!お母ちゃーーーん!!」
に明らかに変化していた。
そこへ颯爽と現れたクラブ長に捕まり、部屋へと戻され、ブツけた足の状態を確認されていた。
ほんの少ぉーーし擦りむいた様な、馬では日常的にできる傷が微かにあった。
「ワシぁ、もうダメじゃ…。ワシの足は一体どーなっとるんじゃーー!!」
それでも、痛いアピールが酷いので、
念のため、世界一大嫌いな抗生剤の注射を打たれた…。
また
「グェーーーーッ ゴホッ……」
とにかく痛がる。
「こんなはずでは…。ワシぁ、何をしよぉって、何で注射を打たれとるんかいのぉ…?」
実は馬であるゴールドトレジャーの複雑な出来事への記憶力の限界であった…。
踏んだり蹴ったりの彼に、私はかける言葉が見つからず、
「…………大丈夫?………」
とだけ、やっと言葉が出てきた。
人参を差し出し、彼を称賛し、どれ程に愛しているか、どれ程に彼が世界一かの言葉を、モーレツに並べたが、この日は、もちろん人参は食べるが、落ち込んでいた…。
しかし注射の記憶は忘れない。もう二度と柵は飛び越えないであろう事は確かだ。
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