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ゴールドトレジャーと息子との現況

先だって私は足の怪我をして、状態が思ったより悪く、緊急に入院をして、手術をした。
まだ歩行がままならず、松葉杖では長距離が歩けないので、車椅子の生活になってしまった。
足を下げた状態が続くと、患部が腫れ、治癒が遅くなる他、痛みが強くなる為、ゴールドトレジャー達に会えない日が続いている。

お父ちゃんがいれば、寂しさは半減で済む動物達もいるが、ゴールドトレジャーと息子のピーターは、
絶対に私がいなければダメな子達である。

入院中、私を待って玄関の側を離れなかった知的の障がいを持つピーターを心配して、お父ちゃんが
トレジャーの元へと連れ出したらしい。

到着後、お父ちゃんの姿を見つけると、その後ろから私が歩いて来るのをじっと待つトレジャーであったが、念願叶って、お父ちゃんの後にお母ちゃんの
匂いを感じた。

「お母ちゃーん!!ヒヒーーン!ヒ………⁈……。」
と嬉しい嘶きが中断された。

後ろから来たのはお母ちゃんでなかった。

「オメェかい…。おっ…オメェ……来たんか?……。」

そこに現れたのは、水風船のヨーヨーを持ったピーターであった…。
ゴールドトレジャーは心底ガッカリしたが、大切な事を聞かなければならない。

「おっ、お母ちゃんはどしたんない…?」

「お母さんはもう来ん。」
メチャクチャ省略してピーターが伝えた。


ガーーーーーーン!?!?
「へっ……。なんでや……?」

あまりのショックに、お父ちゃんにベラベラと話し始めた。

「すいません…。ぼくぁ、オタクにいっぱい酷い事しましたわぃ…。
噛んだり、足を踏んだり、ひこずったり、壁に挟んで骨を折ったり、鼻でブチ回したり…。
すんません。もうあがな事は面白がってしませんので、お母ちゃん来てもろーて下さいや…。
グスン……。」

す、すごい……。すごい悪い……。

「よっしゃ!!!!分かった!!今日からお父ちゃんと思ってそう呼びますわい!!」

というか、今日の今日までお父ちゃんを何だと思っていたのだろうか……。そこが気になる所である。

「うん、分かった。遊ぼう。」
トレジャーの大告白の懇願など右から左のピーターは、いきなり水風船のヨーヨーをダーーーッと連打
を始めた。

「これ、三上くんの打ち方。」

10通りの10人の打ち方を披露し、その10人は、誰だかは不明である。知り合いではない様である。

一通りヨーヨーの披露が終わり、

「よいしょっと。」

トレジャーの部屋の前に座り込み、寝だした。

「話しかけんといてね。静かにしたい気分になった。」

「話しかけた事なんか一度もないわい……。」

ピーターの今日の行動と言動の意味が全く理解が出来ず、固まるトレジャーに、お父ちゃんが声をかけた。

「あのね、お母ちゃんは怪我をしてね、もう暫くは来れんけど、トレジャーをいつも思っとるよ。一緒に待とうね。何も謝らんでええよ。それがトレジャーじゃけぇ。心配せんでええよ。それより、元気を出してしっかり食べて、運動もせにゃいけんぞ。お母ちゃんだってトレジャーに会いたいんじゃ。じゃけぇ、一緒に頑張らんにゃの。」

「はっ???何ですか…???」

説明が長文過ぎた。

身体の仕組みと理解力が、ゴールドトレジャーの若干の、実は馬であるという名残りを物語っていた。

苦手だとしても、息子の中に私を見て、時折甘える表情を見せているらしい。
遺伝子というのは、理屈ではないのだろう。

今日もトレジャーは私を待ち続けているはずだ。

もうすぐ、もうすぐ会いに行くからね。

お利口して待っててね。
お母ちゃんは離れていても、心はいつもトレジャーの側におるからね。
毎日、毎日、トレジャーの幸せと健康を願い手を合わせている。
その時に思い浮かべるトレジャーの姿を思うと、トレジャー以上に、お母ちゃんがトレジャーに会いたいのだ。

会えたらまず何をしようか?
お散歩は出来ないから、トレジャーの好物をたくさん持っていくよ。
またリンゴを一緒に食べようね。

それを楽しみにお母ちゃんは頑張るよ。

私のゴールドトレジャー。
トレジャーの存在が沢山の力を私に与えくれ、こんなに弱いお母ちゃんでも、もうひと頑張りさせてくれる。

トレジャー、いつも本当に有難う。




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