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スズキ ソリオBANDIT HYBRID MV

くるまの状態:ディーラー試乗車

それにしてもこの面相はどうだろう。
とてもじゃないがあんなにスマートなハスラーや、プレーンな造形が魅力のラパンを同時に発売しているメーカーの作品だとは思えない。
どのメーカーもどうして揃いも揃ってワル顏のグレードを出すのだろう。まあこういう顔つきの方が人気があるというのだから、その辺は承知でデザインしているのはわかっているのだけれども、街中の雰囲気がいかめしくダークな紫で支配されるのはちょっとどうかと思う。
二科展に出展されてる工藤静香の画じゃないんだから。

個人的にはバンディットじゃないフツーのソリオの方が実直な明るさがあって好みなのだが。

インテリア
そんなに旧型をまじめに見ていないせいもあるけれど「違いはセンターメーターです」と言われなければ気付かないくらい差異を感じられない。
パッと見た感じ重要なスイッチ類のレイアウトは敢えて変えてないんじゃあないだろうか。
おそらく見栄えや色気より「実用的であること」が優先度1位になっているからこそできた造形だと思う。それだけ代々乗り継ぐファンが多い、という証拠でもある。
見た目どおり実際に収納が多く見晴らしも良い。どこに何があるのかも一目瞭然だし、ステアリングの前のボックス内にはUSBを接続できるジャックが付いている(メーカーオプション)。ETCも装着でき、見た目がゴチャゴチャしないのが好ましい。
スライドドアは当たり前のように自動。スルスルと勝手に開く。天井が高いのでまったく窮屈な感じがしない。前席ウラに付けられたカップホルダー付きのテーブルは便利そうだ。
もしかしたらミニバン業界では当たり前なのかもしれないけれど、地味に唸ったのがブラインドだ。キレイにスライドドアの中に収められている。引き上げ・引き下げもスムーズ。このクラスでも当然になりつつあるのだろうか。アフターパーツのカッコ悪いやつを付けなくていいのが助かる。

シートは小ぶりながらも我慢させられている感じはしない。長距離はしんどいかもしれないけれど、用途を考えれば十分だと思う。
広さ?これ以上なにを望むのか!というかこんなに頭上に空間があってどうするんだと言いたくなるほど空きまくっているからどの席でも快適だろう。

その空間を上手に利用して、リアシートを畳めば呆れるほどの荷室ができるし、さらに助手席を倒せばIKEAのどうかと思うサイズの棚を持ち帰ることも可能かもしれない。

エンジン・乗り心地
このサイズ感で1.2Lなんて大丈夫か?と思ったけれど、900kg台のボディをやすやすと動かしてくれる。そんなに喝を入れなくても交通の流れに十分乗れる。
いかつい見た目から覚悟していたアシの硬さもなく、聞けばフツーのソリオとまったく変わらないという。見た目のガラが悪そうだが話してみたらとても親切なヤツだった、みたいな話を思い浮かべる。

開口部が大きく広いにもかかわらず、ボディは腰から下がしっかりしていてヤワな印象は皆無。
乗り心地は誰が乗っても「いい」と思えるはず。遮音もしっかりしている。
日本人が特にうるさいアイドリングストップの動作も自然なチューニングで、スッとエンジンがかかり、パタリとエンジンが止まる。ウチの車のヤツより数倍良い。

環八から川沿いの開けた道で少しペースを上げると、このクルマの苦手な部分がすぐにわかった。
エンジンの回転を上げると途端に音がやかましくなるのだ。CVTのキーンとした音も目立つ。
4000回転周辺でこの現象が出てくるので、高速の合流や山坂道を多用する乗り方を想定している人はキチンとチェックしたほうがいいかもしれない。
やっぱりCVT特有のボサーっとした加速感は何回乗っても好きになれない。
車高のわりに曲がったときの腰高感があまりないから、これは残念な点だ。積極的にトバす気になれない。

それとセレクターレバーの「L(ロー)」のポジションがドライバーの目線から確認しづらいのも注意。これはメーターにキチンと表示が出ているのでオーナーになれば大した問題ではないか。

まとめ
ワゴンRを幅広くしただけの中途半端なクルマだな、売れんのかよこんなモン、と初代が登場したときそうやって毒づいたものだ。
しかし意に反して着実に売れ続け、コツコツとファンを増やし、2代目を街中で見かけるたび「たしかにアリなのかもしれないなぁ」と畏敬および反省の眼差しを向けるようになったのがこのソリオだ。
ミニバンは過剰、かといって軽では動力的にしんどいというマインドにバッチリ食い込んでいる点が侮れない。
先代と見た目の違いはほとんどないけれど、スズキらしく細かい部分をキチンと改良し、煮詰めて実直に出来上がったクルマだと思う。

お世辞にも華がある種類のクルマではないかもしれない。しかし選択肢から外すのにはかなり勇気がいる。こういう毎日食べても飽きないお米みたいなクルマが本当の実力者なのだ。
トヨタのポルテ&スペイドのように消化試合で作ったようなクルマ(失礼…)と違って、ソリオの「ちょうどよさ」を気に入って乗り継いでいるユーザーや、見た目より実用性を重視しているユーザーにキチンと向いて作っている点に好感が持てる。
運転を積極的に楽しむより、趣味の道具を詰めこんだ移動手段として、または家族の送迎で毎日利用するアシとして最適ではないだろうか。

家族4人までならこれで十分だ。クルマの「格」で近所と張り合うなんてこりごり!と考えている方にもグッと来るはず。低温ヤケドのようにあとでじんわりくる種類のアイテムになるだろうと思われる。