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ゼッタイ「背中」に何かある?!
2021年受傷してほぼ1年して、弓を射つ。車椅子も初心者、障がい者も初心者で、何もわからない状態で弓を射とうとする。健常者の時は、車椅子アーチャーは単に車椅子に座って弓を射っていると思っていた。確かに、体幹が効く、足が動く、立つことができる、腸腰筋が効く障がい者にとっては、そうかもしれない。しかしそうではない障がい者にとっては、車椅子に座っていても、背もたれと肘置きがなければ、座っていることができない。
弓を射つということは、上半身を支えられないフラフラの状態で弓を射つことになる。
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2022年、試合で70mも射ってみる。まったく同じ射ち方ができない以前に、どうやって射てばいいのかが分からない。もちろん矢は的にも当たらない。
素引きでどうやって引けばいいかを必死で試行錯誤する。見つからない。
2年目、2023年。やはり分からない。健常な時に射っていたイメージがある。それが障がい者になってからアーチェリーをする人との、決定的な違い。もしそれがなければ、障がい者になってアーチェリーと出会っても、当たらないから、すぐにやめてしまうだろう。何か、障がい者特有の射ち方があると思う。
身体の支えはもちろんだが、押し手の震えがどうしても止まらない。練習不足の震えではなく、とてつもなく大きな震えがくる。そんな当たらない、射てない中で3年やっていて、分かったヒントがある。それが「背中」。
その震えを止めて昔の射ち方をしようとすると、背中に圧をかけないと止まらない。広背筋を背もたれに押さえつける。ところが下半身が効かないので、押さえつける方法は上体を寝かせて、背中を背もたれに倒れかけるしかない。しかしそうすると、弓が左に傾く。それを修正すると、頭が前に出て背中が浮いてしまう。
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健常者の「正十字」が正しいなら、障がい者はそれに「背中の圧」を加えないと、正しく射てない。しかしこの両立が見つからない。
背中に圧を掛けると、背中は後ろに傾き、弓も大きく左に傾き、サイトピンをセンターに置くと、矢は2的以上左に外れる。それに弓の傾きが一定できず、サイトバーを傾けたりの工夫をしても、毎回微妙に異なるため、矢は集中しない。
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車椅子の障がい者なら分かっているが、背もたれのバンドを調整することで背中の傾きが変えられる。ところがそのバンドを5ミリ変えるだけで、背中だけでなく、すべてのバランスが変わってしまう。
弓は真っ直ぐにすることが正しい。そのうえで背中の圧を求めると、背もたれと背中の微妙な関係が見えてくる。このバランスを見つければ、まともなアーチェリーができる気がする。