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消えた「センターマーク」とハンティング
先日、1本5万円のカーボン/セラミックのセンタースタビライザーを買ったのですが、使っているうちにロッドの中でカラカラと音がするのです。それで気になって、意を決してネジを外してみると、中から出てきたのは茶碗のカケラでした。
って言う小噺はどうですか。
で、文句を言いにショップに行くと、このカラカラが振動吸収に効果を発揮する、と丸め込まれてサイドロッドまで買わされたってオチが付いた、笑い話です。
ありそうな話だと思いませんか? アーチェリーの世界は最新のハイテク先端素材が使われているのも事実ですが、中身をわかって使っているアーチャーは少ないのではないでしょうか。それにモノには相場なり相応というものもあります。何でも難しい名前が付いて、高ければよいというものではありません。お金を使うことに満足しているならよいのですが、お金をどぶに捨てるだけでなく、せっかくの点数も無駄にしているのならちょっと考えなければなりません。
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1988年、EASTONは「ACE」でゴールドメダルを獲得していたにもかかわらず、翌年 Beman に敗北します。EASTONにとって、これほどの屈辱はありません。この瞬間から、EASTONは初めて後発メーカーに成り下がったのです。そんな追いかける身の常として、低価格こそが最大の武器となります。しかし、アルミにカーボンを巻き付けていたのでは、オールカーボンシャフトに勝つことはできません。となれば、どれだけの付加価値を付けてBemanとの差別化が図れるかで勝敗を分けます。
そこで「ACE」の最大のセールストークは、他のシャフトにはない「樽型」形状です。しかしこれは失敗でした。当初EASTONは樽型をアピールするのではなく、「スパイン調整」を前面に押し出しました。その象徴が、「センターマーク」です。シャフトの真ん中、樽の中心に印刷された「+」マークは、ここがシャフトの一番硬い位置であり、これを動かすことでスパインを硬くも、柔らかくもできることを最大の特長としたのです。
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カタログには「ノックエンドを切ることで、硬くできる」と書かれています。それも1サイズもです。これは今のシャフトも同じです。ところが、突然このマークはシャフトからも、カタログからも消えました。理由はショップが直訴したからです。シャフト1ダースを売るために、お客をレンジに連れて行って、アローカッターを持参して、矢飛びを見ながら矢を切っていたのでは、商売にならないと言うわけです。その通りです。いつのまにか、マークは消え、誰もスパイン調整のことを語らなくなり、残ったのは「樽型」だけでした。
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それと併せて消えたものがありました。シャフトの先端側に巻かれていた「カーボンクロス」です。差別化もあったのですが、それ以上に初めて商品化するカーボンアローに対して、EASTONは的との摩擦熱を恐れていました。それに加えてACEのカーボン層は繊維が一方向のロービングです。最初ノック側を数ミリ切り落とすのと同じように、ポイント部分からのササクレも怖かったのです。
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試行錯誤のACEですが、この動画を知っていますか?
EASTONが作った「ACE」最初のプロモーションビデオです。観て何を思いますか。カーボンアローで鉄板を射つことがあるでしょうか。そんなことで耐久性を誇っても仕方がないばかりか、矢はすべて壊れています。
これは耐久テストではなく、アルミ/カーボンシャフトの割れ方を見せているのです。すでにオールカーボンシャフトが独占する、ハンティング市場に参入するメリットとして、アルミ/カーボンは粉々には飛び散りません、というアピールです。今も「フルメタルジャケット」という、アルミシャフトの中にカーボンが巻かれているシャフトがハンティング市場でのEASTONの売りであることが、それを表しています。獲物に刺さったシャフトが骨に当たっても、バラバラにはならないといっているのです。
EASTONは最初、アルミコアでハンティング市場を狙っていたのかもしれません。