誰も知らない「復元性」という性能
これは何でしょう?
「ハイトゲージ」です。
工作物の高さを精密に測定することに特化した測定器具です。工作物とハイトゲージを「定盤」とよばれる平面の基準となる水平な台に置き、計測を行います。
定盤は鉄や自然石でできた、完璧に平らな台と考えてください。そしてもうひとつ、「ゲージブロック」を2個用意します。これは定盤の上に置く、完璧な長方形の形をした、鉄の塊と思ってください。
この3つが家にある家庭はまずないでしょうが、これがあれば、簡単にあなたのハンドルがねじれているかを、確認することができます。
例えば、ハンドルは設計段階で必ず中心線とともに、基準となる平面が設定されるはずです。それがウインドウの内側の面の場合、図のようにハンドルをゲージブロックで固定します。
そしてハンドル上部の中心線●にハイトゲージを当てて、そのままゲージをスライドさせれば、ハンドルに中心線が引けます。そしてハンドル下部でゲージがハンドルの中心を指していなければ、曲がっていることになります。
また、ハンドルによっては、エクステンションベースを取り付ける面を基準としているモデルもありますが、その場合は、ハンドルを裏返して固定します。
ここまではイントロで、ここからが本題です。
あなたがリカーブアーチャーかコンパウンドアーチャーかに関わらず、ベアボウアーチャーでないのなら、弓には「サイト」が取り付けられているはずです。
サイトとは照準器であり、照準点になるサイトピンを含む、上下可動のスライドバーや前後可動のエクステンションバー、すべてを指します。
では、そのサイトに求める「性能」とは何でしょうか? 色やデザインではありません。「価格」も無視します。安いからや、コストパフォーマンスに優れるなどは含みません。例えいくらであっても、非常に高価であってもいいのです。いくらであっても良い物は良いし、いくら払っても良い物は欲しいのです。
あなたが求めるサイトの性能は、「精度」や「品質」「扱いやすさ」といった答えが返ってきそうです。確かにそれらはサイトに求める性能であり、不可欠な要素です。しかし、それ以外にというか、それ以前にもっと大事な性能があることを、アーチャーは知りません。
それは「復元性」です。この性能はこれまで、アーチャーにおいても、メーカーにおいてすら語られていないのです。知らないメーカーすらありそうです。
例えば、あなたは毎日弓を組み立て、そこにサイトを取り付けて練習をします。では、その取り付けた70mのサイト位置は、昨日と同じでしょうか?
これに気付くアーチャーはほとんどいません。もし疑問に思っても、今日はサイトが少し違うと、サイト位置を修正するだけです。言っていることが分かりますか?
サイトを取り付けたハンドルを、同じように定盤に固定して、ハイトゲージをサイトピンに当てます。次に、ハイトゲージはそのままでハンドルを取り外し、エクステンションバーを固定するノブを緩めます。そしてまた締め直します、その時ハンドルを傾けるのも分かりやすいかもしれません。このような動作を何度も繰り返します。そして、再度固定したハンドルをゲージブロックに乗せて、サイトピンがハイトゲージと同じ位置にあるかを確認するのです。
サイトピンが毎回「同じ空間」に固定されるのか、という性能です。これ以外にもエクステンションバーの長さを変えた時に、サイトピンが空間を正しい位置にスライド移動するかということなどもあります。これらを個人的には「復元性」と呼んでいます。
残念なことに、世の中には復元性が保たれないサイトが、値段に関わらず多くあります。しかしもっと残念で幸運なことは、このことに気付けないアーチャーがもっとたくさんいることです。