なぜ、あなたのポイントは「砲弾型」?
EASTONは、もうひとつ失敗をしました。
あなたの矢のポイントは「砲弾型」です。なぜ、「砲弾型」なのでしょうか?
昔、アルミアローの時代、ポイントは長い間「△屋根型」でした。それが1980年代に入って、EASTONは長く使われてきた屋根型ポイントをすべて廃番にして、「NIBB」(New Improved Balance Bullet)と呼ばれるポイントを世に出しました。「Bullet(弾丸)Point」とも呼ばれるこのポイントは、それまでと同じポイントとシャフトの外径は同じですが、ヘビーポイントを「NIBB9%」、レギュラーポイントが「NIBB7%」と呼称も変更されました。
なぜ、EASTONはアルミアロー全盛の時代に、すべてのポイントを屋根型から砲弾型に変更したのでしょうか?
当時、屋根型ポイントは的面において、「跳ね返り矢」が多かったのです。ローカル大会はもちろん、国際大会においても同じで、試合は何度も中断されるのが常でした。1960年代後半から、国際大会では的中孔にセロテープを貼るようになりましたが、1980年代にはペンですべての穴に印を付ける「的中孔チェック」が当たり前になりました。
そこで抜本的な対策として、100%のシェアを誇るEASTONは、跳ね返る屋根型から「貫通力」の大きい砲弾型にポイントを変えたのです。それは刺さるだけでなく。見た目にも流線型でカッコイイ形状でした。
砲弾型は、屋根型ポイントの「ACE」にも、引き継がれます。それによって「跳ね返り矢」はなくなりました。ところが、予想外のことが起こったのです。世界がアルミアローからカーボンアローに変わると、今度は「貫通矢」が多発しだしたのです。高速の細いカーボンアローと砲弾型ポイントは、摩擦をものともせず、バットを突き抜け、今では畳の後ろにネットを垂らすのが当たり前になりました。
1984年に登場した世界初のカーボンアロー「EASTON A/C」は、名前の通りアルミシャフトをコアにしてカーボンを巻き付けた、アルミ/カーボンシャフトです。そのため、ポイントはアルミシャフトと同じ、「差し込むタイプ」が使われます。
初期モデルの先端形状はアルミシャフトと同じ「△屋根型」ですが、外径はあえてシャフトより太く作っています。ところが、アルミシャフトでも砲弾型が使われるようになる1980年代後半の最終モデルでは、丸みを帯びた「屋根型に近い砲弾型」に形状が変わります。この時、ポイントがシャフトと同じ外径に変更されたのは、軽く太いカーボンシャフトが跳ね返ったことが原因にあります。
1989年にEASTON A/Cを駆逐することになる、世界初のオールカーボンシャフト「BEMAN DIVA+」のポイントは違っていました。オールカーボンのため、シャフトの切り口が割れることがないように、EASTONとは異なるポイントを「かぶせるタイプ」でした。この場合、当然ポイントの外径はシャフトの外径より必然的に太くなります。ただし、先端形状は当時のアルミポイントと同じ「△屋根型」です。
BEMANに対抗して、A/Cの後継モデルとして出された「EASTON ACE」のポイントは、A/Cを継承した「屋根型に近い砲弾型」でした。ところが改良モデルは徐々に、現在のポイントに近い「砲弾型」に変更されていきます。ただし、今のように明らかに膨らんだ感じはなく、ポイントの外径はほぼシャフトの外径と同じでした。
今のカーボンアローに対し、多くのアーチャーは「カーボン=高速=空気抵抗=弾丸=突き抜けて」といったイメージを持つかもしれません。
しかし、細くて速いカーボンアローだから、先端に弾丸のような流線形のポイントがセットになっていると思っているなら、それは正解ではありません。形状の変遷からしても、今だからこそ貫通力の弱い「屋根型」ポイントの方が現実的なのかもしれません。それに砲弾型ポイントに変わった時には、クリッカーのチェックがしにくいなどの欠点も指摘されていました。
本当に砲弾型は、矢にとってベストのポイントなのでしょうか。