見出し画像

エクステンションバーの長さ

なぜ、あなたのバーは、一番長い位置にセットしているの?

1960年代後半、エクステンションバーは名器Golden EagleやBearの、それぞれの専用部品として生まれました。それに伴い、現在のエクステンションサイトの原型となる「Check It」サイトも登場するのですが、これらのサイトは主にProfessionalArcheryAssociationの連中が使うにとどまり、FITAの世界では日の目をみませんでした。

PAA  Ann Butz & Golde Eagle

ところがその状況を一変させたのが、ジョン・ウィリアムスです。1972年ミュンヘン、52年ぶりにオリンピックに復活したアーチェリー競技で、彼だけが使うトンデモナイ道具で、世界記録と共にゴールドメダルを持ち去ったのです。
Hoyt TD2 プロトタイプ、トリプルスタビライザー、そして「Check It」のエクステンションサイトです。この瞬間から、リカーブの世界はテイクダウンボウ、3本スタビライザー、エクステンションサイトの時代に突入しました。

1972 J.Williams

ところで、左の写真は90・70m、右は50・30mのセッティングです。
なぜ長距離ではエクステンションバーの長さが短いのか、分かりますか? アルミアローでグラスリム、そしてダクロンストリングでは、エクステンションバーを短くセットしなければ、矢がサイトピンに当たってしまうのです。この長さが物理的な限界点です。

ところが今はどうでしょう。カーボンアローの出現とカーボンリム、高密度ポリエチレンストリングによって、32ポンドのリムでも矢はサイトピンに当たることなく70mを飛ぶでしょう。
しかし、もしあなたの矢が、今のように安易に70mを飛ばなかったら、あなたは強い弓を引くことや、効率の良い、性能の優れた道具を選ぶ試行錯誤によって、多くの知識を手に入れたはずです。そして美しい、理にかなったフォームや技術の習得に努力したはずです。そうでなければ矢は的に届かず、地面に刺さり、試合には出られなかったでしょう。

カーボンアローの出現によって、弾道が下がりサイト位置が上がったことで、初心者でもエクステンションサイトを長く使えるようになりました。長くなることは、エイミング精度の向上です。しかし、それによって的中率もアップしたかというと、エクステンションバーの長さと点数は正比例しないことを理解するべきです。
長いエクステンションバーはエイミング精度を向上させるといっても、それは理論上のことで、サイトピンが止まる前提です。実際には、倍の長さは、サイトピンの震えも倍にしてアーチャーに返してきます

1979 LasVegas Shoot  D.Pace

インドア競技で長いエクステンションバーを使うのは、風が吹かない大前提においての、エイミング精度の向上です。また、フィールド競技やコンパウンドボウの3D競技において、あえて短いエクステンションバーを使用するのは、距離の読み間違いがあっても、矢を的面上に残すためです。
長いエクステンションがすべてにメリットがあるかというと、決してそうではないのです。特に初心者や中級者にとっては的中精度だけではなく、それ以前の基本技術やフォーム習得の妨げにもなります。それに狙えてもいないのに、狙った気になるか、すべての神経をサイトピンの固定に注がなければなりません。
同様に、上級者はゴールドの大きさに対するサイトピンやフードの大きさに気を配るべきです。単に長さだけでなく、ターゲットとの比率などをもっと神経質に考慮する必要があります。

1981 US National  D.Pace

とはいえ、視力の衰えによって手前のサイトピンがぼやける時、長いエクステンションバーはサイトピンを鮮明に見せてくれます。震えはしても、ピンを最後まで見ることができます。
必要は発明の母であり、必然の父です。

長くする必然もあれば、長くできない必然もあり、あえて短くする必然もあるのです。一番良くないのは、何も考えず、格好だけ上級者のマネをすることです。付いているから、一番伸ばせばいいのではありません。
エクステンションバーの穴や、横のくぼみは飾りではありません

いいなと思ったら応援しよう!