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お隣さんの不良がうちのインターホンを鳴らした日。

ある日家のインターホンが、
ブーーーー!っと長めになった。
うちは集合住宅のため、
ピンポーン!ではなかった。 


 はーーーい。と
玄関に出ていたB&D(スポーツ用品店)の
ノベルティのサンダルをつっかけ、
母がドアを開ける。


そこにはお隣さんの不良が立っていた。


現在の我が家に引っ越してきた当時、
お隣さんの長男は不良だった。
ぼくの5歳くらい上だったと記憶している。


髪はピンク色。
あるときはレインボー。
ピアス多数。(数えきれない)
舌にもピアス。
腰パン。
トランクスは常に丸見え。


とある日曜日の昼間には、
HIDEの名曲「ピンクスパイダー」を大熱唱。
集合住宅のため丸聞こえ。
こちらは中間試験前。


「ピーーンクスパイダああああああ!
もうダーーーメどぅあああああああ!」

もうダメなのはこちらである。


そんな彼がまさかうちに家庭訪問である。
お菓子とか出せませんが。
コーラとか炭酸買ってきましょうか。


母「こんにちは。どうしました?」
ピンクスパイダー「あのお、今家に誰もいなくて、俺家の鍵忘れちゃったんすけど、ベランダから入っていいっすか?」
母「えええっっ!、ベランダって外の?」


母よ、あいにく我が家の窓から内側に
ベランダはない。


ピ「はい。窓は開いてるんで、家には入れます。」
母「でも危ないわよ。」


そうだ、うちは5階建ての5階だ。
だいたい高さにして14、15メートル。
落ちたら骨折はする。
場合によって新聞に載るレベルの事件です。


ピ「すぐ移るので大丈夫です。お願いします。」
母「本当に危ないから本当に気をつけてね。」
ピ「ありがとうございます。お邪魔します。」


しぶしぶながらも、
不良の勢いに気圧されるように、
母は不良を家の中へ入れた。


不良のお兄さんは我が家に入り、
ベランダへ向かう。
そして【非常時にはこれをぶち破れ】
と書かれたお隣さんとの仕切りに手をかけ、
器用に自宅へと渡っていった。


「ありがとうございました。」
無事に自宅のベランダに入った彼は、
いたって普通の声で仕切り越しに礼を言った。


今でもこのときのエピソードは、
我が家でのお隣さんとの想い出堂々第1位だ。


ちなみに第2位から第5位は、
お隣さんのお父さんが酔っ払って帰ってきて、
深夜2時にうちのドアを叩きまくる、
です。



そんな不良だったお兄さんが、
先日の休みに帰ってきていた。


「おおっ!富士山がすげーーよく見えんじゃん!」


相変わらず大きなその声は、
我が家にも聞こえてきた。


「ホントだ!富士山だーーーー!」


続いて聞こえてきた声は、子供の声だった。
そう。不良のお兄さんは父親になっていた。 


我が家は集合住宅の一番高いところにあり、
晴れている日は富士山が本当によく見える。


無邪気な子どもの声を聞いて、
狭いベランダで起きたあの日のことを思い出す。


少し怖かった想い出や、
嫌な想い出でも、
振り返ってみて
【なんとなくほっこり】できたりすれば、
それはきっといい想い出なのだと思う。



懐かしい気持ちと、
温かいな気持ちになる、
そんな昼下がりであった。



※写真は我が家からではなく、
その1週前に行った河口湖から。


ここまでお読みいただき、
ありがとうございました。

かめがや ひろしでした。



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