クリームメロンソーダブルー。(超短編小説#4)
裕とは出会ってから、もう3ヶ月が過ぎていた。
裕とは職場の麻美に誘われて行った合コンで知り合った。
優しくて、自分のことを引っ張ってくれる男らしさにすぐ惹かれ、2回目のデートで裕のマンションに泊まった。
それから週に2.3回のペースで会うようになり、お互い仕事が忙しくない最近は、仕事のあと香織の部屋に来て一緒に夕飯を食べている。
『香織の作るごはんはホントにおいしいね。』
そう言って、毎回最後に味噌汁を飲み干して笑う裕が、香織は大好きだった。
夕飯のあとはいつも、
裕は香織を抱いた。
そして香織は裕に抱かれた。
一昨日もいつものように、裕は仕事で着ていたワイシャツを脱いでは着て、自分のマンションへ帰って行った。
香織は裕と付き合いたい。
けれど、裕は『付き合おう。』とはまだ言ってくれていない。
体だけの関係なのか。
自分は次への繋ぎなのか。
裕に付き合ってる人がいたりするのではないのか。
『安定感』という、普遍的な海原が二人の間に生じてきたときから、香織はこんなことを日々考えている。
そして、『付き合ってほしい。』
この一言を自分から口にしたら、裕がどこか遠く、遠く、うんと遠くに走り去ってしまうのではないか。
裕と一緒にいるときも、いないときも、香織の胸はこの訪れるか分からない未来に不安を抱いていた。
目の前のクリームメロンソーダはもうほとんどなくなっていた。
アイスは溶けて、すくいきれなかった残りはグラスの氷にへばりつき、今の香織のもどかしさを表しているようで、メロンソーダはほんのり甘酸っぱく、好みの味だった。
ズズッ。
ストローが音を奏でるまで、香織は残りを飲み干した。
大丈夫。
自分が主役なのだ。
自分の足で、次の一歩を踏み出すしかないのだ。
『今日何か食べたいものある?』
大好きなカフェを出ると、いつの間にか赤くなり始めた空と、家に帰るようにビルの間に隠れていく太陽が見えた。
一息吸い込んでは吐き出し、
香織はLINEの送信ボタンを押した。
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