朗読劇は人生を豊かにしてくれる気がする〜賢プロ40周年VOY!VOY!VOY!を観劇して〜
どうも、かめちゃんと申します🐢
この度は、4月6.7日に行われた、
賢プロダクション40周年、そしてスクールデュオ25周年を記念する朗読劇「VOY!VOY!VOY!〜新たなる光をまとって、ボイ!〜」を観劇してきました。
その感想です。
台本手元にないので記憶ベースですが、ご容赦ください。
あらすじ
エースストライカーである杉崎優
彼の夢はトップチーム昇格、家族に大きな家をプレゼントする事
恋人との恋の成就。
ところがある日不慮の事故で視力を失ってしまう。
失意の中、ブラインドサッカーチーム「コエギゼンス多摩」を訪れたものの
彼を待っていたのは新たな試練だった。
第一幕
優を演じる田中光さん、そして挑発をする相手選手を演じる竹中悠斗さん。
いずれも精神的に幼い若い選手を演じ、観ているこちらがイライラしてしまうような、つまり感情がそこに没入してしまうようなやりとりで、冒頭から演技の素晴らしさに引き込まれました。
優に声をかける人々。
益山武明さん演じるコーチ、菅沼千紗さん演じる彼女のヨウ子。そして優の妹、涼香を演じる葵あずささん。
前出2人はアイマスで、葵さんは昨年6月に北原さんと共演されていた朗読劇で知っていたので嬉しかったですね。
これまで触れたことのある皆さんのキャラクターとは違った役どころで、声優さんってすげー!って思いました。
事故のくだり、ブラインドサッカーへの導入ですね。ただ、その過程の表現が凄まじかった。
田中光さんの演技力。
額や首筋に汗が溢れ、スピード感と彼の異常な精神状態が伝わってきます。その気迫に、観ている私も興奮状態が伝播してきて、息が荒くなるような、そんなシーンでした。
だんだん荒んでいく優を見ていくのは、すごく辛いものがありました。あれだけ傲慢だった優ですが、それでも彼がそこまでのことをしただろうか、と心が痛みました。
周りの人たちの善意も、優の心とボタンを違えてしまう。そのかけ違いが丁寧に描かれていたからこそ、生々しく、直視するのがしんどいほどでした。
直前で公開されていたショート動画の最後、チームの歌を歌う優ですが、これがあんなにも悲しい意味を持つシーンだったとは知る由もありませんでした。
そして、自転車のシーン。
先の事故の時と同じく、田中さんの演技が光ります。優の異常な精神状態が声や表情、その仕草など、彼を通して克明に描き出されます。
兄を想う妹、涼香の呟きが忘れられません。
「このまま死んでも良いよ」
快活で、気立の良い涼香はどんなに兄に当たられても気丈に彼を支え続けていました。優もそんな彼女のことには気づいていましたが、それ以上に自分の現状に耐えられなかった。自転車でブレーキをかけなければ、涼香もろともどうなっていたかわかりません。
涼香は言いました。「まだ大丈夫だよ」と。
優は命が有限であると感じます。でも、まだ生きてる。生かされている。
この日から優は大きく変わり始めます。優が外の世界に踏み出す前夜でした。
第二幕
ここからは涼香が語り部となります。
ブラサカのチーム、コエギゼンス多摩の面々が実に個性的で、第一幕とはまた違った雰囲気を感じます。
ブラサカは基本的に専用のアイマスクをつけて、鈴の入ったボールを扱います。
そのサポートをする役割として、キーパーやガイド、監督らが目となって声を届けます。
このガイドが森村あけ美さんという方で、普段はスナックのママをやっている女性。演じている北原沙弥香さんをお目当てにこの朗読劇にうかがったので、ようやくの登場でした。
彼女の役所は、明るく包容力のある女性で、障がいの有無に関わらず分け隔てなく接し、豪快に笑い飛ばしてくれるようなキャラクターでした。
北原さんのハスキーな声質がママさんにぴったりだったのですが、笑い声ひとつで彼女の豪快さを表現できてしまうのが声優さんってすごいなぁと思いました。
他にもメンバーはすごく個性的で、特に同じ男性としては江頭宏哉さんや、篠原彰宏さんは凄く色気のある声で素敵だなと感じました。
パート的には第一幕よりも希望のある明るい展開だったので、誰かが話している時に後ろでポーズをとったりする演出に笑いを誘われたりもしました。
で、このパートで特に印象的だったのは、練習に付き合ってくれたサポーターの牧村少年でした。
彼を演じたのは大熊和奏さん。ラブライブシリーズのLiella!にて若菜四季を演じています。
今回の役は少年役でしたが、まさにハマり役。
生意気なところもありつつ、ブラサカに対して誠実なサポーターで、優へのリスペクトも一途です。その子どもらしい純粋なところがリアルでしたね。
このパートで印象的だったのは大きく2つ。
1つはヨウ子とコーチのことです。
優目線では、ものすごく残酷だな、と感じました。2人にすごく腹が立ちました。
涼香が献身的に優を支えたシーンが印象的だったから、対照的に感じたのだと思います。
ただ、彼女らの目線で考えるとものすごく自然な動きでした。
ヨウ子は決して優を見放したわけではありません。優が自暴自棄になった時に、チームを否定してしまったこと。
冒頭、彼女は優に「チームを裏切ることは、私を裏切ることと一緒だよ」と言います。変わってしまった優、自分を否定されてしまったこと。ヨウ子も無力感に苛まれていたのだろうと推察します。
理想を言えば、ヨウ子にはそこで諦めてほしくはなかった。けど、実際そんなことができる人がでれだけいるでしょうか。ヨウ子の心を埋めたのがコーチだったということ、それはすごく生々しくもよくあることだと思います。
コーチにしても、優に期待していたと言うことは嘘では無いと思います。期待していたからこそ、裏切られたという気持ちが大きかったのだと思います。
彼に助平心がなかったかと言われたらわかりません。でも、同じく優に裏切られてしまった同士、傷を舐め合うに心地よい存在だったのかもしれません。
まぁ、コーチとヨウ子の関係性について、2人が何歳なのかは気になりましたが笑
そして、もう一つ印象的だったのが、牧村少年でした。
2つ印象的なシーンがあります。
1つはコーチに言い返すシーン。
これは彼の幼さと真っ直ぐさを感じるシーンです。一連の出来事の発端になったのは自分でもあるのですが、それを言い返してしまうのです。大人だったら言い淀んでしまうのではないでしょうか。
それを超えるほど彼の中には優へのリスペクトが強かったのだと思いますが、その思いの真っ直ぐさに胸を打たれました。優の努力を一番近く見てきた彼だからこそ、それをしっかりと届けたかった。その熱さが素晴らしかったです。セリフを言っていない時でも地団駄を踏むようにしておられて、少年の怒りが抑えられないところがうかがえました。
もう1つは、手術することを明かすシーン。それまでも、彼が瓶底眼鏡をかけていること、練習の日に病院に行っていたことなど、彼に何かしらの背景があることは示唆されていました。
彼が頭の中にリスト化しているということ、怖く無いんだと強がる姿。感情が溢れる瞬間ってあぁいう瞬間なのだろうと思わされました。
彼の言葉が嘘だったわけじゃ無いと思います。優たちから本当に勇気をもらっていたのだと思います。だけど、彼はまだ小学生で、その行末をただ受け入れろというのはあまりにも酷です。見ているこちらもぐっと胸が苦しくなるようなシーンでした。
物語も結末へ。
優は見違えるように変わりました。
かつてエゴイストのように傲慢にプレーしていた姿はそこにありません。チームメイトと助け合い、笑い合いながら楽しんでプレーするその姿は彼の成長と、それを支えてきた皆が報われた姿だと思います。
優がハットトリックを決めるのですが、ユースの時の試合で3点目をファウルでフイにしてしまったのと対比で、今度はしっかり決めることができたという点は彼の精神的な成長を感じさせました。
単に"天才"という才能の話ではなく、"努力"の結果なのだなと我々はわかるようになっています。
そして、牧村少年との会話。
エゴイストだった優が人に感謝し、自ら手を差し伸べる姿はここまでの変遷を見てきた我々には大きな成長であるように感じます。
自分が支えられ、人を支える。ブラサカを通して彼が学んだことなのだと。
トークパート
朗読劇パートとは別にトークパートとして、朗読劇に出演されている方とは別の所属声優さんが2人ゲストとしてトークするコーナーがありました。
大ベテランの野村道子さんがホストとしてお話を導いてくださるのですが、すごく自由でありながら面白いお話を聞いて心がぽかぽかになりました。
例えば末柄里恵さんゲスト回だと、末柄さんがディズニーランドが好きだと言ったら、「彼氏と行くの?」と聞いてみたり。笑
畠中祐さんと林勇さんの回ではお二人の軽妙なトークで会場も沸いていました。
物販
会場では入場特典のパンフレットとシールがもらえました。
プレミアムシートの方は台本などもあったようですが、私は敗北者じゃけぇ...
物販はTシャツや映画などあったのですが、私はマイクロファイバーグラスを購入。
なんと社長がいらっしゃって、直接商品を渡してくださいました。
「これでメガネ拭いてくださいね」と言ってもらったので「綺麗にしてしかと焼き付けます」とか言った気がします。いや、緊張したぜぇ!
お花も参加させていただきました。
いつも企画してくださっているラブばな〜なさん。ありがとうございます!
全体的な感想
こんな素晴らしい朗読劇に出会えたこと、光栄でなりません。
台本、音楽、そして芝居。どれをとっても素晴らしく、端的に言ってしまえば感動しました。
まずは台本。
ブラインドサッカーという、あまり馴染みのない競技をテーマにしていながら、すごく丁寧に説明を加えてくれていました。だからその競技性を知らないことがお話を邪魔せずに、最後まで楽しむことができたと思います。
そして、登場人物に対する描写が細かく、なぜその人がこのような言動をとるのかが、汲み取りやすかったと感じました。
説明しすぎているとくどくなるのですが、そんなことはなく、細かくさりげなく散りばめることで、特に優については感情移入をしやすいようになっていたと思います。
そして、音楽。
4公演通して、フラメンコギターの菅沼さんが生演奏を交えて劇を彩ってくれました。
爽やかな場面や、エモーショナルにかき立てるような躍動感、フラメンコ特有の熱量を感じたというか。
個人的にフラメンコギター、というのを生業にされている方の演奏を初めて聞いたのですが、OPから心を掴まれるような演奏でした。
そしてお芝居。
これは本当に感動しました。ファンタジーではなく、かなりリアルなストーリーで、扱うテーマもライトなものと言えない中で、文字ではなく声として拾って表現すること、これがお芝居か、と感動しました。
僕みたいな素人は、文章をすらすら読み上げるだけでも褒められるものです。例えば学会発表とか、ガチガチで、内容を届けるだけでも大変で。お芝居は理解させるだけではなく、その先に心を動かすような何かがないと印象に残りません。実際、そういうものもいくつか見たことがあります。
そういう意味では、表現がすごかった。
非常に抽象的な表現なのですが、その役の人生が見えるというか、そこで起こっている事実以上に奥行きがあるように感じました。
例えば、田中光さんは役どころ的に、序盤は皮肉めいた、乾いた笑い声をされていました。ところが終盤にかけて、周囲と打ち解けていく過程を経て、人の温度を持った笑いに感じられたような気がしました。
また、例えば竹中悠斗さんが演じる真司くんが歓迎会で「点字のUNOしようよ」と涼香を誘って、色恋好きのフェルナンドにからかわれるシーンがあるのですが、
3公演目までは比較的純粋に誘っているような印象もあった中で、4公演目は緊張して誘っている感じで、意識してるのかな?とかまた違った見方ができるようなニュアンスを変えているような箇所がいくつかありました。
その他で言うと、大熊さんが演じる牧村少年と涼香が、コーチたちの関係を話しているシーンでは声のトーンが公演を経るごとにコソコソ感が増していっているような気もしました。
こんな感じで、公演を経ていく中で違ったアプローチがなされている様子を見ることができて、お芝居を作っていく瞬間に立ち会えていると感じることができました。
あとは、声以外の仕草も。
特に田中さんと大熊さんが印象的でしたが、本当にそこにその人がいるんだと思わせるように、手足を使ったり、表情までコロコロかわっていました。
自転車事故や未遂のシーンの迫力を作っていたのはまさにそのような田中さんの鬼気迫る表情。汗だくになりながらの怪演に、4回とも手に汗を握る思いでした。
何より迫力。
男性女性を問わず、声がしっかりこちらに届いてくるので臨場感が凄まじく。没入感というか、1.5時間が全く長く感じませんでした。4回観ても引き込まれる引力ですかね。凄まじかった。
今回、北原さんを観たくて参加した朗読劇でしたが、結果的にたくさんの素敵な役者さんに出会うことができました。
考えさせられたこと
今回の朗読劇を受けて、考えたことがありました。
ただ感動するだけでいいのか、ということです。
私は涙脆いので、漏れなく4公演全てで涙を流しました。ただ、これを受け身で終わらせていいのか。
障がいってなんだろうって。
単に目や耳が悪いということもそうかもしれませんが、そこに支障があるということなのだと思います。
誰1人同じ人はいないのだから、何に支障があるのかも違ってくるかもしれません。そこを理解した気になって、善意を押し付けることは果たして良いのだろうかと。
視力を失って生活が困難になることの過酷さは、そりゃそうです。
ただ、今回の優はそれは発端でした。
父親やヨウ子とすれ違っていきます。そして、そのいずれもが、相手は決して見放したわけではなかったということ。2人とも優のことを思っての言葉が優には響かなかった。良かれと思ってってのは時に残酷です。
じゃあどうすれば良かったのか。
向き合い続ける?それも一つだったとは思います。実際、若い涼香だけがそれを続けたことで、優は彼女を突破口に心を開いていきました。
でも、それってすごくエネルギーのいることです。障がいがあるから、それは仕方ない?違う。その人にもその人の人生がある。
結局、今段階の僕に正解なんてわかりません。
それに、多分これも人によって違うものだから。
だから、せめても考え続けようと思います。
障がいの有無だけじゃなく、色んな人に対して。
特別とか普通とか、そんなことはまだよくわからないけど、考え続けることはできるかなって。
良いこと言いたいわけじゃなくて、
でも、それが大事だなって感じたんですよね。
こうやって考えるきっかけをくれたのは、やっぱりそれだけ朗読劇が良かったからなのだと思います。
こんな場所に連れてきてくれた北原沙弥香さんに最大限の感謝を。
そして、最高のパフォーマンスを魅せてくれた演者の皆さん、スタッフさん。賢プロダクションの方々に。
ありがとうございました。