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“無農薬=安全” それってほんと?

執筆:やえ
更新日 2024/11/28

 こんにちは、やえです!
 「かめとやえ 医学部生カップルブログ」をご覧いただきありがとうございます!
 本記事では、「気になったこと調べてみた!シリーズ」を投稿しようと思います☺︎
 今回のテーマは、「“無農薬=安全”    それってほんと?」です!是非気軽にのぞいていってください👀

はじめに

 みなさんは、“無農薬”と聞いて何を思い浮かべますか?
  「農薬使ってるよりは安全なんでしょ?」「虫が食べれるくらい安心」
  「なんとなく、無農薬野菜と書いていたら買っちゃう」
などでしょうか?今の世の中では、“無農薬”と聞くとなんとなく“安全”というワードが想起される方が少なくないと思います。果たして、本当にそうなのでしょうか?
 「そもそも農薬は何が危ないのか?」「無農薬によるデメリットはないのか?」
この記事ではこのような疑問に焦点を当てて見ていきたいと思います。

(長いので、結果だけ見たいよって方は「注意」「じゃあやっぱり農薬使ってると危ないの?」「無農薬野菜、実は危ない?」「結論!!」の4つを読めば大枠は理解できると思います☺︎)

注意

 この記事では、“無農薬”野菜と、“農薬”を用いた野菜のどちらの方が良い!という話をするわけではありません。ただ、「無農薬だから安全だ!」と直結させてしまうのは良くないのでは?と思ったのです。
 何事にもメリットデメリットがあります。無農薬のデメリットは何か。逆に農薬を用いることのメリットは何か。そこを知りもしないのに「なんとなく安全そう」という考えを持つことは安直ではないかという問題提起をしたいのです。

農薬ってそもそもなんだろう?

定義

 農薬ってそもそもなんなんでしょう?
 定義が分からねば、それについて議論することはできません。というわけで法律を調べて見ました👀

「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草その他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤、除草剤その他の薬剤(中略)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤(肥料の品質の確保等に関する法律(昭和二十五年法律第百二十七号)第二条第一項に規定する肥料を除く。)をいう。

農薬取締法 第一章 第二条(昭和二十三年法律第八十二号)
(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000082/#Mp-Ch_1)

 上の難しい文を、めちゃくちゃ雑にいうと、農薬とは「農作物を育てるために使うあらゆる薬剤(肥料を除く)」でした。
 意外と農薬の定義は広いのですね Σ(-᷅_-᷄๑)   殺菌・殺虫・除草剤は農薬のイメージが強いですが、成長促進剤や発芽抑制剤も農薬に含まれるとは知りませんでした。
 ……私の感想はともかく、この節では農薬の定義について理解できました。では次に、どういった成分が人体に害があるのか見ていきたいと思います👀

特に何の成分が危ないの?

 農薬に含まれている成分の中で、人体に害のある成分はめちゃくちゃあります。それらの名前を書き連ねると、とんでもないことになってしまいます。私も読者の皆さんも、頭がパンクしてしまうでしょう。
 なので、農薬に含まれている成分の中で、医学部の授業ででてくるような有名な成分3つに絞って見ていきたいと思います。

 ・有機リン化合物
 ・カーバメイト系化合物
 ・パラコート

有機リン系化合物カーバメイト系化合物は、主に殺虫剤に含まれており、コリンエステラーゼ阻害作用があります。「ふーん、そうなんだ」程度で構いません。詳しい機序は長くなるので割愛します。気になることは、どんな症状が現れるのか、ではないでしょうか。
 急性の症状では、筋力の低下流涙排尿脱糞嘔吐などが見られます。また、喘鳴(ぜいぜいするような呼吸)や低酸素も見られます。遅発性の症状では、治療にも関わらず、毒物の曝露から1〜3日後に筋力低下などが見られます。後遺症としては認知障害が見られることもあります。
 ちなみに農薬には含まれませんが、有機リン化合物には有名なものでサリンがあります。これは、戦争で使用する神経剤として開発されたものです。もう一度言いますが、農薬には含まれていません。
 これだけ見ると有機リン系化合物とカーバメイト系化合物はやばすぎる毒物というイメージがついてしまうかもしれませんが、正しく使えば薬になります。例えば、緑内障や重症筋無力症、アルツハイマー病などの病気に対して治療薬として使用されています。
 蛇足ですが、他に毒物が医療に応用されているものの例を上げるならば、ボツリヌス毒素がボトックスに用いられているといったものがあります。

 パラコートは主に除草剤に含まれており活性酸素を産生します。先ほどと同じく詳しい作用機序は割愛しますね。
 パラコートは毒性が強いため、製造が中止されてきているようですが、令和5年時点で、使用が禁止されているわけではないようです。もちろん、使用基準は厳密に定められています。
 パラコートを摂取した場合、大部分が嘔吐により体外へ排出され、体内に残ったものもほとんどが尿中に排出されます。ですが、腸管から吸収されると、活性酸素を産生するために強い細胞障害が起こります。まぁ、私たちの体にとって非常によろしくないことが起きるとイメージできればいいと思います。特に肺でよろしくないことが起きやすく、簡単に言えば呼吸障害が生じてしばしば致死的になります。このように臓器に一度でもパラコートが集まると、除去することは不可能であるとされています。
 ちなみに、パラコートはパラコート殺人事件といったものが発生しました。どんな事件だったのか、chatGPTさんに聞いてみましょう。

パラコート殺人事件は、1985年から1986年にかけて日本各地で発生した毒物混入事件です。被害者は、自動販売機で購入した飲料に猛毒の農薬「パラコート」が混入されていたことにより死亡しました。事件は連続して発生し、12人が犠牲となりましたが、犯人は特定されないまま未解決となっています。この事件は自販機の安全性に対する社会的懸念を引き起こし、販売方式の見直しにつながりました。

 まだ、犯人が見つかっておらず、未解決のままというのは恐ろしいですね。
 もし、パラコートの入った除草剤を用いる場合には十分に注意してください。

 この節では、人体に及ぼす農薬成分の一部について紹介しました。では、やっぱり農薬を使った農作物は危ないのでしょうか?その疑問について次の節で紹介します。

じゃあやっぱり農薬使ってると危ないの?

 この節では、タイトルの通り「農薬使ってると危ないの?」の疑問に答えていきたいと思います。結論から言えば「危なくないと言っていい」です。もちろん考え方や信条によって変わってきますが…。

 農薬が人体に害を及ぼす時、それは農作物に農薬が残っている時に起こります。この、農作物に農薬が残る、といった現象を残留といいます。
 日本では、食品中に残留する農薬が人体に害を及ぼすことのないように、国が規定を定めています
 厚生労働省は、全ての農薬の残留基準を規定しています。残留基準は、食品安全委員会が人が接種しても安全と表明日量の範囲内で、食品ごとに設定されています。そのため、残留量を超えた農作物は輸入品を含めて、販売することが法律(※1)によって禁止されています。さらに、農林水産省では、残留基準に沿って、法律(※2)により農薬の使用基準を設定しています。また、食品輸入時には検疫所において、残留農薬の検査が行われています。
(※1 食品衛生法 ※2 農薬取締法)

 何が言いたいかというと、農薬が使われていても、人体の健康が損なわれないように多くの対策を国が定めています。もちろん、検査から漏れ、基準よりも残留値が高くなっているものが絶対にない!とは言い切れませんが、少なくとも日本においては農薬を用いた農作物を食しても健康には問題がない、と言い切ってしまってもいいレベルだと私は思います。

無農薬野菜、実は危ない?

 では、無農薬野菜は安全なのでしょうか?確かに有害物質の入っている農薬を使っていないのなら、めちゃくちゃ安全じゃないか?そう思いますよね。
 ところがどっこい、実は無農薬の農作物にもデメリットがあるそうなのです。
 (もちろん育てるのが大変という側面もあると思うのですがここでは触れないでおこうと思います。)
 そもそも、天然の植物は外敵から身を守るために天然の毒素を産生します。例えば、虫に食われれば、食われないために殺虫剤のような成分を作り出します。農薬を使った植物では、植物は農薬の成分によって外敵から守られるため、天然の毒素が産生される量は通常よりも少なくなります。しかし農薬を使わないと、どうしても外敵に食われる率は高まります。となると、自らを守るために、農作物は自身で天然の毒素を産生します。
 ここで、ある研究を提示したいと思います。カリフォルニア大学のB N Ames博士の研究(1990年発表)において、「実際に私たち人間の口に入る農作物が持つ毒性物質の99.99%が、農作物が自身で生成する天然毒素である」ということが記されています。さらに「農薬残留物の比較的な危険性は重要ではない」とも述べています。(英語論文ですがなかなか面白いので興味ある方はぜひ読んでみてください!参考文献にリンクあります☺︎)
 このことから、農薬の残留成分よりも、天然の毒素の方が私たちが摂取する可能性が高いということが考えられます。とはいえ、もちろん無農薬野菜をたくさん食べたからって人間に害があるほど毒素を産生するわけではありません。(ジャガイモの芽のように取り除かないと危ないものもありますが…)

 めちゃくちゃ蛇足ですが、「無農薬野菜」という語は日本では使用してはいけないことになっています※。(無農薬野菜などと記載している農家さんもよくいらっしゃいますが…。)
 理由については、このように記されていました。

この表示から消費者が受け取る イメージは「土壌に残留した農薬や周辺ほ場から飛散した農薬を含め、一切の残留農薬 を含まない農産物」と受け取られており、優良誤認を招いておりました

特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A    Q6  2.

「無農薬」の表示は、原則として収穫前3年間以上農薬や化学合成肥料を使 用せず、第三者認証・表示規制もあるなど国際基準に準拠した厳しい基準をクリアした 「有機」の表示よりも優良であると誤認している消費者が6割以上存在する

特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A     Q6  3.

 つまり、「無農薬」というワードが消費者の誤解を招くため、「無農薬」という表示が禁止されているのです。
 では何と表示されているのか。それは「有機栽培農作物」「特別栽培農産物」などの明確な基準に基づいた表示が推奨されています。ちなみにそれらの違いについてChatGPTさんに聞いてみると…

使用可能な農薬や肥料:
有機栽培では完全禁止、一方特別栽培では厳しく制限しつつ一部使用可能。
規制の厳しさ:
有機栽培の方が基準が厳格で、認証取得に時間とコストがかかる。
表示:
有機栽培は「有機JASマーク」で統一、特別栽培は任意表示。
つまり、有機栽培は農薬や化学肥料を一切使わない方法を採用するのに対し、特別栽培はその使用を減らしながらも農業の効率や収穫量を保つ方法です。

 つまり、無農薬野菜を買いたい場合には「有機栽培農作物」を購入すれば良いというわけですね。
 農家さんの中には、消費者にわかりやすいよう、ルールを破ってまで「無農薬」と表示する方も見受けられます。これはあくまでも個人的な意見ですが、ルールを破るような表示の農作物より、ルールを守って表示している農作物の方が信頼でき安心だなと思います。自分だったら正しく記載されているものを買うと思います。
 まぁ、それは正しい知識が消費者側にあってこそなんですけどね…(汗)

※特別栽培農産物に係る表示ガイドライン 5禁止表示事項 (7)に記載有。(制定:平成4年10月1日)

結論!!

 結論から言えば、農薬を使っているのか否かのいずれでも、人体への危険性はないと考えていいです。少なくとも日本においては、どちらを食べても問題ないと思います。
 とはいえ、この選択には個人の感情や心情が絡んでくると思います。いくら安全だって言われたって農薬を使った農作物を口に入れたくないという方も、虫が苦手すぎて少しでも虫がついていなさそうな農薬を使った農作物がいいという方も、いらっしゃると思います。
 それでいいと私は思います。ただ、大事なのは、これがダメだ!と決めつけることではなく、どのような利点・欠点があるのか、しっかりと情報を仕入れて、自分で判断するということだと私は考えます。
 「テレビでやってたから〜」や、「家族や友達が言ってたから」で、なんとなく決めてしまうことはよろしくないのではないかなと思います。何度でも言いますが、この記事では、“無農薬”野菜と、“農薬”を用いた野菜のどちらの方が良い!という話をしているわけではありません
 皆さんが、「農薬を使うこと、使わないこと」について一考する機会になったら嬉しいです。




 最後までお付き合いくださりありがとうございました。本テーマは「なんで農薬は悪」という認識があるんだろう?という私の疑問から生まれたものです。必要だから使っているはずだし、本当に危ないなら生産や輸入を完全停止してしまえばいいのです。でもそうはなっていない。ということは農薬を使うことによって得られる恩恵があるはずでは?と考えました。
 医学部の授業では、農薬に入っている成分についても学習します。それは、何らかしらの理由で農薬を飲んでしまった、という患者さんにどのような処置をするのかということを学ぶためです。そんなのあるわけないだろって思うかもしれませんが、田舎の方だと珍しくはないそうです。農薬を飲んでしまった場合、悠長に検査などしていられません。患者さんの症状を見て、「これはもしかしたら農薬を飲んだのかもしれない」。このことに気づけるかどうかで、患者さんの命を救えるかどうかが全然違ってきます。だから分子というような目に見えないメカニズムから目に見える症状・後遺症まで、学習するのです。
 今の話は蛇足でしたが、「知っていること」の重要性が少しでも伝わっていると嬉しいです。
 あとがきまで長くなってしまって恐縮ですがここまでで、本記事は終わりになります。
 改めまして、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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参考文献

 以下に参考文献を載せます。非常に興味深い内容がたくさんありますので、よろしければご覧ください。

e-GOV 法令検索 農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号) 第一章 第二条
 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000082/#Mp-Ch_1 (2024/11/25 閲覧)
MSDマニュアル 有機リン中毒およびカルバメート中毒
 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-外傷と中毒/中毒/有機リン中毒およびカルバメート中毒#治療_v1119312_ja (2024/11/28 閲覧)
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 農薬・動物用医薬品部会報告について パラコート
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001152886.pdf  (2024/11/28 閲覧)
臨床環境医学 (第6 巻第 2 号)  農薬中毒 ーパラコート中毒ー  池上 之浩,田勢 長一郎
 http://jsce-ac.umin.jp/jjce6_2_67.pdf    (2024/11/28 閲覧)
厚生労働省 健康・医療食品中の残留農薬等
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html (2024/11/26 閲覧)
Dietary pesticides (99.99% all natural)     B N Ames, M Profet, and L S Gold  1990.10.1
 https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.87.19.7777  (2024/11/28 閲覧)
特別栽培農産物に係る表示ガイドライン 5 表示禁止事項
 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/tokusai_a-5.pdf  (2024/11/28 閲覧)
特別栽培農産物に係る表示ガイドライン Q&A          Q6
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_qa.pdf  (2024/11/28 閲覧)

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