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行動経済学の逆襲 要約③

 著者であるリチャードセイラーは、従来の経済理論では説明できない人間の行動について、黒板に書き連ねていました。こうした行動はどのようにして説明できるのでしょうか?
 今回は、その導入となる部分、第3章「黒板のおかしな行動リスト」の要約です。

【全体の要約】
 人間は、従来の経済理論と矛盾する行動をとる。こうした、「誤った行動・判断」は、誤差項として無視できるものではなく、系統的に生じるものだといえる。
 人間は、「限られた合理性」のもと、「ヒューリスティクス」に基づいた行動をとるため、系統的な「バイアス」が生じるのである。


1. 後知恵バイアス

次のような例は、よくあることかと思います。

 CEOがとあるプロジェクトを実行するか悩んでいた。リスクを取って実行を決断したが、結果は失敗に終わってしまった。するとCEOは、「この失敗の原因は事前に予測できていたはずだ」と考えるようになる。

 人は、何かが起きた後になると、あたかも「そうなると思っていた」ように感じてしまいます。この傾向を「後知恵バイアス」といいます。

2. ヒューリスティクスとバイアス

続いて、こちらの質問を考えてみてください。

 日本での自殺者数と殺人死亡者数どちらが多いでしょう?

 答えは、「自殺者数」だそうです。私たちは、日ごろニュースで殺人事件の話をよく目にするので、殺人死亡者数と答えてしまった方も多いのではないでしょうか?

 人間の意思決定には時間や知力の限界があります。そのため、何かを判断するときに経験則に頼ることになります。この経験則のことを「ヒューリスティクス」といいます。今回の例では、ニュースで目にする、という経験則から誤った判断をしてしまったことになります。

 従来の経済理論では、こうした「誤った」判断は誤差項として計算できるので、無視しても構わない、としていました。
 しかし、現実を見るとこうした「誤った」判断はランダムに発生しているわけではなく、系統的に生じていることがわかります。(実際に、上記のクイズは間違える人が多いみたいです。)

 こうした、「系統的なエラー」のことを「バイアス」と呼びます。つまり、「ヒューリスティクス」による判断が、「バイアス」を生むのです。

以上が第3章の要約になります。

次回予告
次回は、第4章「カーネマンの「価値理論」という衝撃」です。


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