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密室の恐怖

このご時世で密室とは、いわゆる三密の一つだが、そうではない。

密室で怖い思いをした話。

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大学入学後、新しくできた学科の友達と、サークルかクラブを決めようと、あちこち見学へ行った。
この際だから、絶対入らないであろうと思うところも行ってみる。
友達Yちゃんと、ちょっとオタク的な男の人2人に挟まれて、強引に連れて行かされた謎のサークル。

〇〇〇研究会

その〇〇〇という言葉は全く聞いたことがなかった。
あまり行ったことのない校舎の一教室を、勧誘説明会会場として借りている。
「連れてきました~」的に上級生に引き渡される。
まずいよ、まずい・・・これ。
完全に囲まれてる。
見渡すと新入生は私たちだけ。
教室の扉は締まっている。

「とにかくね、信じるかどうかってことを研究するわけ」
「信じるって?」
「例えばこのミカン。はい、割るよ。で、私たちが手をかざすわけ。そしてこちらかざさない方。どちらがおいしいかってことよ」
え???意味が分からん。
「とにかく食べてみて」
Yちゃんが食べる。私も仕方なく。
正直わからない。
でも、絶対こちらだと上級生に決めつけられた圧に勝てなかった。
Yちゃんが、
「こっちかなぁ」と言い出す。

ひゃあ、やめてー。ここは断言せんとこうよー。
私は思い切って、
「すいません。わかりません」
と言ってみた。
凍り付いた空気。
「・・・」
「でも、私たちとこれから一緒に研究していけるから」

はっきり言って、もう味はどちらでも良かった。
一刻も早く部屋を出たかった。
幸いなことにキャンパス内だったので、監禁はなかった。

私たちは無知だったのでわからなかったが、あとで聞いたら宗教だった。

密室ってNOと思ってもNOと言えない。

~~~
数年後、考えてみればまたYちゃんとだ。
休みの日に神戸に行った。
異人館に行って、うろうろしてケーキを食べに行こうって感じで。
商店街を歩いていると、なんだか若い男の人が、可愛いグラスを配っていた。ファンシーショップで買うなら500円くらいしそうなものだった。
Yちゃんと2人で受け取ると、

「中でもっと他のものもやってるから見て行って」

と言われ、雑居ビルの二階へ。
すると、なぜか靴を脱がされ、ゴザの上へ座らされる。
すでにたくさんの人がいた。50人位?

「今日はお集まりいただきありがとうございます。先ほどグラスを気に入っ方手をあげてー、ハーイ!」
「では、ここではさらに僕らの意見に賛成してくれる人に、色々差し上げていきたいと思います。わかった人はハーイ!」

なんだか異様な空気。
振り返ると入り口には、イカツイ男が2人仁王立ちで立っている。
しかも脱いだ靴は遠くに並べられている。

「一番勢いよく手をあげて下さる方に差し上げますからねー」と、さらにタオルやら鍋やらを、ノリの良い人にあげていた。
「僕の出すもの全部良いな~って思う人、ハーイ!」
8割くらいの人がノリ良く手を上げる。
「あれー?僕に同意できない人はね、もうね、こちらもイヤになってくるんで帰ってもらって良いですよ」
ちらほら帰っていく。

「あーやってね、帰った人は損をしてるんです」
と、出て行った人の悪口をさんざん言う。

そうしているうちに、一面に鶴の刺繍をほどこした婚礼布団が出てきた。

「これ、素敵だな~と思う人、ハーイ!」
数人が手をあげた。
「あれー?なんで全員手を上げないのかな~~?」

微妙な空気が流れている。

布団はタダではあげられないと言う。あたりまえだ。
今、私のこの年齢なら、もっと早く察しがついただろう。

そう、布団は掛布団だけで38万円!(確かこのくらいの仰天価格だった)
本当は100万以上するとか言う。

「欲しい人~?」
「ハーイ」

えーっ?わおー!
前の列の高齢の女性2人ほど手を上げている!!

Yちゃんの足をそっと突っつく。
音声無し、口の形だけで、

「出ーるー?」

幸いYちゃんにはすぐ通じた。
遠いところまで靴を取りに行き、入り口でいかついお兄さんたちに睨まれながら出た。

こちらは催眠商法なるものだと、後ほど知った。

密室って怖い。

今なら、とっとと出れるなぁ。

先日、実家へ寄ったら、母がサイダーを飲んでいた。
昔、私たちに、骨が溶けるとかで、ほとんど炭酸飲料を飲ませなかった母。
じっと見る私。

「あ、これ?もう私はこの年だから骨溶けたって良いのよ~。アハハ~」

良いんだよ。そんなことはどーでも。

私が見てるのは、そのグラスだ!

まだあったんや。


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