ユキヤナギとカミキリムシ
ユキヤナギはもう何年もそこにいて、春になると細かな白い花を咲かせてくれる。
困ったことに、この老木、ひどくカミキリムシに気に入られている。二週間ほど前、株元に成虫を発見。ほんとうはすぐに捕まえるべきなのだろうけれど、見て見ぬふりをした。翌日にも見かけたが、やはり私にはどうすることもできなかった。
いつからカミキリムシは、ここに住むようになったのか。以前は、庭をあまりよく見ていなかったせいか、咲いた花には気づいても、周りにいる虫にはほとんど気づかなかった。
昨年はじめて庭でカミキリムシの成虫を目撃し、そのあと幼虫がいるだろうと思われる形跡も発見した。そして今年、出てこないように願っていたが、その立派な姿の昆虫は、ユキヤナギの株元に現れ、バラの茎を暴食してどこかへ消えた。
次に見つけたらこんどこそ捕まえようと決心しつつあったが、それきり見かけない。バラは一部がボロボロになってしまったが、もうあの虫は見たくないというのが本音だから、よそへ行ったならそれでいい。
しかしこれで終わらないのが、カミキリムシの厄介なところである。同じユキヤナギの株元に、こんどはおがくずのような細かいものがこんもりと三か所にあるのを発見。幼虫が木の中で暮らしているにちがいない。
昨年用意しておいたカミキリムシの幼虫専用のスプレーで対処しよう。とはいえ、幼虫の穴がどこにあるのか、どうもよくわからない。それらしいところにシューっと噴射した。それで私はもう疲れ果てた。
カミキリムシが植物を枯らす原因になるとは数年前までまったく知らなかった。外で遊ぶことも多かった子ども時代は、黒地に鮮やかなブルーが良く合う美しい虫だと思っていた。大人になってからはめったに目撃することがなかったが、以前どこかで見たときは、やはり姿の良い虫だと思った。
今でも姿の良い虫だとは思う。けれど、木が弱るのは困る。あのおがくずもあの美しい虫も、もう見たくない。