【F1】コラム:勝負を分けたチーム力。ペレスがタイトル争いに名乗りを上げる〈第7戦モナコGP〉
2戦連続で勝てるレースを落とした跳ね馬
今回の週末も予選まではフェラーリ&シャルル・ルクレールの独壇場でした。昨年の雪辱を果たすために、彼はミスを犯すことなく予選までまとめてきました。しかし決勝では雨が降ったことによってドライバーだけでなく、チームの力も問われるようになりました。これがルクレールの母国勝利を遠ざけてしまいました。モナコはピット戦略上オーバーカットが強力です。路面がウエットからドライへと変化していくなかで、ウエットタイヤからインターミディエイトタイヤに履き替えるか、それともドライタイヤに変えるか各チームの判断が分かれました。レッドブルは2台ともインターミディエイト、フェラーリはルクレールのみインターミディエイトへ交換しました。カルロス・サインツと戦略を分けたのは悪くありません。問題は2回のピットインのタイミングです。1回目はペレスの2周後でした。マッティア・ビノット代表は「インターミディエイトを過小評価していた」と言っていましたが、ペレスに先行を許すことが分かれば無理に入らせる必要はありませんでした。ここでウエットからドライタイヤへ直接交換する戦略に変更してもよかったはずです。2回目はサインツの4秒後方で同じ周にピットインするという、これもあり得ないことです。なおかつ温まりの悪いハードタイヤに交換するのであれば、ライバルよりも1周遅く入るのが鉄則です。マックス・フェルスタッペンの前でゴールできれば最低限の結果でしたが、あまりにお粗末なフェラーリのレース運営でした。
週末を通してマックスに勝ったチェコ
フェラーリのお粗末な戦略によって再びレッドブルに勝利が転がり込みましたが、今回はセルジオ・ペレスが栄光をつかみました。フェルスタッペンは週末を通してなかなかマシンに満足できない状況が続いたのとは対照的に、ペレスはFP3でルクレールとタイムの出し合いをしたように絶好調でした。Q3のクラッシュはもったいなかったですが、決勝はチーム力でフェラーリ2台を撃破しました。これでドライバーズランキングでもフェルスタッペンと25点差に迫りチャンピオン争いに名乗りを上げました。前回スペインでは実質のチームオーダーも出されて屈辱的扱いを受けただけに、モナコでの勝利は自信と存在感を示すことになったと思います。一方のフェルスタッペンはルクレールの前でフィニッシュできたことはせめてもの救いだったはずです。珍しく週末を通してペレスに完敗でした。次のバクーもペレスは得意としてるだけに、チームメイト対決もますます楽しみになってきました。
心配なリカルド&シューマッハ
シーズンはこれで1/3を消化したわけですが、ダニエル・リカルド(マクラーレン)とミック・シューマッハ(ハース)には来季シート喪失の噂が出始めました。
特にリカルドに関してはチームメイトのランド・ノリスとの差が大きすぎます。リカルドほど経験のある速いドライバーがここまで差をつけられるのは考えられませんし、チームとしても大誤算でしょう。マクラーレンのマシンはフェルナンド・アロンソ(現アルピーヌ)が在籍していた時に彼のドライビングスタイルに合わせて設計されていたと聞いたことがあります。そのため少々クセの強いマシン特性があって、チームメイトだったストフェル・バンドーンは乗りこなせず速さを発揮できなかったそうです。その時代から在籍していたノリスはマクラーレンのマシンのツボを押さえている一方、在籍2年目のリカルドはまだ掴めていないのかもしれません。しかしF1で12シーズンも過ごしているリカルドですから、そんな甘えたことは言っていられません。ザク・ブラウンCEOも23年までの契約には解除条項があることを示唆しており、一刻も早いパフォーマンス改善に期待したいところです。
シューマッハに関しては今年からケビン・マグヌッセンがチームメイトになってようやく真の評価が得られることになったわけですが、父ミハエルには遠く及ばないだろうというのが現状です。特に一発の速さはF2時代からの課題でしたが、それは今もマグヌッセンに負けていることから続いています。そしてクラッシュが多すぎるのもギュンター・シュタイナー代表の悩みの種でしょう。現代F1は厳しい予算制限のもとでマシン開発をしなければいけません。サウジアラビアといい、モナコといいクラッシュの代償はあまりに大き過ぎました。フェラーリ・アカデミー所属なのでフェラーリのバックアップはあるにしろ、未だノーポイントの現状を鑑みれば将来は全く安泰ではなさそうです。
text by 亀石 弥都
画像:Formula 1 Official Twitter