【KAMEの蹴球三昧】#39 ブレなかった神戸。見せつけた首位の力〈J1第30節 神戸対鹿島 レビュー〉
クリムゾンレッドとアントラーズレッドに染まった国立競技場。53,444人が目にすることになったのは、初優勝に向けて首位を走るヴィッセル神戸がその座に相応しいことを示す完勝劇だった。逆に国内最多20のタイトルホルダー、鹿島アントラーズはこの敗戦により屈辱の7季連続国内無冠が決まった。
スタメン
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神戸のスタメンTopics
・出場が不透明とされていたGK前川、FW武藤がスタメン入り
・累積警告で出場停止の左SB初瀬の代役は、普段左CBを務める本多。トゥーレルが8月19日(土)に行われた第24節以来のスタメン起用。
・アンカーには3戦連続で扇原が抜擢。IHの1枚には井出遥也を起用し、佐々木大樹は左WGがスタートポジションに。
鹿島のスタメンTopics
・4-4-2ではなく4-2-3-1のフォーメーションを採用。
・荒木遼太郎がリーグ戦では7月1日(土)の第19節京都戦以来のスタメン復帰。
試合結果
神戸3-1鹿島
【得点】
神戸:16'佐々木 45'井出 83'佐々木
鹿島:91'松村
試合スタッツ
【ゴール期待値(xG)】
神戸:2.11 鹿島:1.00
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Picu Up レビュー〈神戸〉
神戸は今季自分たちが積み重ねてきたスタイルをしっかりとぶつけることに加え、この一戦に準備してきたプランを遂行した。
❶鹿島の左SB安西を狙ってボールを蹴る
この試合で神戸が用意したプランの一つが、鹿島の左SB安西を目がけたロングボールを配球することだった。その競り合いに大迫と佐々木をぶつけるようにしてセカンドボールを回収し攻撃に繋げることを狙った。
❷クロスに対してCBとSBの間に視野の外から走り込み、無理にCBとゴール前で競らない
今試合の3得点はサイドからのクロスあるいはコーナーキックから生まれたものだった。ゴール前はゾーンで守る鹿島に対して、神戸はSBの背後や、背後の死角からCBとSBの前に飛び込んだ。植田、関川とヘディングに強い2人と単純な競り合いをすることは選ばずに、少し距離をとってから瞬間的に入って合わせた。
1点目は、大迫が安西のやや斜め後ろに立ったことで、佐々木が関川と安西の間にあっさりと飛び込むができた。また植田と関川の間に武藤がサイドから入ってきている。
2点目は山口の大きな対角へのボールをタッチライン際で武藤が残してから上げたクロスに、大迫が植田と関川の間で潰れた背後、安西の手前に井出が飛び込んで合わせている。
また、この試合でも攻守にわたって今季の神戸らしさが出たシーンを紹介したい。
(1)神戸の連動したプレス(7:35〜)
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関川が安西に出したボールがゆるくなったところを酒井高徳がカットした場面。
神戸は4-4-2で守備をするが、大迫+1で前線からプレスをかける。このシーンではGKの早川に大迫が右を切りながらプレスをかけ、左CBの関川には佐々木が前からプレスをかけて左サイドへと誘導。酒井が左SH藤井を捨てて、左SB安西までジャンプして前向きでボールを奪いに行く。関川のパススピードが遅かったこともあるが、前線と最終ラインまでが連動してプレスをかけることができている今季の神戸の強さを示したシーンだった。
(2)神戸のプレス回避(14:23〜)
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★佐々木がサイドの高い位置に張り安西をピン止め
→酒井が瞬間的にフリーとなる
☆山口が下がって、ピトゥカとの距離を置く
→自分が前向きに受けてボールを運ぶ空間を作る
★大迫が佐野とピトゥカの間にできたスペースに下り、左CB関川を引きつける
→関川の出てきた背後のスペースに、井出が走りこむ
今季の神戸はハイプレスに出る時、リトリートして構える時の守備がハッキリしている。相手の矢印が後ろになったら前線から連動してプレスをかける。構える時には最終ラインと前線をコンパクトにした守備ブロックを形成する。そして相手のカウンター攻撃では、左右のウイングプレイヤーが素早く戻り守備に参加することを怠らない。この試合でも神戸のチーム走行距離は120.588kmを記録し、鹿島よりも7km以上走り回った。
クラブ史上初のJ1制覇に向けて、大きな1勝を掴み取ってみせた。
〈②へ続く〉