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息が出来なくなるくらいの景色

1人暮らしを始めて僅か5ヶ月で退去した。

理由は9月から住み込みでシェアハウスを運営・管理する為だった。

7階建てのマンションの7階に借りていた部屋があった。そこは窓が広く、目の前には透き通った鴨川が一面に見えた。
春には満開の桜が一望できる。

とても気に入っていたこの部屋を退去しなければいけないことがこの上なく悲しかった。

退去日当日。比較的晴天だったが、14:00~17:00の間だけ大雨が降った。

その日は用事で大阪に出かけていて、京都に15:00頃着いた。

雨の中、3㌖程離れた市税事務所に用事があったので、大雨の中歩いて向かった。

退去日の立ち合い時刻は17:00
用事を済まし時刻を見ると、16:45だった。

此処から家まで5㌖程の距離があり、歩いて行くと遅刻する恐れがあった為、Uberでタクシーを呼び、自宅に向かうことにした。

自宅に着くと時刻は16:50
間に合ったと思ってホッとした。
その頃にはすっかり雨は止んだ様子。

家具もキッチン用品も何もない薄暗い部屋の中で、何となく鴨川を見よう思い、窓に向かう。

すると

目の前に今まで見たことない大きく綺麗な虹がかかっていた。

とても気に入っていたこの部屋を退去する日にこんな素敵な虹が見られてとても晴れやかな気持ちになった。

20分程するとその虹は静かに消えていった。

昔ヒッチハイクで日本一周をしていた頃に、岡山で載せて頂いたドライバーさんがこんなこと言ってくれた事を思い出した。

『一瞬、息が出来なくなるくらいの景色にいつか出会ってほしい。それが君の人生でかけがえのない瞬間になる。そんな心動かされる瞬間の積み重ねが人生を豊かにしていくよ』

新たな門出を祝福してくれるかのように、一瞬だけ現れた虹は、僕にとってかけがえのない瞬間で、年老いてもこの景色は忘れないような気がした。

その後、管理会社の人が立ち合いの約束を忘れていたらしく、1時間遅刻してきました(笑)
タクシーに乗った意味、、、。