条約と憲法、そして安保条約
条約と憲法の関係について憲法学の通説は「憲法優位説」です。
そもそも条約は国家間の合意の束であり、立憲主義の建前からして各国政府は憲法の枠内でしか他国と合意を結べませんから、憲法に違反する条約は無効でなければなりません。また、憲法改正には国民投票を必要とするところ、条約は国会の承認で足りますから、「条約優位説」によれば国会の承認だけで違憲の条約が効力を持ち、実質的に憲法が改定されてしまうことになります。これでは、憲法改正を国民投票に委ねた趣旨、すなわち国民主権主義に反することになります。
ところが現実はどうでしょう?辺野古など米軍基地をめぐる事実関係をみれば、現実は日米安保条約が憲法を蹂躙する「条約優位説」で動いていると言わざるを得ません。現実は、政府間の合意である条約で憲法が実質的に改定され、条約を盾に選挙の結果が無視されている状況が続いているのです。
そうすると、真に立憲主義と民主主義を取り戻したいのなら、安保条約そのものの改定・破棄を議論する勇気が必要だということになります。地位協定改定は喫緊の課題だとしても本質ではなく、これに誤魔化されてもいけません。大切なのは、あくまで日米安保条約本体です。
それを指摘する勇気のある知識人が、非常に少なくなったのが残念です。時代遅れだ等と考えているなら全くの誤りです。今言う必要はないと言うのも間違いです。
正しいことは正しいと常に言い続けて、次の世代に伝えなければなりません。
初出2020年9月10日Facebook