ローゼン「尊厳」
ローゼン「尊厳」読了。
単に「尊厳」概念の定義や歴史的変遷を追うだけではない。具体的ケースに適用して妥当性を検討する「反省的均衡」の思考をとる。とても論争的な書だ。
筆者はカントによる「尊厳」の世俗化を支持する立場に立ちつつ、ドイツ憲法に見られる「尊厳の法制化」には批判的なようだ。
「尊厳ある小人」「ダシュナー事件」の分析には唸らされる。
「尊厳」概念のカソリック的解釈によれば堕胎はいかなる場合にも禁止されるという不合理も生じかねず、現代の人権感覚に整合しなくなるだろう。
他方、筆者はカント解釈の「人間主義」的理解にも反対する。この部分が最もスリリングだ。
「私たちは、自分には人間性の尊厳を敬う基本的義務があると、理性的に信じることができる」「そのような義務は、私たちに、敬意を表するような方法で行動することを求める」「私たちの義務は…私たちの一部になっているので、それがなければ、私たちは人として成り立たなくなってしまう」203頁
初出2021年4月20日Facebook