【♯2000字のドラマ】恋と愛と
「え!?」
思いもよらぬ話を聞いて、俺は固まってしまった。せっかく好意を寄せてる女の子にカフェに呼び出されたのいうのに…。まぁ、でも普通に期待しちゃうよね。いや、でもまさか、えー…!?
それは、もう授業も終わるころ、スマホがブルっとしたので確認すると
[放課後、時間ありますか?]
と、まさかの凛ちゃんからのお誘い。凛ちゃんは件の好意を寄せてる女の子ね。それは胸が騒いじゃって、でもバレないように
[あるけど、どうしたの?]
と、返信。すぐに既読になって、
[お話したいことがあるから、駅前のカフェに来てくれませんか?]
…って、この流れなら少しは期待しちゃうのも仕方なくない?普通に男なら期待しちゃうでしょ。
[分かった]
と、また返信。もう居ても立っても居られないとはこのことを言うんですね。チャイムと同時に教室を飛び出しましたよ。
凛ちゃん、本名霧島凛。一言で言えば透明感のある人。天真爛漫、悪意のない人。何もないところで躓いたり、驚くと声をあげたり…、一見すると「あざとい」なんて言われて同性に嫌われてもおかしくなさそうだけど、そんなことはない。たぶん彼女はそれが自然体で、だから彼女の周りには同性の友達も溢れる。無論、そんなだから異性にも人気がある。こんな人と付き合えればいいな…なんて、そりゃ思いますよね。幸いなことに、彼女の親しい友人が俺の中学からの同級生。仲も良いこともあり、あの手この手を使い(どんな手かって?想像してください。)競馬に例えれば好位のインは確保できたと思っていたんです。そして、ついにその時が…。
いざカフェへ!入店すると、すぐに凛ちゃんは見つかりました。
「待たせちゃってごめん、ね?」
あれ?なんかおかしいぞ??
「ごめんね。急に呼び出して」
ひとまず、カフェでコーヒーを注文、受け取って席へ。コーヒーはもちろん大人ぶるためブラックです。少し、あれこれたわいもない話しをしたあとで、
「ところで、どうしたの?」
「えー、あ、うん…」
しばしの沈黙。
「えーと、えー…」
こっちもハートブレイクしそうです。
下を向いて恥ずかしそうにしながら、意を決したように俺を見つめ。
「今日聞きたかったのは…」
いよいよ、その時が!
「奏くんって付き合ってる女の子いるのかな?」
はい、喜んで!俺も凛ちゃんのことが…
と思った刹那、強烈な違和感。
…え?奏??
えーと、俺の名前は奏ではありません。
奏?それは俺の知っている奏ですか??
あー、そうなんだー。
凛ちゃん、奏が好きだったんですね。へー。
でも、いつこのふたりに接点あったんだけ?
奏、本名藤原奏。一言で言えば…、なんだろ?つるまない、独りが好き、明るさのカケラも、ユーモアもない。教室の一番後ろの窓側の席で、いつも外をみている。ないない尽くし。クラスメイトと話してるのも見たことがない。クラスメイトは奏のことを遠巻きにみている感じ。見えない壁をアイツが築いているからだ。
ただ、不思議と俺とはウマが合う、昔からの腐れ縁。一緒に登校し、ただ、雑談し、気が向いた時には連み、気が向かなければ連まない。昔のどこかの政治家か言っていた「清算と打算の関係」これがしっくりくる。考えてみると、なんでコイツと仲良いんだけ、俺?
その後も凛ちゃんは話してくれたいたみたいだけど、まったく頭に入ってこない。まぁ、そりゃそうですよね。フラれた上にまさかの好きな子の好きな子が…。でも、だんだん気になってきて。奏のこと、凛ちゃんいつ好きになったんだろ?
あのさー、っと口が開きかけたけど、
聞かないことにした。
凛ちゃんは、上部だけの人間を好きになるタイプでもなさそうだし。たぶん、分かってるんだと思う。
奏があんななのは、別に人が嫌いなわけじゃない。普段は無口でも、いざという時は手を貸してくれる。俺が昔、他の友達とトラブったときも、側にいてくれるヤツ。裏表がない。アイツは遠巻きに見てるようで、ちゃんと周りを見ているんだ。本当は優しいヤツ。でも、みんな上部しか見てはいない。だからアイツも入っていかない。
俺、アイツのこと好きなんだよね、なんだかんだ言っても。だから本当のアイツにみんなも気づいてほしいけど、それはアイツは望まない。それでいいんだと思う。
凛ちゃんは気づいちゃったんだね。本当のアイツに。アイツ、俺が言うのもなんだけどいいヤツなんだよ。だから、君が正面からぶつかったらアイツもちゃんと向き合うはずだよ。
と、いろいろ考えてたら、俺らしくなく涙を零しそうになってきまして…。まぁ、バレたくもないので咳払いして、
「奏だよ?付き合ってる子なんていないよ。」
と一言。
その瞬間、愛らしく赤に頬を染めてはにかみながら
「そっか、そうなんだ…」
と、小さい声で凛ちゃんは呟き…。
まぁ、こうなったらふたりを全力で応援するよ。恋した子と愛した友達のためだからね。