クロフネの不思議②
クロフネは芦毛伝説の後継者である。
こう言ってもピンと来られる方は少ないかもしれない。少なくとも彼の現役当時にそんな声は聞こえなかった。あくまで私的な私的だが、「芦毛伝説」を満たす条件は以下かと思う。
1.マイナー血統の出自
2.自身が血統イメージを覆す規格化であること
3.(おそらく)父系が伸ばせないこと
4.現役当時にストーリーがあること
タマモクロス、オグリキャップ、メジロマックイーン、ビワハヤヒデ、セイウンスカイ、ゴールドシップ…、思いつく芦毛の名馬はほぼ上記の条件を満たしていると思う。クロフネ自身はどうかというと…
1…父フレンチデピュティは成功種牡馬だが、種牡馬として枝葉を広げたわけではなかった。母父Classic Go Goに関しては同馬のきょうだい以外でほとんど目にしたことがない。
2…父フレンチデピュティはクロフネの活躍もあり日本へやってきたが、クロフネを上回る産駒には結局恵まれなかった。
3…後継種牡馬としてフサイチリシャールなどがいるが、産駒成績は奮わず3世代目への継承は難しそう。
4…クロフネの現役当時は日本競馬変革の時期。外国産馬に条件付きでクラシック、天皇賞への出走が認められた時期だった。そして彼の能力は馬名の由来通り「黒船襲来」と恐れられた。
クロフネの現役時代は3つに分けられる。前述のように「黒船襲来」と言われ最終的にアグネスタキオンに撃破された2歳時。捲土重来毎日杯からスタートし、いわゆる「マツクニローテ」でダービー制覇を目指したが夢叶わなかった3歳春。秋の天皇賞制覇を目指したが除外、切り替えざるを得なかったダート2戦で底知れぬ怪物性を示した3歳秋。振り返っても決して順風満帆な現役時代ではなかったし、幾多の壁を乗り越えたあたり「芦毛伝説」らしさを匂わせる。そして4歳にさらなる飛躍を期待させながら故障。3歳限りで現役を退いた。
もし4歳も現役を続けていたらどうだったのだろうか。目標とされたドバイWCを圧勝していた可能性もある。一方で2から3歳時を思えば新たな壁にぶち当たっていた可能性もある。いま思っても続きをみたかったと思う。
前述のとおり後継種牡馬には恵まれなかった。だが、後継者に恵まれなかったわけではない。母父としてクロノジェネシスを輩出。彼女もまた父バゴのイメージを覆す「芦毛伝説」の継承者と思うが、毛色からしてクロフネの血を色濃く受け継いだように思う。今秋の凱旋門賞を彼女が制することがあれば、クロフネの物語も大円団を迎える。