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アイドンノー展プライマルを終えて




9/18-9/24まで開催されたアイドンノー展プライマルに参加させていただきました。


今回のテーマは【プライマル=原点】。


私のタイトルは「Epicurean philosophy」。以下文字と共に展示した写真を見ていただけたら幸いです。




東京で濃霧注意報が出ていた12月のある日、一人カメラを持って出かけた。

紅葉の名所である檜原村は東京本州では唯一の村だ。紅葉の見頃である11月を終えると12月1日からは終点の手前、数馬というバス停までしか行かない。

数馬から人のいないひたすら登りの道を歩き上流へと登っていく。

23区では無いが東京にもこんな場所がある。

スポットとして名前も付いていない渓谷の落葉に心奪われ、生と死、循環を考えた。冬の水の冷たさを感じ人のいない自然の音を聴く。

ほぼ山梨に近い場所にある都民の森まで登ったところで濃霧に呑まれた。

想定していなかった幸運にシャッターを切る。

紅葉まだ残ってたら良いなくらいで出かけた一日のつもりが偶然にも心を奪われた瞬間に出会し、写真を撮りながら「快」を感じていた。






冬のある日、目覚めると息が出来なかった。
肺に空いた穴から漏れた空気が体内に溜まり肺を押し潰していた。

通院する日々もカメラを持ち続けた。

水たまりに張った氷の気泡やエサを求め水面から口を出す鯉に自分を重ねた。

どこにも行けない。何も出来ない時でもカメラを持っていれば写真が撮れる。

ただそれだけのことでも弱った私には充分な「快」となった。





私はコロナ禍で写真を始めた。
よくわからん疫病に大切なものを沢山傷つけられた。本業以外にも何か力を付けたいと始めた写真。最初は人を見る為にスナップを撮った。街から人は減ったがそこにいる人達を追った。

この頃は写真を撮ることで「快」なんて感じていなかった。

スナップを撮り終えて隔離された喫煙所で一服している時に目の前に宗教の街宣車がいた。隔離された壁に映る夕陽はどこか嘘くさく美しかった。思わずシャッターを切った。





私の本業は美容師だ。人を撮るという行為としてはヘアカタログ撮影で経験があった。しかしportraitは自分の中で明確な差別化をしている。

私はヘアカタログ撮影時には髪に意識を向かせる為にモデルさんの個をなるべく薄め、完全にセットアップして撮影する。

一方portrait撮影時は基本的にほぼアドリブで自由に動いてもらい私も自由に動いて撮ることが多い。

お互いのアドリブの中で産まれる良いと思った瞬間を撮影することに「快」を感じ、その瞬間の記憶が本業のヘアカタログのセットアップ時のインスピレーションにもなっている。



今回はあずりなさんのお写真を使わせていただいた。あずりなさん土日の受付もありがとうございました!





哲学者エピクロスは現実の煩わしさから解放された状態を「快」として、人生をその追求のみに費やすことを主張した。

ある時から同じ壁を撮り続けている。自分の写真の存在意義を他者に委ねない。ただそれだけのことがすごく難しく感じ始めた頃からだ。様々なシーンでの撮影の中でも根底では現実の煩わしさを感じることなく、私が自らの機微に触れ「見て」「撮る」という行為自体に「快」を感じ続けていたい。私の写真の全ての根幹にいる純粋な「快」の概念は壁と向き合いひたすらに自問自答し続けることで築かれています。



ご来場いただいた皆様、拡散協力いただいた皆様、コンシールスタッフさん、そして我らNikon王国の国王であられるスペシャルゲストふぁらお様、 超有難うございました!

出展者のみんなご一緒できて光栄でした!そして主催のケンタソーヤングさんまだまだ未熟な私をこの展示に誘ってくれてありがとう。オレもっと頑張ります。




あとがき

今回の展示で有難いことにお褒めの言葉や有難い厳しいご指摘もいただいた。これからも真摯に向き合って写真表現をしていきたい。「Epicurean philosophy」は「快楽主義」と訳されます。エピクロスの提唱した純粋な「快」の追求の概念は時を経て「快楽」を求める俗的な言葉に変わりました。私の「快」の追求の概念も時を経て俗的になっていくのかその目で判断してほしい。

展示期間中も同じ壁を撮り続けた。蝶の蛹が壁にいた。雨に耐え、羽化の日を待つ姿に自分を重ねた。



そしていよいよ9/25 、やーっとカタチになった写真集、「かげろう」が発売になります。販売はAmazonで☟

今回はプリントの質にこだわって手に取りにくい価格になるよりも多くの人にKAMANOIはこんな写真との向き合い方をしているよと知っていただきたくオンデマンドでの販売にしました。完全受注販売用として展示用のプリント紙で「かげろう」を作る予定です。そちらもいつかどこかでお見せできたら良いな。大衆受けする内容では無いが手にとっていただけたら幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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