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かってに調査隊🧭 第一弾「小玉川熊まつりでマタギにインタビュー」
2023年5月4日は
ゴールデンウィークが始まって2日目。
みどりの日に
小国町で「小玉川熊まつり」が開催された。
この「小玉川熊まつり」も、
コロナ禍は自粛を余儀なくされた。
よって、3年ぶりの開催である。
開催場所は飯豊温泉梅花皮荘という宿のそば。
「イイデ」温泉の「カイラギソウ」
地元の人でなければ読めないような名前を私が知っているのは、宿が実家の村上市から車で1時間ほどのところにあり、よく母がこの温泉に連れて行ってくれていたからだ。
いつもはお風呂が貸切の日があるくらい利用者は少ないように見える。宿の目の前にある8台ほどの駐車スペースで事足りる。そばにある広い駐車場は雪除けのためにあるのかと思っていた。
しかし、私の予想は違った。
10時の開会に合わせて向かうと、すでに駐車場は埋まっていた。入りきらない車は路駐するよう誘導されていた。私も車を止めて会場へと歩く。
人がぞろぞろと歩く姿が見える。
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絶景の先で開かれていた「小玉川熊まつり」
マタギによる熊狩り模擬や山からの恵みを感謝する神事はとても興味深かった。
かってにインタビューし、調査した内容をここにまとめる。
< 小玉川熊まつり 概要 >
(開催内容)
1. 熊狩り模擬
2. 神事
3. 抽選会
※熊汁は数量限定のため、事前に整理券を買う必要がある。10時20分に行ったところ、すでに整理券は売り切れていた。近くに「熊手ラーメン」という熊の手がのっているらしいラーメンを出す店はあるものの、ジビエ料理は珍しく人気のようだ。
※参加料500円を支払うと抽選会に参加できる番号札と熊まつりの手ぬぐいがもらえる。みなさん手ぬぐいの使い方が上手で、頭に被って日焼けにしている女性がよく見られた。
1.熊狩り模擬
私が1番見たかったのが、この熊狩り。川向かいの山を使って、熊狩りの様子を再現してくれる。
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今回の熊まつりで初めて知ったのは、熊狩りは集団で行う狩りだということだ。鉄砲を使って熊を仕留める人は限られる。鉄砲衆以外にもそれぞれに名前と役割があり、コミュニュケーションを細かく取りながら、狩りを行っているようだった。
ちなみに、熊狩りをする人たちをここでは「マタギ」と呼んでいる。梅花皮荘の付近には「マタギの館」という、熊狩りについて知ることができる資料館のような食事処がある。他の地域でも使われている言葉がどうかは、分からない。
(マタギの名前と役割)
1.向立
全体の指揮者。鉄砲に相対面の突き出した高台や峰に位置した場所で全体を見渡し、やまことばや動作で熊の動静を知らせる。
新入りはこの向立の側について狩りの方法を学ぶそうだ。
2.勢子
やぶ原を踏み分けながら大声をあげて熊を鉄砲の方へと追いやる役。模擬では槍を持っていた。山ごとに追いやる場所が決まっているらしい。立ち向かってくる熊との接近戦になることも予想されるため、高い技術と知見が必要なポジションだと考えられる。
「ホーリャー」と大声を上げて熊を追いやる。何を言ってるのかは分からなかったが、離れた見学場所にも聞こえるぐらいの大きな声だった。
3.鉄砲
追われてくる熊を撃つ役。一鉄砲、二鉄砲、三鉄砲と別れていて、1番技術の優れたマタギが一鉄砲となる。熊が逃げてくる可能性の最も高いところに一鉄砲が位置する。その左右にニ鉄砲と三鉄砲が配置される。
一鉄砲が熊を撃つ時、熊とはおよそ10メートルほどの距離しかない。熊が向かってくるのを待っていないといけないから怖いし、1発で熊の胸を仕留めるのはすごく難しいとマタギが教えてくれた。
4.踏切
鉄砲の側に補助として付き、熊が狩り場の外へ逃走した場合その行方を見極める役。
鉄砲をしていた高齢のマタギが、最近新しく入った女性のマタギと2人で行動していると言っていた。もしかすると、その2人が鉄砲と踏切の役割を担って動いているってことだったのかもしれない。
5.受
熊を狩り場の外へ逃走させぬよう、峰の下に位置する。模擬では山を降りようとする熊を槍で威嚇し、上へと登らせていた。
熊狩り模擬で発砲の音がしたのはたしか、2回。
きっと最初に一鉄砲が撃ち、仕留められなかったからサイドのニ鉄砲、三鉄砲が2発目を撃ったという想定だったのだろう。
仕留めた熊の使い方は、焼くか煮るかして食べたり、毛皮を衣類にして使ぬたりするぐらいしか知らなかった。マタギによると、その他にも胃袋の中身が薬として重宝されるらしく、胃を破ってはいけないから撃つ場所が限られていて難しいと言っていた。
とても繊細な技術が求められるのだと思った。
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2.神事
私の予想に反して面白かったのが、熊が獲れたことや山からの恵みを飯豊の山の神に感謝する神事だった。
法印様のお祓いと法螺貝で始まる。最後の「お湯立て」はかなりの盛り上がりを見せていた。
(神事の流れ)
1.修祓の儀 2.降神の儀 3.山の神迎え
4.オコゼ奉納 5.勝ちどき 6.祝詞奉納
7.玉串奉奠 8.お湯立て
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神事前、薪がくべられている様子。
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ちなみに上の写真は神事の冒頭に法印様が法螺貝を吹いているところ。法印様は30年ほど続けられている大ベテランらしく、法螺貝も3回伸びやかな音をあげて吹いていた。
手前の「わかてしょ」たちは神事の前から薪のそばで待機をし、火の管理をしていた。「だれがこんなに火を焚いたんだ」とか「焚きすぎて前に酷い目にあった」などと口にしていた。
どのように選ばれたのか尋ねると、「選ばれたってゆうか、"おめらいけ"の一言だな」とのこと。
マタギっぽさを感じた瞬間だった。
このわかてしょたち、先ほどの熊狩り模擬でも活躍していたらしく、先輩マタギに熊狩りの点数を聞いていた。
『3点だな。』『100点満点中???』『んだ』
有無を言わず指図されてここにいると私に答えた割には先輩マタギとの交流を楽しんでいる。
マタギが好きでここにいる。
そんなふうに見えた。
神事について話したいことはたくさんある。
司会が儀式の名を読み上げる際、解説してくれるのがまた面白かった。
特に興味深かったのは、「オコゼ奉納」。
これは山の神様へにオコゼを奉納するという儀式。オコゼを奉納するのにはちゃんと理由があり、山の神様はとても嫉妬深い女性で、自分より綺麗な人を見るととても機嫌が悪くなるという言い伝えによるものだ。グロテスクな顔をした魚のオコゼを奉納することで満足してもらって豊猟を願おうという考えらしい。
色白で、美人の多い東北圏に由縁する言い伝えなのかなぁとか色々想像してしまう。
そして、待ちに待った「お湯立て」。
始めは煙しか立っていなかった釜は、儀式の時間になると湯気が立ち上っていた。
ぐつぐつ煮えたぎったお湯も、法印が笹の葉でかきまわすと法力で清水に戻るらしい。それをマタギにふりかけ無病息災と猟の安全を願う儀式が「お湯立て」だ。
儀式が始まると、他のマタギたちも敷居内に入ってきた。私はその敷居のそばで見学していた。法印が笹の葉を振り回せば、確実に葉露をもらう。縁起はいいけど、火傷したくない。怖くなった私は、近くにいたマタギの長老に、ここにいても大丈夫かと聞いてみた。
「そんな熱くないよ」と優しく答えてくれた長老の言葉を信じて私はそのままいることにした。
すると、初めの一振りが思いっきり上から降ってきた。ポタポタと頭皮に当たった感覚は今も覚えている。
その露が熱湯だったか、清水になっていたか。
ご想像にお任せします。
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3.抽選会
祭りの最後は参加費を払った人にプレゼントを配る抽選会。受付で「この熊皮が当たるかもしれません」と言われたので、私も抽選券をもらうことにした。
私の番号は緑色の64番。
役員さんが景品ごとに抽選券を引き、該当するともらうことができる。
炎天下の中、自分の番号が呼ばれるのを今か今かと待ち侘びていた。けれども、緑の64番が呼ばれることはなかった。
欲深い人間に神様は微笑んでくれないようだ。
最後に熊皮を当てた、東京都から来た女性が羨ましい。どうやって持ち帰ったのか、いまその熊皮はどうしているのか。とても気になる。
そんなこんなで、
熊まつりはあっという間に終わった。
最後に梅花皮荘の美味しい天ぷらざる蕎麦を食べ、天然由来のあったかい温泉に浸かり、帰路へと着いた。
期待以上に充実していた小玉川熊まつり。
今回知り得た知識を自分のものだけにしておくのはもったいないと思い、記事にしてみました。
突然の質問にも関わらず、優しく丁寧に答えてくださったマタギの方々ありがとうございます。
本来なら写真を使うことを直接許可申請するべきところなのでしょうが、「かってに調査隊なので」という言い訳にかこつけて勝手に使わせていただきます。
そして、また自分の興味あることを調べて、現地を訪れて、インタビューして、学んだことを記事にまとめたい!という意欲があるので今回の記事は「第一弾」としています。第二弾、第三弾と続けたい。なんならYouTubeで動画配信と合わせてやりたい、と目論んでいます。
どうぞ、お楽しみに。