豊かな「気付き」のある教職員研修のデザイン
教育長の高橋洋平です。
『内外教育』で掲載されました「第6回 鎌倉教育長日記」を紹介します。(内外教育には許可をいただいています。)
夏休みは子どもたちにとって待ち遠しい自由な時間かもしれませんが、教職員にとっては、まとまった時間を取って学ぶことができる貴重な時期です。本市教育委員会の研修担当も、7、8月はいつにも増して忙しくしていました。
今年度は教職員の学びの場にもいろいろなチャレンジがありました。
例えば、学校管理職研修は、午後の時間をたっぷり使って、各学校の実践や目指したい姿について横断的に対話する時間に。研究発表会は代表が発表するだけではなく、パネルディスカッション形式にして。参加者同士でも対話をしながら、不祥事防止研修会ではなく、職場環境づくり研修会に。教育委員会内部でも、組織のビジョンや自己変容について対話するなど……。
振り返ってみると、これらの教職員研修等の特徴は三つほどあったと思います。
第一に「内部性」です。権威ある外部講師にお願いし、研修内容はお任せということではなく、内部の職員が積極的にファシリテーションし、職員間の対話の時間をたくさん取り、互いに価値付けし、問い直したこと。
第二に、「連続性」です。研修単体でテーマを考えるのではなく、学校におけるこれまでの実践を振り返り、これからの実践につながるテーマとし、研修での気付きと実践が結び付くような連続した内容としたこと。
第三に、「内省性」です。教育に関する知識・技術を新たに習得することを必ずしも目標とするのではなく、現在の実践を各自が問い直し、気付きを得ることを目指したこと。
参加者からの感想では、「授業を変えてみたいと思いました」とか、「探究とは何なのか自分の言葉にしてみて、初めて腑に落ちました」など、多様な「気付き」があった様子でした。
研修はスキルから気付きへ
そもそも、教職員研修は何を目指す営みでしょうか。
初任者にとっては板書の取り方や学級経営の方法などの習得、あるいはデジタルなど新たなスキルの獲得を目的にする研修もあります。
一方で、授業に唯一の正解というものが無く、探究的な学びが求められる中にあっては、NITS(独立行政法人教職員支援機構)が提案する通り、研修を通じてそれぞれが豊かな「気付き」を得るという目的が重要になっていくと思われます。
教職員は、子どもと向き合い、同僚から助言を受け、日常の実践を重ねる中で、経験的に学び、技術や暗黙知を獲得していきます。研修のタイミングで、一度立ち止まり、普段の実践を振り返り、自然と獲得してきた理論への「気付き」を得ます。
さらには、自らに培われている教育観に触れ、問い直すことで、一層磨かれた実践を展開していくことができるようになるのだと思われます。
「気付き」による教職員の力量形成の過程が、より豊かなものになるよう支援することを、教職員研修の目的と考えたとき、その方法に「内部性・連続性・内省性」が生まれたのではないかなとみています。
気付きが得られるには、研修のデザインや発問、対話、ファシリテーションの工夫も必要です。学習する教職員の視点に立ち、参加者にどのような気付きや変化があるかをデザインする。そう考えると、教育委員会や学校内の研修担当者の仕事は、実にクリエーティブだなあと思われます。
(2024年9月27日『内外教育』掲載文)