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金融商品の運用益でワクワクする教育活動を ─スクールコラボファンド+(プラス)始めます─
教育長の高橋洋平です。
『内外教育』で掲載されました「第9回 鎌倉教育長日記」を紹介します。(内外教育には許可をいただいています。)
未来を生きる子どもたちには、未来につながる学びを届けたいと思います。例えば、生成AI(人工知能)の急激な進化や米国の大統領選を巡る議論など子どもたちの未来に大きく影響し得る事柄がある中で、こうした社会の変容そのものを使って探究的な学びを創造したい。しかしながら、先端テクノロジーや国際情勢などについて、学校や教師の力だけでゼロから学びをつくるのは難しい場合もあります。
文部科学省の言う「社会に開かれた教育課程」を本当のものにするには、教職員のマインドセット、カリキュラムマネジメント、地域との協働などが必要ですが、課題の中にお金も含まれます。平日に子どもたちに本気で本物の大人に会ってもらおうと思えば、謝金や交通費なども当然必要になります。
そこで、これまで鎌倉市では「鎌倉スクールコラボファンド」を実施してきています。これは教育委員会が個人や企業から寄付を募って、教育委員会に基金をつくり、学校と企業・大学がコラボレーション(連携)して、子どもも教師もワクワクするような教育活動をつくっていくことができる仕組みです。ふるさと納税の制度を活用し、これまでに約2600万円を調達するとともに、学校が取り組みたい学びに応じて基金から年度途中でも柔軟に執行することを可能としてきました。
これまでの実績としては、①テック系のベンチャー企業とコラボした、水中ドローンやIoT(モノのインターネット)を使った海の授業②映画監督と共につくる5カットで季節を伝える映像の授業③慶應義塾大学とコラボしたごみ減量や国連の持続可能な開発目標(SDGs)の学び――など、ワクワクする学びをつくりだしてきました。
これまでクラウドファンディングによる資金の確保を行ってきましたが、寄付も徐々に集まりにくくなってくるため、持続可能な取り組みにしていくことが課題でした。このため、新たな取り組みとして「鎌倉スクールコラボファンド+(プラス)」を立ち上げました。
この仕組みは、三井住友信託銀行との連携により、「金融商品の運用益」を活用した新しい寄付方法を提供するものです。個人や企業から三井住友信託銀行に金銭を預け入れいただき、その金銭の運用益(課税後)のすべてが「鎌倉スクールコラボファンド活用基金」に寄付される仕組みです。
ポイントは三つあります。第一に、預入期間経過後に元本が償還されます。運用益のみが寄付され、元本は保証された仕組みです。第二に、個人の場合、運用益はふるさと納税ができます。この場合、所得税・住民税等が控除されます。第三に、すぐ活用しない資産で継続的に無理なく、子どもたちの学びや教育に貢献できます。
一度に多額の寄付はできないけれど、今すぐ使わない資金の利息分なら寄付できるという方に、この仕組みをご活用いただきたいです(もちろん通常の寄付も通年受け入れていますし、今もクラファンを実施中です)。
米国の大学などでは基金をつくり、その運用益を教育研究に充てていくのは一般的です。足元にも及びませんが、日本の初等中等教育でもそれに類することができればと思い、〝ファーストペンギン〟としてチャレンジしています。
スクールコラボファンドは他地域へも広がっていますが、運用益モデルの「プラス」もそうなることを期待しています。ご協力ご支援をよろしくお願いします。詳しくは「鎌倉市教育委員会note」をご覧ください。
(2024年12月24日『内外教育』掲載文)
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