みらいのモノづくりが目の前に ~手広中学校で「STEAM Lab」を開設しました
教育長の岩岡です。
皆さんは「デジタルファブリケーション」という言葉を聞いたことがありますか。
図面を描いて切削機械や鋳型を使って部品を作り、組み立てるといった従来のものづくりとは異なり、3Dモデリングソフト(CAD)を使って立体造形を作り、プログラムに基づいて3Dプリンタやレーザーカッターで製作するような「デジタル技術を使ったものづくり」を指します。
人間の手では製作が難しい複雑な造形を簡単に作ることができるほか、従来と比べて生産時の固定費用が低いことなどから、変化が激しい現代のものづくりの主役として注目されています。
マッキンゼー社の2013年のレポートによると、2025年の世界の3Dプリンタの市場規模は、最低でも20兆円とされています。日本でも、3Dプリンタで出力した住宅が今夏にも発売されることになっているぐらいです。
このような現状の中で「子どもの視点に立った教育」を考えたとき、子どもたちが将来飛び込んでいく社会のものづくりに対応した教育を届けてあげたい。
教育委員会では「デジタルファブリケーション」の技術を利用し、教科横断的な多様な表現の手段を提供してあげたいという思いから、「STEAM Lab実証事業」(インテル社がパートナー企業のリコージャパン社などと協働・実施)を活用して、手広中学校にハイスペックパソコン、大型モニターや3Dプリンタなどの周辺機器、3Dモデリング用ソフトウエアなどを導入しました(実証期間:令和6年3月31日まで)。
新しい機器の研修会に、私も参加しました。自分がデザインしたものがその場でプリントされ、ワクワクしている先生たち、「これ、もしかして3Dプリンタ?」と目をキラキラさせながら駆け寄り、「何を作ろうか」と先生と相談する生徒の姿を見て、胸が躍る思いがしました。
手広中学校では、技術の授業だけでなく、美術や数学、特別支援学級などでの活用アイデアも生まれています。
3Dプリンタ自体は素晴らしいアウトプットツールですが、3Dプリンタの出力材料となる「フィラメント」はバージンプラスチック。今は限られた実証校だけでの活用ですが、将来多くの学校で使うようになった場合は必ず環境負荷の課題が出てきます。子どもたちの教育のためとはいえ、子どもたちが暮らしていく未来に負債を残したくない。
そのため、今回のSTEAM Labの取組では、リコージャパンさんと協力して、3Dプリンタの「フィラメント」を、小学校で使わなくなったアサガオの植木鉢をアップサイクルして確保するというチャレンジも併せて行っています。(市内16の小学校の3~6年生に協力いただき、全部で171個集まりました。)
同校のパソコンルーム「STEAM Lab」が教科横断的な学びのSTEAM教育の拠点として、さまざまな実践の場となっていくことに期待したいと思います。
(広報かまくら 令和4年8月1日号 掲載文に加筆)