見出し画像

「共助」の資金で、子どもたちが学びのチャンスをつかみ取る

教育長の高橋洋平です。

『内外教育』で掲載されました「第7回 鎌倉教育長日記」を紹介します。(内外教育には許可をいただいています。)


本年7月に、経済産業省から「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会報告書」が出されています。社会からヒト・モノ・カネを公教育に結集させるのが目的の一つです。

本報告書の通り、教育に関する費用負担は、税財源による政府・自治体支出(公助)と各家庭が支出する受益者負担(自助)が中心です。子どもたち自身が多様で個別最適な学びをつかみ取っていくためには、平等性が重んじられる公助や、家庭の経済力に左右される自助だけではなく、企業や地域社会、卒業生等との連携や民間資金を活用した「共助」により、子どもたちや学校の主体性を積極的に支援することも重要です。

鎌倉市でのチャレンジを幾つかご紹介します。

鎌倉スクールコラボファンドの進化

これまでスクールコラボファンドとして、ふるさと納税を活用し、企業や大学等と学校が協働して未来創造型の学びをつくってきました。より持続的な資金確保と周知・広報のため、自動販売機の売り上げの一部を寄付するモデルをつくり、市内での寄付型自販機設置を促進しています。

また、信託銀行と連携し、個人・企業の余剰資産の運用益を寄付していただくモデルも検討中であり、間もなくリリースしていきます。(※11月25日より「鎌倉スクールコラボファンド+(プラス)」として実施中)

エンパワーメントプロジェクト開始

文部科学省の2021年度の調査によると、公立小中学生の保護者が支出した学習費のうち、学校外活動費(習い事等)がほぼ7割に迫るとともに、物価上昇もあり費用は増加傾向です。義務教育の授業料等は無償ですが、自助としての放課後で体験格差・教育格差が生じている可能性があります。

このたび、三井住友フィナンシャルグループの寄付を受けて、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが、鎌倉市と協働し、経済的困難を抱える子どもたちに、地域での放課後・休日の学びの費用に充てられる〝電子クーポン〟を提供することになりました。

今回の取り組みは、一つの組織で課題解決しようとするのではなく、それぞれの組織の強みを生かしたコレクティブ・インパクト・アプローチ(協働)で、共助による課題解決モデルであると考えています。経済的困難を抱えている子どもたちを補助するという発想にとどまらず、子どもたちが「やりたい」「学びたい」思いがあっても経済的な理由でできないことを、エンパワーメント(力を授ける、後押しする)という考え方に立っています。

遺贈寄付という選択肢

高齢化の進展により、80〜90代の方から60〜70代の方へ遺産が引き継がれており、35年には日本の金融資産の約7割を60代以上が保有するといわれています。高齢者で相続財産が循環することで、50代以下の世代に回る資産は減少。遺産を残したい身内がいない方も増加しており、財産の次世代への承継の多様化が社会的に必要です。

鎌倉市では、一般社団法人日本承継寄付協会と連携協定を結び、遺贈寄付の周知・広報等を行い、次世代へとつながる共助モデルを促進していきます。

人は皆、いつ死に直面するか分かりません。その時が来れば、親族等に相続されるのはもちろんのこと、地域や日本の子どもたち全体に対しても相続するという発想が、遺贈寄付だと思われます。 遺贈寄付というと、お金持ちがやるものと思われがちですが、少額からでも、基金化している鎌倉スクールコラボファンドに遺贈寄付していただくこともできます。

(2024年10月25日『内外教育』掲載文)

内外教育に許可をいただきnoteに掲載しています。