勃つか死ぬかの瀬戸際
まさかの本日2本目の日記である。タイトルでお察しかと思うが、これから書くのはド下ネタである。テーマは『サムライ』だ。
先程仕事を終えたのだが、男友達からLINEが入っていた。
「安全なバイアグラ、知らん?」
知らねぇよ。医者に聞け。
なんなんだ私の友人たちは。男も女もどいつもこいつもエロ事ばっか相談してきやがって。もっと恋の話とか仕事の話とか子どもの話とかしろよ。頭FANZAか。
とまあ、怒り心頭、怒髪天をつく私だったが、インポ野郎とはいえ我が友人、それも小学校からの親友である。訳を聞いてやることにした。
どうやらこの友人、先々月から急にチ〇コが勃たなくなったそうだ。
ダイレクトにチ〇コとか書いちゃったよ。相当お疲れである。もう頭が回らない。やだもう。
まあ勃たないといっても、もうアラフォーだし既婚者でもあるし子どももいるし、今更別にいっか、とはいかなかった。
嫁が大層ご立腹、というか悲しんでしまったそうだ。もう私に魅力を感じないのね愛はないのねと。
由々しき問題である。女は傷つき男は面倒くさくなり、すわセックスレス、冷え冷え仮面夫婦爆誕の危機か。
世界に冠たるセックス貧弱国家日本の平均的夫なら、そうなっていただろう。
しかしそこは我が親友。そこらの男とは訳が違う。
嫁が寝静まったと同時にバイアグラを個人輸入決済。流石、仕事の早い男だ。そうでなければ山口県が誇るグローバル企業、宇部興産で出世は出来ない。
「100%俺が悪い。お前は今でもエロいし愛してる」
決めゼリフを吐き、薬もキメた友人のソレは見事バキバキ。この漢っぷりに嫁も濡れ濡れである。無事セックスを果たし一件落着かと思いきや、致したあとで友人はだいぶ具合が悪くなったそうだ。
それもそのはず、バイアグラは元々狭心症かなんかの薬で、勃起はむしろ副作用なのだ。そんな薬を個人輸入で買ってはならんのである。そんなことも分からないで、よく宇部興産の管理職が務まるものだ。
勃起したまま死にかけた我が友人。そのまま死んだら相当面白かったのだが、流石に勃起したおっさんを通すほど三途の川のモラルは低くなかったようで、今もビンビン生きている。
生きてはいるのだが、あの薬を使い続ければいつか死ぬだろう、と思い、私に安全なバイアグラについて質問をしてきた訳だ。なぜ病院に行き医者に聞かないのか不思議でならない。
しかし大した男である。
そこまでしたのだから、もう勃たなくていいだろう、とはならない。
バイアグラは危険だから、もう飲まないでおこう、ともならない。
あくまで勃起させること前提。安全な薬を探すのも死を恐れて日和ったからじゃない。勃起出来ても、死んだら嫁を抱いてやれないからだ。
「勃起はする。生きて嫁も抱く。両方しなくちゃならない所が『夫』の辛いところだな」
ジョジョの奇妙な冒険第4部、ブチャラティの台詞を思い出した。
価値観のアップデート、多様性の尊重が叫ばれる昨今。
私自身オカマであるし、ゲイやレズビアンの友人もいる。同性婚も夫婦別姓も賛成の立場なのだが、かといっていわゆる古い価値観がダメなものだとは全く思わない。
かつてこの国にはサムライが居た。サムライにとって刀は命と同等か、またはそれ以上に重いものだった。刀を失うことは最大の恥であり、恥は即ち死を意味したのである。
我が親友は正しく、現代のサムライである。ラストサムライと言っても過言ではないかもしれない。
まず『勃起』と『命』を天秤に掛け、迷わず『勃起』を選ぶ事が出来る漢が現代日本に何人いるだろうか。
更に、命懸けで勃起したはいいがマジで死にかけて、それでも尚勃起を求めギリギリ死なないラインを探る胆力。
そして『勃起する』も『死んではならない』も、小さな男のプライドとかそんなんじゃなく100%嫁の為。「嫁を泣かせてなるものか」という漢の意地、サムライの心意気から来るものである。
親友、お前かっこいいぞ。お前ほどかっこいい男は両手で数えられるほどしかいないかもしれない。
「まず医者に行こう」という発想に至らない脳みその持ち主なのが玉に瑕だが、そんなことはもうどうでもいい。そのまま突っ走れ。
そして死ぬ時は紅く美しく、「我が生涯に一遍の悔いなし!」と天にアソコを突き立てて死んでくれ。骨は拾ってやるよ。