『タティングレースとは何者なのか?』Episode-2
「とてもいけずで魅力的な存在」
⌘あくまでkamacosan.の主観で語るお話⌘
この白いちいさな葉っぱみたいな物体が「シャトル」
タティングレースを作る上で必要な道具である
構造としては至ってシンプル
ボビンのように糸をくるくると巻き付けるのみである
このシャトルを用いて小さな糸の結び目を作り連ね象っていくタティングレースは「編む」のではない
「結ぶ」技法なのだ
細いレース糸でしっかりと丁寧に結ばれたタティングレースは非常に軽くてそして丈夫である
しかし「結び目」が連なっているということは
間違えた場合「固く結んだ結び目を戻りたい位置まで一個一個解く」という地獄のような試練を乗り越えなくてはならない
クロッシェなどの「編み物」の場合なら編み針を外し
糸を引っ張りタラリラリーと小気味よく解くことができる
しかし結び目が連なるタティングレースは
さっき辿った固い結びの道のりを
シャトルを逆走させながら
一つ一つ逆再生していくのである
だいぶ狂気的だ
しかも「リング」という輪っか状にしてしまったものを解くとなると、これがまたなかなかの絶望作業なのである
糸の種類によってはその絶望の淵の深さは異なる
全くどこまで「いけず」な技法なのか?タティングレースというものは
しかし、しかしだ、この解くという作業もだんだん慣れてくると「よしこの地獄を楽しんでやろう」という変な領域に入っていく
誰かが言っていた「タッターズハイ」
※タティングレースを結う人のことを「タッター」と呼びます
タティングを楽しんでいる人たちはある意味変態だと思う(良い変態)
タッターには三種類の変態がいると個人的に思っている
それは
ドイリー変態と一筆書き変態、そして細糸変態である
「ドイリー変態」
ドイリーとは簡単にいうと敷物である
円形のものが多い
中心から結い始め、大きくなればなるほど外周のストロークは長くなる
シャトルに巻かれた糸だけでは到底足りなくなるので
途中途中シャトルに糸を巻き足しながら結っていく
タティングレースは細いレース糸で結っていくので
「ひと目」=「点」が非常に小さい
例えばペンで点を描く、その点をてんてんてんと描き連ね幾何学模様を描く感じである
なので大物となるとものすごい時間がかかるのである
だからこそ出来上がった時の達成感たらない
早く結い終わって完成形を見たい、でもずっと結っていたい
そういう矛盾を楽しんでいるような変態である
「一筆書き変態」
私はどちらかというとこの変態族の一員である
例えば幾何学模様的なデザインを思い浮かべ
タティングレースでそれを作ろうとする時
今このシャトルに巻いてある糸だけで
一筆書きのように結い上げたい
できればシャトル一個で行きたい
糸を足すこともなく一気に描きたい
どこからスタートし、ここはリバースするのかしないのか?再現性のある合理的ルートを考える
さらにビーズを入れるとなるとシャトルの中の糸にビーズが何個必要で、シャトルから出ている糸には何個必要なのか?
そういった計算も必要になる
はたして設計図通りにできるのか?
失敗した時には何がいけなかったのか検証し
こうしたら理想の流線型ができるのではないか?
などどいった
理屈と証明が大好きな研究者型変態である
「細糸変態」
タティングレースを最初に作ってみようと思う時
20番手や30番手ほどの糸で練習し始める方が多いだろう
「番手」とは糸の太さを表すもので、レース糸の場合数字が大きくなればなるほど細くなる
「#20」「#30」と表記されることもある
慣れてくると#40くらいで結いはじめるのだが
このくらいの細さになると繊細さが増してきて
とても美しいラインが表現できるようになる
そうなると、もっと細い糸に手を出し始める
#60 、#80 これくらいならまだ可愛い
#100超え出すと狂気性が増してくる
糸が細いので「点」ももの凄く小さい
なのでなかなか線が進まないし解くのも大変である
しかし細い糸で出来上がったタティングレースは
繊細通り越してもう妖艶なのである、芸術なのである
そんな魅力に取り憑かれた「細糸病」という病を発症している変態である
タティングレースというものは
中毒性があるいけずで魅惑的な技法なのである
さあ愛すべき変態たちよ!
今日も楽しくタティングしよう!