子どもの時間、大人の時間
養老先生の虫探索の動画を見ていた。
森林の中で網と虫かごを持って、子どもたちと虫を探していた。
いろいろな発見があったのでここに記しておこうと思う。
子どもの時間、大人の時間
子どもと大人の時間は違う。それは双方の中に流れている時間だ。
一人の少女が養老先生の方に歩いてきた。
虫かごを差し出して「このちょうちょみたいなの何ですか」と聞いた。
先生は掛けていた眼鏡を外し、虫かごを近くに寄せて覗き込んだ。
少女は先生を覗き、先生は虫かごを覗く。
先生は答えない。じっと虫かごを見ている。
しばらくして、「こっちはバッタだよ」と答えた。
少女が「このちょうちょみたいなの」と尋ねると、
「どこにちょうちょがいる?」と聞いた。
またしばらくすると
「ああ、これ蝶だね。シジミチョウ。」と答えた。
*
失礼を承知で言うのだが、
この瞬間にきっとこの少女の中で、「おじいさんの時間」というものが刻まれたと思う。
話す言葉や仕草やたたずまいには、その人の中に流れている時間が滲み出る。
少女の時間と先生の時間は全然違っていて、
そしてそれは直接関わり合うことではじめて知ることができる。
自分と違う時間が流れている人に会う。
それによって他者を知る。
二人の間に流れた、返答をじっと待つ時間が、一番大事なのだ。