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【映画感想】『THE BATMAN - ザ・バットマン -』(※ネタバレなし)

表の顔は大富豪、裏の顔は矛盾や苦悩を抱えつつ、大いに何かを拗らせながらも闇に紛れて悪をしばき倒す、闇属性ヒーロー・バットマン。
そんなバットマンシリーズの最新作である『THE BATMAN - ザ・バットマン -』を鑑賞してきました。
ちなみに、バットマンシリーズはリブートやパラレル展開的なモノが多いですが、今作も過去シリーズとは一切繋がりがなく、改めて設定や物語をリセットしてイチから仕切り直しています。

上映時間が約3時間ということで、その長尺っぷりに鑑賞前から「3時間もあるのか・・・」というプレッシャーを与えてきましたが、実際に鑑賞すると中弛みするようなシーンがなく、ものすごくテンポよく話が繋がっていきながら常に先が気になる展開になっており、3時間はあっという間でした。
一人の重過ぎる闇と狂気を抱える男が、”復讐”と”嘘”というテーマの下で葛藤し、自分の進むべき道を見出すまでを描いた良作です。

リドル(なぞなぞ)に執着し、犯行現場に謎解きを残していく正体不明の覆面知能犯・リドラー。
やがて明らかになる被害者達の共通点、そして「嘘を暴く」と主張するリドラーの正体と本当の目的。
彼の残した謎を解き明かしていくうちに、バットマンは自身の根幹に関わる”嘘”と向き合うことになる・・・
というのが本作のあらすじ。

あらすじからも分かる通り、犯行現場に残された謎を解き明かしながら犯人を追っていくという流れが、さながら推理ドラマのような雰囲気。
そしてロバート・パティンソンが演じるバットマン=ブルース・ウェインが、とにかく暗い。
常に表情が死んでいるし、陰のオーラが滲み出しまくり。
ヒーロー映画の主人公なのに。
今作のバットマンは、過去の事件がきっかけで人生のすべてを復讐に全振りしているような状態なので、ヒーローにあるまじき危うさと狂気を纏っています。

本作のメイン敵役であるリドラーは、自身の活動にSNSや会員制コミュニティを活用したり、その動機や真の目的も併せてとても”現代”が判定されています。
覆面を外した後から怪演にブーストが掛かって、さらにやべぇヤツ感がマシマシになるのも見どころ。
バットマンとは別の思惑で動くキャットウーマン、小悪党感を滲ませつつも印象的な見せ場があるペンギン、探偵役であるバットマンを上手いことサポートして相棒感を醸し出してくる今作屈指の苦労人の一人であるゴードン警部補など、バットマンの周囲を彩る登場人物達もなかなかに魅力的です。

総じて一般的にイメージする「ヒーロー映画」とは明らかに方向性が違う感じの本作ですが、狂気に蝕まれている一人の男が混沌とした世界、リドラーによって暴かれる”嘘”、そして”真実”と対峙することで最終的に”何か”を見出す、という流れはとても良かった。
復讐と闇を背負って生きてきた男がその果てに辿り着く本作の結末は、新しいバットマンの物語の始まりとして、とても期待が持てます。
良い映画でした!

余談ですが、本作の物語について、マット・リーヴス監督は『真実は複雑で厄介なもの』『すべてが白や黒じゃないということを理解しないといけない』という旨を語っていたそうですが、本作を鑑賞するとこれはなかなかに重い発言です。
今まさに現実世界でも、実に複雑で厄介な”真実”達が、世界中でぐちゃぐちゃに絡まりあって混沌を極めていますので・・・


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