癌の闘病生活。心の準備は難しい。
前回はこちら。
最後に姉と会って、少し日が経ってから。
脱水症状がよくならないので、再度入院することに。
しばらく入院が続いたのでお見舞いに行こうと思ってましたが、私や娘が風邪をひいていたり、姉も風邪をひいていたりでしばらく行けない日が続きました。「この週末には病院行こうか」と妻と話していたその週末の早朝、病院にいる身内から電話がありました。朝方の5時頃という時間帯の電話だったので、悪い予感がして飛び起きました。電話の内容はやはり悪い報告であり、姉の体調が急変したとのことで、すぐに病院に来るように、という内容でした。
「悔しい」「悲しい」「まだ違うよね?」などなど、いろいろな感情がこみ上げてきたのを覚えています。
気持ちを落ち着かせてから、先に私ひとりが病院へ。病院に到着し、一息ついてから病室へ。病室のベッドにいる姉は、まだ息はあるものの、すでに話すことはできない状態でした。
「ごめん」「なんで」とかいろいろ言葉にしてたと思いますが、何を発したかは覚えていません…。病室では、一生懸命に呼吸を続けている姉の姿を、じっと見守ることしかできませんでした。
告知の時に「半年もたないかしれない」と言われていた状況で1年と数ヶ月経っていましたので、姉に対しては「めっちゃ頑張ったね」と穏やかな気持ちを感じたり、自分の不甲斐なさや病気に対する怒りや悲しみなど、いろんな感情がループしていました。
自分の頭のなかや気持ちの整理がついていないなか、とうとうその時がきてしまいました。
悲しかったし、今振り返ってもやっぱり悲しい。
数ヶ月前からその日が近づいてきているのを感じながらも、いざそうなると準備はできていませんでした。姉のことはもちろん、遺された子供たちや両親のことなど、頭のなかでいろいろな事が整理つかないままループしているなか、医師の先生から姉の病院での様子を聞き、また涙が。姉を誇らしく思う感情や悲しみの感情が入り乱れていました。
気持ちの整理がついていませんでしたが、病院での手続きを済ませ、一旦帰宅することに。
帰りの車の中で、
母が私に「やれる事はやったよね…?」私「うん、みんなそれぞれができる事をやったよ。」
たったこれだけの会話でしたが、このやり取りは今でも覚えています。遺族が前を向いてこの先暮らしていくうえで、大事な自己肯定だったと思います。当時は「やれる事はやった」と思っていましたが、後々振り返ると遺される私達が前向きに暮らしていけるよう「姉がつきあってくれていた」かもしれないな、と思うようにもなりました。
帰宅した後は、通夜などの準備で葬儀屋へ。
通夜・告別式などが一通り終わるまで身内が入れ替わりで宿泊するため、その晩は両親が宿泊することに。私は自分の家に一旦帰宅しましたが、疲れのためかボーッとしたまま過ごしていましたが、翌朝まであまり寝付けず、朝から葬儀屋に。
姉の姿をみて、現実であることを思い出し、また悲しくなりました。この時に決めたこと。
「癌」という病に対し、課題解決につながるものを創っていく。
数ヶ月前からうっすら考えていて、姉含め身内には話していましたが、自分自身の決意を固めた瞬間でした。
その後は告別式など経て、私もしばらくして仕事に復帰しました。復帰後の事は省略しますが、復帰後しばらくして、自分が進みたい道を会社代表に伝え、起業の準備に取り掛かりました。会社代表や会社メンバーの全面的なサポートを受け、2016年に株式会社ひびたすを設立し、創業開始となります。創業後最初のアクションとして「がんと食事・栄養」に関する事業のアドバイザーをお願いするため、東京にいる川口先生のもとへ向かい、私のやりたいことを伝え、晴れてアドバイザーとして参画いただけることなりました。その後は、コツコツとカマエイド事業への投資を続けてきており、今に至ります。
姉の罹患がわかってから、家族として感じた気持ちについて書いてきました。私の場合は「無力感」という気持ちから患者家族がスタートしましたが、その後の闘病生活でいろいろ一緒に考えたりやってみた事によって、少しづつですが前向きに暮らせるようになったと振り返っています。「何か一緒にできた」「自分にもできた」という成功体験が前向きに暮らせるきっかとなり、患者さん家族にとってはその時・その先にも大事な経験であると考えています。そのような成功体験のきっかけを提供できればと考え、カマエイド事業に挑戦しています。
この記事を読んで「カマエイドってそういう見方もあるんだな」と感じてもらえると嬉しいです。また、患者家族のひとつの考えとして、患者さん・医療関係者の方に知ってもらえると嬉しいです。
さて、カマエイドはというと、スタッフや支援者のおかげで、食品メーカー・製薬会社・NPOなど、各種団体より声が掛かるようになってきました。業界のなかでは多少認知度も高まってきているのを感じますが、癌治療における食事・栄養に関する認知度はまだまだ低いように思います。(治療や経済面が優先)
今後については、医療者でない私からの視点として、癌治療と食事・栄養に関する情報の収集方法など、お伝えしていければと思います。
また書きます。