無言の10分

腕に鳥を羽ばたかせ

花を咲かせている職人さん

一定のリズムを刻む音が心地良い

あぁ　この人は合う人だと

直感がそう告げる

一人目の職人さん以降

なかなか合う人に出会えなかったから

久しぶりの感覚に心が躍る

カチ　カチ　カチ

わたしの感覚を

言葉と写真で伝えて

わたしの感性を共有する

こういうものが好き

これはあまり好きではない

これは全体的なイメージは近いけど

この部分がもっとこうなっている方が好き

カチ　カチ　カチ

イメージに近い写真を見せながら

細かい部分を言葉で補足して

感覚を共有していく

カチ　カチ　カチ

鳥を羽ばたかせ

花を咲かせている職人さんは

自分の感性を抽象的な言葉で話す

感覚で処理して　感覚で理解をする

職人さんの話す言葉を聞いて

後輩への教え方を聞いて

わたしが伝えた内容の汲み取り方と

目標に対する取り組み方と

確認するタイミングと確認方法を観察する

インプットとアウトプット方式を読み解く

最適なコミュニケーション手法を割り出す

カチ　カチ　カチッ

うん　寸分の狂いもない

最高の仕上がりだ

磨き上げられた技術に敬意を払い

感謝の気持ちを伝えて

足早に階段を下りる

そうして

心地良い無言の10分が生まれた

それ以来　

断続的に無言の10分が続いている