見えない白猫
これは、わたしの先代猫のかいちゃんです。
今は、虹の橋でわたしを待っていてくれています。
わたしはこの子と、高円寺のボロアパートに住んでいたんですけど
近所は白猫がたくさんいたんです。
かいちゃんは、
ある日わたしのアパートの前で
大きな口を開けてにゃーんと鳴いて、
それからうちの子になりました。
で。
このボロアパートには、ほかにも白猫が住んでいたんです。
でも、その子は見えない。
わたしが座ってごはんとか食べていると、
目の端に白い猫が見えて、
奥の部屋に入っていく。
あれ?
かいちゃん、そっちに行くの?
一瞬、そう思うのですが、
かいちゃんはわたしの膝に乗っていて、
奥の部屋のふすまは閉まったまま…
そんな風に、その子はいつも
お部屋の中を自由に歩き回って、
たんすの上に登ったり、
洗濯物を干していると
足元をすり抜けていったり、
つまり、わたしたちはそこで、仲良く暮らしていた訳です。
ところが、とうとうそのボロアパートを取り壊す時が来ました。
わたしとかいちゃんは、中野のおうちに引っ越すことに。
でも、そうすると、この子はどうなるのかな?
考えて私は、荷物を運び出してがらんとした部屋にむかっていいました。
「ここはね、壊しちゃうの。新しい建物が建って、
次に来る人があなたを好きじゃないかもしれない。
一緒に来たいなら来ればいいよ」
引っ越しトラックにわたしとかいちゃん、
とことこ揺られて中野の新しいおうちで暮らし始めました。
ある日、ふと気づくと、部屋の中を歩いている白い猫が。
あの子、ついてきたんだ。
わたしはその子に、
まひるちゃん
と名前をつけました。
それから何度か引っ越しましたが、
まひるちゃんはしばらくついてきていたようです。
そのうち、だんだんと存在が薄くなり、
いつのまにか見えなくなりました。
でも、考えてみると笑えるよね。
一緒に引っ越しトラックに乗ってきたのかな?
トラックの荷台にちょこんと乗って?
それとも、屋根に乗って?
マンガみたいだね。
どうして急にこんなことを書いたのかと言うと、
最近ちらりと
まひるちゃんを見たような気がするのです。
まひるちゃんなのかな?
かいちゃんなのかな??
どっちでもいいよ。一緒にいてくれるんだね。
わたしの大事な、白猫の話。
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