ENO Breath プログラムについて(COVID-19から回復途上にある人たちのためにオペラ歌手ができること)
このnoteでは、COVID-19から回復した後も、呼吸や生活に困難を感じる元患者に対して、English National Opera (ENO) がImperial College London NHS Trustと協力してENO Breathというプログラムを提供している。本稿では、ENOが主催したオンライン説明会(2021/6/23)を中心にその内容を伝える。
このプログラムはSocial Prescribing(社会的処方箋)とよばれる患者に対して地域が一体となって、健康と安全な生活送るための活動である。
対象となるのは、COVID-19に罹患・快復後も、肉体的には完全に回復しているが、呼吸困難・不安感・疲労感を感じている元患者に対して、ENOの声楽トレーナーが声楽的発声のトレーニングを施することで、上記の3点の不安を取り除き、元患者の社会復帰をサポートするプログラムである。Artの感情と動作(呼吸)をコントロールするというアーティスティックな側面からの仮説に基づいてこのプログラムはスタートしている。
このプログラムに参加するには、まず医者によって肺機能が肉体的には回復している保証を受けなければいけない。Long COVID assessment Clinicにより推奨を得た元患者だけがこのプログラムに参加できる。
このプログラムは20名の元患者が1ひつのチームとなって毎週1時間、6週間のZOOMによるオンライントレーニングで構成されている。主なトレーニング内容は、以下の通りである。
・姿勢の確認
・ストレッチ等
・Breathing retraining 方法
・見せて示す/positive connection to the breath の生成
・歌う
このプログラムは決して、歌がうまくなる、みんなで合唱、とかが目的ではなく、安心・リラックスといった場の提供、動くことで呼吸の機能を精神面で元に戻そうとすることが中心である。
教材となる曲は、Summer Timeなどいわゆるララバイとよばれる曲が推奨されている。選曲は以下の点を重視して選んでいるそうだ。
・安心感を感じられる
・色々な地域、バックグランドに受け入れられる
・シンプルな言葉
このプログラムは20年秋口に最初のトライアルが行われ、参加した方の90%以上(すいません、資料がみつからないので記憶です)が効果があったことを認めている。その結果をうけて21年1月より全英の病院ネットワークに広げて1000名の患者を対象にするプログラムへと進化している。
英国に比べると日本の患者数は1/10となっており、こういったいわゆるポストコロナにフォーカスを与える活動はまだ少ない。実際、このプログラムの説明会には全世界(といっても主に北米、南米、欧州)から約80名ほどが参加していたが、日本人の参加は私と、私が誘った私の声楽の先生だけであった。ただ、昨今の状況を考えるとこういったポストコロナの患者対応は必要なのではと感じている。
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