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3年目の深化に期待。LIGA.iブラインドサッカートップリーグ2024開幕


今シーズンはチームとの共創が一つのテーマ

2024年10月5日、品川区立総合体育館でLIGA.iブラインドサッカートップリーグ2024が開幕した。日本のブラインドサッカーの年間イベントは以下の3つが存在する。全国のチームが参加して競う日本選手権。北/東/中/西日本と地域分けし、地域ごとでレベルの底上げを目指す地域リーグ。そして競技力の高さ、組織運営力、競技普及活動への注力度合いなど、複合的な観点から選ばれたチームで争われる、競技性、興行性、組織性に注力するトップリーグLIGA.iだ。このLIGA.iも今年で3年目。今年も埼玉T.Wings、free bird mejirodai、品川CC パペレシアル、buen cambio yokohama の4チームが参加し総当たりで優勝を目指す。今まで埼玉、mejirodaiが優勝している。今年度の新規参加チームはない。

今年のテーマを日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾専務理事に伺うと「自前主義に偏らず外部のステークホルダーとの連携強化を目指している。今節は品川区、品川CCとの連携強化がポイント。ブースエリアの運営は品川CCに全面的にお願いしている。スポンサー獲得、チケット販売なども今まで以上に巻き込んでいきたい」とのこと。実際、各チームも積極的にSNSプロモーションを自発的に行い、チケット販売へのコミットが上がっているそうだ。観客数が目に見える形で増加したかは正直わからないが、品川CCのサポーターは当然としてyokohamaのチームカラーであるオレンジを身につけたサポーターが座席の一ブロックを占めるなど変化が感じられた。

第1試合:埼玉T-Wings 0-0 free bird mejirodai


ドリブルを仕掛ける園部優月(背番号7)

今シーズンの開幕戦は、2022シーズン優勝の埼玉と2023シーズン優勝のmejirodaiの対戦。両者のこれまでの対戦は4勝4敗1分。直近では先シーズンにmejirodaiが2-0で勝っている。埼玉の菊島充監督は「チャレンジャー精神で勝ちたいという気持ちを前面に。追廻しと声の迫力」を選手に伝えてピッチに送り出した。mejirodaiは「菊島宙に仕事をさせない(鳥居健人談)」という意思統一と「鳥居、園部、北郷、永盛がそれぞれの型をもちフィニッシュを決めることに挑戦(山本夏幹監督談)」という気持ちでピッチに立った。

左端の菊島に対して左から鳥居、園部、永盛、北郷が守備につく

両者とも1-2-1の陣形でスタート。埼玉はGKが高橋収平(背番号1)、フィクソに助川裕太郎(同4)、左アラに女子日本代表の菊島宙(同9)、右アラに秦駿斗(同18)、ピヴォに元日本代表の加藤健人(同10)。mejirodaiはGKが泉健也(背番号33)、フィクソに永盛楓人(同5)、左アラに園部優月(同7)、右アラに鳥居健人(同11)、ピヴォに北郷宗大(同9)が入る。北郷を除き、パリポラリンピックのピッチにたった日本代表選手だ。
前半開始から積極的に埼玉ゴールにむかうmejirodaiを跳ね返す埼玉という構図で試合は進む。埼玉は菊島の動きと、秦、助川の晴眼選手の動きがキーとなる。助川は大学でサッカーをやり、ブラサカはまだ1年ちょっとだが、最終ラインでmejirodaiに決定的な仕事をさせない。一方、コメント通り、鳥居は菊島に決定的な仕事をさせない。mejirodaiの方が多くシュートを放ち、13分には北郷がクロスバー直撃の惜しいシュートがあったがゴールを割れず。0-0で前半を終える。

北郷のシュートはクロスバーを叩くも得点ならず

後半は、埼玉がGKを大橋拓郎(背番号12)へ替わり、加藤がフィクソに下り、左に菊島、右は山中優汰(同13)、秦がピヴォへと変化。秦を相手陣内12mライン右フェンスに残し、残りの3人で守る。mejirodaiは前半と同じメンバー。中盤での潰しあいの時間が続く。埼玉の守備の前に決定機を演出できず鳥居、園部らがシュートを放つも枠をなかなか捉えない。

園部のシュート

埼玉は時折、前線の秦へパス、ゴールクリアランスを通すが、シュートまで持ち込めない。試合の終盤、双方のゴールクリアランス合戦の中、残り1分切ったところで菊島がゴール前に駆け込むシーンもみられたがゴールは生れず0-0で試合終了。

北郷(左)と園部(右)が菊島(背番号9)をブロック

シーズン3年目で初めての引き分けスタートとなった。終了後、山本監督はフィニッシュについて「手応えはあるがまだ途上。次のyokohama戦は今まで負けていないので、勝者のメンタリティでしっかり戦い、1勝1分で最終節の品川CCパペレシアル戦を迎えたい」と今後の展望を語った。

第2試合:
品川CCパペレシアル 1-0 yokohama buen cambio

品川の応援団とチアリーダー

二戦目は、ホストの品川とyokohamaの対戦だ。両者の対戦は過去に5度。すべて品川が勝利を収めている。品川としては優勝が、yokohamaとしてLIGI.i初勝利が欲しい一戦、ホーム品川の応援団に負けじとyokohamaのサポーターも集まる。品川のキャプテン森田翼(背番号9)は、「360度から降ってくる応援に震えた。背中を押してもらった」と試合後サポーターの後押しに対する感激と感謝を口にした。

先発は品川がGK藤原幸紀(背番号17)、フィクソは寺西初一(同19)、左アラに森田翼(同9)、右アラに川村怜(同5)、ピヴォに佐々木ロベルト泉(同7)の1-2-1。yokohamaはGKが和地梨衣菜(背番号1)、フィクソに中村駿介(同77)、左アラに齋藤悠希(同7)、右アラに和田一文(同16)、ピヴォに近藤凌也(同5)の同じく1-2-1。日本代表、元日本代表、トレセン参加者が並ぶ品川に対してyokohamaがいかにしのぎながらチャンスを伺うかが鍵となる。

ハロウィン仕様で整列する品川の選手


前半、キックオフは、パリパラリンピックのアルゼンチン対フランスの決勝戦、アルゼンチンのパディージャが浮き球でゴール前にボールを送り、そこに駆け込んだエスピニージョが一瞬にして試合を振り出しに戻したプレーの再現を狙ったものだった。生憎、品川の佐々木が浮かせたボールはペナルティエリア付近に落ちたが少し右サイドにながれ、川村が追いつけなかったが。代表のフィクソのポジションとは違い前線に陣取る佐々木ロベルトが積極的にyokohamaゴールに迫るがシュートで終われない。川村には齋藤が、森田には和田が対応し、ピヴォの近藤も前線から品川の選手を追い回し全体として品川を自由にプレーさせない。


森田(画面中央、背番号9)に着く和田、中村(背番号77)

6分にフリーとなったボールを齋藤が回収しドリブルで持ち上がり、ペナルティーエリア手前右30度からシュートを放つ。これはGK藤原が好反応でキャッチ。品川は前半残り5分すぎから川村が積極的にシュートを放つが「体育館なのでボールが思った以上に転がらず」(本人談)クリーンヒットしなかった。

川村(中央、背番号5)に当たる和田(背番号16)、中村(背番号77)

yokohamaのボールホルダーに対する一番近い選手の早めのチェックと、残りの3人で作る三角形でのディフェンスと女子日本代表GKである和地のブロックも光り、前半を0-0で折り返す。

森田(背番号9)をしっかりブロックする和地(背番号1)

後半は、双方とも選手交代なしで始まる。前半同様品川がボールを握りyokohamaがカウンターを狙うという構造は変わらない。品川はゴール前まで迫るもクリーンシュートが放てない。試合が動いたのは9分。センターライン左の佐々木から、右フェンス前エンドラインより6m付近で待つ森田へのパスが通り、森田がカットイン。齋藤の右足を交わし、ゴール正面から、GK和地の動きと逆の右隅へグランダーで流し込み先制点をあげる。

ゴールを決めてハートの作って喜びを表す森田(中央)

かわされた齋藤は試合後、「彼(森田選手)の位置はわかっていたので、間に合うと思って足をボールに触ったが、またボールが森田選手の足元にいってしまった」と悔やんだ。決めた森田は「GKとの駆け引きで、こう動くだろうと感じて右隅に打った」と解説した。

品川ゴールに迫る齋藤(右)とブロックする寺西(左)

その後、yokohamaは12分に中村の惜しいシュートもあったが、なかなか攻撃が続かず、そのまま1-0で品川が勝利した。yokohamaの齋藤は振り返って、「守備に間してはある程度手応えを感じているが、最後は相手に雨れて体力的にキツく集中力が途切れたのが残念だった。チームとしては1人が二つの役割をこなせるようにトレーニングをつんでいるが道半ば。次のmejirodaiに向けて1ヶ月詰めていきたい」と語った。森田は改めて「引き続きご来場いただけるよう良い試合をしたい」と抱負を語った。

園部と森田がPlayer of the Match

全試合終了後には、Player of the Matchが発表され、mejirodaiの園部優月と品川の森田翼がそれぞれ受賞した。

記念品を受け取る園部。左はJBFA理事長の金子久子氏
記念品を受け取る森田

会場の雰囲気の変化としては、森田も語っているようにホーム品川へのサポーターによる応援が合間にはいり、それが選手の背中を押していたことは間違いない。yokohamaのサポーターも応援スティックを自前で用意して選手を鼓舞していた。また審判も積極的にはサイレンスを求めず、ざわざわ感がいつも以上に会場を満たしていたような気がした。この辺りパリパラリンピックを意識しているようだった。

次節は11月23日 MARUIブラサカパークで開催される。対戦は以下の通り。
第1試合:15:30 buen cambio yokohama vs free bird mejirodai
第2試合:18:00 品川CC パペレシアル vs 埼玉T.Wings
有観客ではなく、去年の第二節と同じくオンラインでの配信のみとなる。
有観客でないため今回のようなサポーターによる後押しがないのが残念だ。ただオンラインなのでどこでも観戦が可能という利点がある。ぜひご家族、ご友人をさそって観戦してはいかがだろうか。


試合終了後、記念のTシャツをスタンドに投げ入れる森田

追記:
初稿においてJBFA理事長の金子久子様を勘違いしておりました。大変失礼致しました。


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