仙台、つくば、品川、そして地元の広島が予選を制して準決勝ラウンドへ〜ブラサカ日本選手権 予選ラウンド広島〜
◾️日本選手権予選リーグ広島会場では
11月16日から二日間、広島文教大学 サッカー場において、第22回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権予選リーグが開催された。以下の通りグループEからHまで12チームが集まり準決勝ラウンドへの4つの椅子を目指して戦いが繰り広げられた。
・グループE:埼玉T.Wings、コルジャ仙台、島根オロチビート浜田
・グループF:Avanzareつくば、乃木坂ナイツ、Mix Sense 名古屋
・グループG:品川CC パペレシアル、スフィーダ世田谷BFC、ミカーレ岐阜
・グループH:A-pfeile広島BFC、ナマーラ北海道、新潟フェニックスファイヤーズ
広島会場での見どころの1つは、グループEの埼玉と仙台の対戦だ。過去日本選手権においては埼玉が4勝1敗と大きく勝ち越している。しかし、仙台は先日の北日本リーグで品川を破って六連覇を達成している。グループEの初戦が、グループの行方を決める大一番となった。もう1つがグループHの広島と新潟の対戦。地元の広島は、前回大会の初戦で新潟と対戦し0-2で敗れている。今回はその雪辱戦でもある。新潟は前回準決勝ラウンドに駒を進めており実力は十分だ。グループFはつくばが、グループGは品川が有力。その他では、今回が日本選手権初参加となる岐阜が1点、1勝するかに注目した。
◾️グループE 埼玉T.Wings 0-1 コルジャ仙台
注目のカードは、広島会場の第一試合でもあった。仙台はチーム事情で前回大会は不参加だったので2年ぶりの出場だ。島根の過去実績から考えるとこの試合の勝者が準決勝ラウンド進出に大きく一歩前進する。これほどのカードが最初に組まれるのはなんとも贅沢だ。
埼玉、仙台ともに1-2-1のダイヤモンドの陣形で試合が始まる。埼玉は左アラの菊島宙、右アラの加藤健人が攻撃の軸。仙台は、右アラ斎藤陽翔とフィクソに構える佐藤翔が攻撃の鍵を握る。佐藤によれば「2年ぶりで緊張もあった」そうだが、いきなり開始2分にその佐藤がボールを奪い、埼玉の両翼が攻め上がった際にできるスペースをついて中央やや右をドリブルで上がり埼玉ゴールへ6mの位置でゴールファーへシュート。ファーストシュートがそのままゴールとなり1-0と仙台がリードする。佐藤は「あらかじめ頭の中にあった(攻撃のイメージ)通りボールを取れればワンチャンある」と狙っていたシュートとなった。ただ、10月の地域リーグで痛めた右膝が100%の状態ではないたね、強く打てずコースを狙った。
その後は埼玉がボールを握る機会が増え、菊島もコート全体を広く動きすシュートのチャンスを狙う。ただなかなかフィニッシュまで辿り着かず、珍しく審判に相手の「ノーボイ(相手が声をだしていない)」をアピールするなど感情が表に出るシーンが度々あった。またいつもは積極的にゴールに向かう加藤の動きも今ひとつ精彩を欠いていた(これには理由があった)。
第2ピリオドが始まると仙台はもう一点を、埼玉は同点にと、共に積極的にゴールを狙う。前半は1本しかシュートがなかった菊島のシュートチャンスも増える。惜しいシュートもあったが、仙台のGK佐々木智昭の好セーブに阻まれ得点に至らない。
加藤もシュートを放つが枠を捉えられない。一方、仙台は前線の斎藤や、スペースがあると感じるや最終列からドリブルで持ち上がってフィクソの佐藤もシュートを放つ。守ってもピヴォの日景淳也、アラの石川竜誠が前から体をはって菊島の動きを止め得点を許さず1-0で仙台が勝利した。
続く島根との試合は、佐藤が5点、斎藤が5点、日景が1点をあげて11-0と大勝。準決勝リーグに駒を進めた。
仙台はこの1年、フィジカルの積み上げと、一つ一つ確認しながら細く戦術を積み上げている。「その結果、最後まで走り抜けた」と佐藤は手応えを口するが、「目標の日本一に向けて、次の準決勝ラウンドにいけることでスタートラインに立った感じ。次を勝ち抜くために試合までの1ヶ月を大切に使いたい」と意気込みを語った。
後に判明することだが、埼玉の加藤は第1ピリオドで、相手に倒された際に肋骨を3本を折りったそうだ。埼玉はフィールドプレーヤー登録が4名のみ。加藤が退場するとフィールド上の視覚障害者が菊島のみとなり、2名以上いなければならないという大会ルールに触れてチームが失格となる。それもあってか、そのままフィールドに残り、翌日の島根戦もピッチに立った。その痛みは想像を絶するが、気迫は賞賛に値する。
◾️グループH A-pfeile広島BFC 3-0 新潟フェニックスファイヤーズ
広島は初戦の北海道戦で、後藤将起、森島爽平、林健太の得点で3-0で勝利して勝ち点3。新潟はその北海道に1-1で引き分けて勝ち点1でこの試合を迎えた。広島は引き分けでも準決勝ラウンドに向かうという状況でキックオフを迎えた。
広島はGKがキャプテン村尾竜次、1-2-1のダイヤモンドを基本にしフィクソに森島、アラの左に矢次祐汰、右に林健太、ピヴォに後藤将起。前の3人は誰もが高い得点能力を持つ。監督の木村陽一は「ドリブルサッカーにとどまらないためにパスの精度とトラップの正確さにこだわる」チームづくりをしている。対する新潟は、GKがキャプテン神山昌士、1-1-2のフォーメーションで、フィクソに知念勇二、アンカーに田村修也、一列目の左に神谷孝柄、右に多田和弘の布陣。神谷のシュート力と代表経験のある神山のシュートストップが新潟の大きな武器だ。神山からこの神谷への配球を如何に広島がカットするかが一つのポイントとなる。
試合は予想通り、第1ピリオド開始から広島は積極的に前の3人で攻撃を組み立ててシュートを放つ。矢次はセンターライン付近でのインターセプトからの左サイドをドリブルで上がり、カットインしてのシュートを何度となく試みる。林は右サイドからカットインしてのシュート、後藤もセンターから左に流れてのシュートを放つなど何度となく好機を作るがGKの神山がしっかり跳ね返す。
10分には、相手トリッピングで得たPKを矢次が蹴るも大きく上に外し好機を逃す。このまま、0-0で折り返すかと思われた13分、矢次が左サイドからペナルティエリア内へカットイン、ゴールほぼ正面で相手DFの隙間をついてグランダーのシュートをゴール左に決めて先制する。これで、広島は北海道戦と合わせてフィールドプレーヤー全員が得点をあげた。
第2ピリオド、なかなか決定的なシーンを作れない新たいして、広島は、4分に林が「神山の苦手なところを狙った」シュートで、7分には矢次が得意のドリブルからのカットインでゴールを決めて試合を決定づけた。新潟は武器である、神山神谷ラインなど前線との連携をしっかりケアされたため、決定的なシーンを作れなかった。広島の矢次は試合後、「(神山神谷の)ホットラインっていうところをしっかり潰しながらプレーができたっていうところで、すごくチームとしても個人としても完成度の高い試合だった」と振り返った。一方で林は「(準決勝ラウンドでは)パスの動かしとか、パスのずれとかが結構今回も多かったんでそこをもっと正確にして時間を使っていきたい」と次に向けての抱負を語った。二日間を締めくくる対戦は、広島が前回大会の雪辱をはらし、準決勝ラウンドに進出した。
◾️初参加のミカーレ岐阜の初戦は。グループG ミカーレ岐阜 1-0 スフィーダ世田谷BFC
ミカーレ岐阜は2013年3月、当時Mix Sense名古屋に所属していた代表の高橋寿允が県立岐阜盲学校での体験会をきっかけに地元の有志と立ち上げたチームで今回、日本選手権に初登場。この夏に静岡県袋井市でのイベントでインタビューした際に「(Mix Sense名古屋の一員として日本選手権に参加した際に)全国の方と知り合えるっていうところがお祭り的な雰囲気も含めて非常に楽しいなと思った。今回楽しみにしている。」「まず1点を」と語っていた。過去5年で日本選手権に初参加したチームは岐阜を除き3つ。初戦を勝利で飾ったのは琉球Agachiのみ。ゲートウェイ山口、スフィーダ世田谷BFCは未だ日本選手権での勝利がない。さて、岐阜はどうだったか。
試合は、世田谷が1-2-1のダイヤモンド、岐阜は1-1-2の両アラが前線にはるフォーメーション。中盤のボールの奪い合いが主流だが、アンカーの位置に様々なチームを渡り歩き経験豊富な池田勢司がボールを前に運び、左右の古川椋也、森康行(ともに晴眼者)へパスを送り、この2人がシュートを放つ。世田谷は、右アラの稲田宗行が何度も12mラインをこえて岐阜ゴールにせまるが、得点に結びつかない。
残り3分、稲田に替わって中学2年生の安倍成一郎がピッチに入ると、FK含めて立て続けにシュートするが得点に結びつかない。均衡が崩れたのが残り6秒、右サイドの森が相対するDFの間隙を縫って右足でシュートを放つと、そのボールはゴールファーサイドに吸い込まれゴール。前半を1-0、岐阜リードで折り返す。
第2ピリオド、世田谷は安倍を最初からピッチに送りパスを集めシュートを託す。ブラサカは初めて2年半ほど。何度とシュートを放つが岐阜のゴールをこじ開けることはできなかった。結局そのままタイムアップ。岐阜は1-0で日本選手権初戦を勝利で飾った。
2戦目は品川CCパペレシアルと対戦し0-6で敗戦。2試合終えて高橋は「(品川の)壁は高かったが、形にはなってたと思うので、それをもうちょっとよりしっかりそれぞれの基本的な技術だったりを向上しながらチームとして形を作っていきたい」と次の目標を語った。
グループFはつくばが2連勝で、浜松への切符を去年に続き手にした。
◾️最終結果
結果は以下の通り。浜松へ仙台、つくば、品川、広島が駒を進めた。
グループE:
1位 コルジャ仙台 2位 埼玉T.Wings 3位 島根オロチビート浜田
グループF:
1位 Avanzareつくば 2位 乃木坂ナイツ 3位 Mix Sense 名古屋
グループG:
1位 品川CC パペレシアル 2位ミカーレ岐阜 3位 スフィーダ世田谷BFC
グループH:
1位 A-pfeile広島BFC 2位 新潟フェニックスファイヤーズ 3位 ナマーラ北海道
(新潟と北海道は、勝点、得失点、総得点、直接対決の結果が一緒。北海道が順位決定のPK戦を辞退したため新潟が2位)
予選を終えての得点ランキングは以下の通りだ。
10点 黒田智成(たま)
8点 菊島宙(埼玉)
6点 佐藤翔(仙台)
5点 齋藤悠希(横浜)、齋藤陽翔(仙台)
4点 佐々木ロベルト泉(品川)、川村怜(品川)、アブディン・モハメド(つくば)
3点 川本一輝(つくば)、辻一幸(葛飾)
2点 橋爪竜万(品川)、林健太(広島)、矢次祐汰(広島)
◾️浜松での戦いは?
次の準決勝ラウンドは12月22日に、サーラグリーンフィールド/浜北平口サッカー場(静岡県浜松市)で開催される。組み合わせは以下の通り。
10:00 キックオフ グループA
buen cambio yokohama vs. 琉球Agachi / A-pfeile広島BFC vs. free bird mejirodai
12:00 キックオフ グループB
たまハッサーズ vs. コルジャ仙台 / 品川CCパペレシアル vs. Avanzare つくば
各グループから2チームが決勝ラウンドに進出する。つまり初戦に勝つことが非常に大切になってくる。広島とmejirodaiは、22年大会の予選での0-0の引き分けに終わった試合が記憶に残る。たまと仙台は2勝1敗でたまがリード。佐藤大介と佐々木智明のGK対決も見ものだ。そして品川とつくばの初の対戦と見どころ満載である。引き続きレポートしていきたい。