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直火蒸留 Vol.1 初めての火入れ

どうせやるなら徹底的に。

ってことで直火を選んでしまう辺りが死にそうに自分の嫌いなところかも。。。

QUSUYAMA LLC.が蒸留所用に間借りしているこの三股の事務所の敷地裏には、こんな美しい沢と豊かな広葉樹の森があって、いつでも涼しい風がそよそよと吹き抜ける。(写真はすこし下流の方にある長田峡)

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とはいえ、真夏の宮崎。
外気温30度。

こんな季節に日向でガンガンに焚火を炊くなんて通常であれば、完全に常軌を逸している行為なわけで。。。しかしながら60Lの蒸留機を沸騰させるには相当な時間とカロリーが必要となる。それでも私的には時間がかかったとしても扱いが楽なガスと思っていたのですが、

『お風呂のお湯を40度まで上げるのにも30分くらいはかかるのに60Lの水が入る釜を100度まで沸騰させるのは相当な時間がかかりますよ?』

と、なんでも出来るスーパー木こりさんに言われ、林業会社の社長には
『なにもサウジアラビアから買ってきたガス使わんでもいいでしょ。』
そう言われてみればそうかも...(ワタシのバカ〜!そこで何故もっとガスで頑張らない!!バカバカ!!)と、いうことでその気になりヒマラヤ精油の蒸留所の製法に倣って薪火に挑戦することに。

とりあえず、今月のサポーターの皆様に送る用の蒸留水の用意のため、涼しい屋内でステンレス釜でIH蒸留をしていると、ガーーーーーーーーーっと2t トラックで薪が運び込まれた。

その薪の量たるや、マジか....。
林業やってる方々の量の単位ってもう私とかの考える量ではなく
『では薪を少し持って来ますからね〜!』
っていう”少し”っていう量がもう...

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木こりさんの言う”少し”の量の薪。

そうか...こんなに使うんだ...そうかそうか。
...でも...自分、ちょっと大丈夫かな...とここでやっと不安になるも、既に後戻りは出来ない。

こちらの林業会社さんでは5つも炭焼きの釜を持っていて炭を焼くようの薪が常にストックされている。これは本当に有難いこと。

で、この薪の山。

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ただ単にガーっと乱暴に置くだけではなくて、今後のことも考えて雨で濡れてケムケムにならないように網を張り、その上に薪を落としてくれるこの繊細さが涙モノのお気遣い。。。(多謝)

ヒマラヤ在住時はタンドール(インドの薪ストーブ)で生活していたし、大台町の木こりさんに薪火の点け方は教えて頂いていたのでこんなデッカい薪でもスンナリと火が点けられる。オマケに焚き火大好きなので嬉々として焚火を始める。

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点火してから蒸留機の隙間を小麦粉を練ったものでペタペタと埋める。

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ここからはもうガンガン強火で沸騰にもっていく。
最初の頃は嬉々としてこの表情だが、そのうち...

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暑さで笑いが引きつってくる....

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しかし、もう火入れを止めるわけにはいかない。
ひたすら
焚くべし!
焚くべし!!
焚くべし!!!

ガンガンに薪をくべている途中に、
『あれ?なんかおかしいぞ?』
『は....!!!!!!?セパレーターを設置していない!!!』

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セパレーターなしで何を蒸留しようとしていたのか...
アブナイアブナイ。

火が安定して来たので日陰に逃げてちょっと休憩。
すぐ隣のケヤキの枝が作る木陰が死にそうにありがたい。
ケヤキさんありがとう。。。

写真にはないけれど後ろのオイルトラップの水たまりにはトンボのカップルが産卵に来たり、カエルが飛び跳ねたり、鳥や蝉やなんじゃかんじゃと野生動物の声が長閑なひとときを演出してくれる。

熱中症を心配して社長が冷たいお水を持って来てくれた。『そうだった。水飲まないと。』普段は全然飲めないお水がごくごくとボトル半分くらいまで飲める。身体が相当水を欲しているのにも気がつかずに蒸留に集中していたことに気がつく。アブナイアブナイ。死ぬところだった。

頂いたお水を飲みながら自分の小さな蒸留機を眺め、毎年行っていたヒマラヤの夏の火入れを思い出す。

初めてあの光景を見てから10年。

まさか、自分で蒸留窯に夏の火入れをすることになるとは夢にも思わなかった。
しかもこの宮崎に移り住み、林業会社の片隅をお借りして自分で山に行き、間伐の杉から枝葉を鉈で集材して、井戸で水を汲み、広葉樹の薪で蒸留している...
本当に人生ってわからないものだな、と。

そんなこんなで
直火蒸留 Vol.2 につづく。

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