なんとか形に。〜カマド制作第4歩目〜
打ちひしがれて自宅に帰った3歩目の昨日でした。
家に帰って『あ〜、もうどうしよう...。』こんなに時間も体力も予算も使って作ったけれどなんと設計図と間違えて作っちゃった。
レンガ積みを壊して、三度目の正直と言ってまた、一から組み直すか、それともそのまま続行するか...
機能、性能、美性とを重視するならぶっ壊してモルタル買い直してまた一からやり直すしかない。そうしたらしっかり長く愛せるカマドになると思う。そのまま続けて生み出しても美しくならないし色々と愛せないものになるかもしれない...。
あ〜...現場行くのやだな....。
あんなに楽しかったのに一気に現場行くモチベーションとテンションだだ下がり。
今日は最後の5段目のレンガを乗せて『パンパカパーン☆!』とインスタとかに上げて一人でキャッキャと喜びながらルンルン盛り上がる予定だったのに...。
夕方早々に寝てしまったために明け方起きてしまったお布団の中で枕抱えてゴロゴロしながら考え込んでいる私に、『これは一体誰のせいだ?アイツのせいだと誰かのせいにしたい自分』とか、『やり直して美しいもの作った方が”さすが純子さん!”とか言われるぜ〜?』などとムッチャ性格の悪い私がぞろぞろと列を成して私の心に囁くわけです。
そして、6時までお布団の中でグダグダと考え
『ヨシ。』
と気合を入れて現場に向かいました。
夜露に当たらないようにすっぽりとカバーをかけて帰宅したのですがそのカバーはやはりびっしょりと濡れていました。
カバーを取ると計画とは違った形のいびつな作りかけのカマドがそこに。
ここまで来て迷っていても仕方がないのでとりあえず手を動かそうと最後の段のレンガを置いてみることに。
設計図よりも一回り小さいので果たして枠が入るのだろうか?
※最初の計画ではこうなるはずだったけど、レンガ半分分縦を小さく組んでしまったのでこの丸い枠が入るかどうかわからない。
色々と試してみたら一回り小さいけれどなんとか枠は置けそう。
昨日バラして砂砂になったモルタルはまだ砂のまま。でも、、、どうしようかな?使えたとしても一番大事なところを作るのに失敗したら危ないな。火を入れなければ大丈夫とどこかのサイトに書いてあったけれど、ここは自分の意見に従おう。
と言うことで、今日使う分だけを憶測して少量のモルタルを練り始めた。
足らなかったらまた練ればいい。
そして、不恰好な煉瓦組みになってしまった最上段に柔らかめに練った耐火モルタルをペタペタと貼り付けて行く。
ほんとは写真を撮ったりなどとしようと思ったけれど、モルタルで手がドロドロなので撮れなかった。云々なのでとにかく写真はない。
パパパっと簡単に塗り込んでおしまい。
ええ?この一番大事なところそんな感じ???と言われそうですがそれ以外に表現のしようがない。
モルタルの表面が乾くまで待って直ぐに火を入れてみようと思った。
ネット内では”ちゃんと乾かさないとダメ”とか”水蒸気爆発を起こす。危険!”などと色々なサイトで注意喚起されていたので”どうかな?危ないかなぁ”とも思ったけれど、私は自分の会社の仕事をこれ以上遅らせるわけにはいかない。
どっかの小金持ち親父が人を招いてイタリア旅行の思い出を聞かせるためにピザ窯D.I.Y.してるのとは訳が違うのである(すごい偏見笑)生活とライフワークと無けなしの予算がかかってる。季節もこの数日を逃したらまた来年まで巡ってこない。
ということで火を入れまでに使った道具を綺麗に洗い、お日様にあてて乾かし、お借りした大きなコンクリの舟とかくわ?みたいなやつとかを片付ける。
大きな道具を全てお借りできたの本当にありがたかった。
私は『プロの道具と知識をおいそれと借りて使うな。』と教育されていたので現場に貸してくださいと言わないで自分で頑張って用意するつもりだった。けれど優しい親方は『一回二回しか使わないもの買うことないですよ』と言って貸ししてくれた。
そんなありがたい気持ちを思い出しながら、出来たカマドの周りを綺麗に掃きしめて掃除してたら、全ての協力者に感謝の気持ちがむくむくと湧いて来た。
遠くの地からオンラインで色々と教えてくれた方を始め、親方、竈門を置くことを承知してくれたこの会社の社長、黙って見てくれてた方々もみなさんありがとう。
そうしているうちに表面が乾いたので早速火をつけることに。
この日のためにカラカラに乾かして置いた杉の小枝と葉を竈門に詰めて丸太を設置して蒸留窯の下の部分だけ置いて中にホースで水を入れ火をつけた。
すると。。。。!!!
ブワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
とびっくりする量の煙がドハデに吹き出した!!!!!!
蒸留窯の下部の隙間から煙突のL字型のパーツのまだパイプつけてない部分はもちろんのこと窯に出来てた隙間のあちらこちらからブワーー!!!!っと。
あわわわわわわ............................!!!
どうしよ..............
きゃーーーー!!!!!!!
ナニこれーーーーーーーーー!!!!!!
と思った次の瞬間。
笑いがこみ上げて来て吹き出した。
田舎の林業会社の庭で謎な竈門と純銅製の窯を前にハクション大魔王でも出て来そうなほどの猛烈な勢いの杉の葉の煙を出して目を剥いている初老の女。
なんだかんだと拘ったこと言いながらこんなブッサイクな窯を作ってしまった自分とか、水蒸気爆発とか心配してたのも含めてなんだか、全てがもう、おっかしくておかしくて......!!!!
美性とか言ってたのはどこのどいつだー!!!
プーーーー!!!!
一人でゲラゲラ大笑いしてたら身体から力が抜けて何だかこのブサイクな竈門がたまらなく愛おしく思えた。
炎が出始め煙も無くなったところでなんだか緊張が一気に解けてお腹が空いたので事務所のキッチンで目玉焼きとトーストを焼き珈琲を淹れこのブサイクで愛しい私の第一子の竈門の横でお昼を食べた。
力仕事で手がしびれていて卵もうまく割れずに目玉焼きまでブサイク。w
何だか肩の力が抜けて目玉焼きを乗せただけのトーストがとっても美味しかった。
煙が治るまでの間にカマドの周りを掃きしめたので気持ちよくご飯が食べられる。
そう。これ。
この美しさも必要だった。
インドで数年間暮らしていた時、私は暖をとるのも煮炊きをするのもタンドールという薪ストーブでこなしていた。インドのちゃんとした家庭では土間のキッチンに置いてあるストーブの周りは、女たちの手でいつも綺麗に履きしめられ、水を打たれて文字通り塵ひとつ落ちていない。
どうやら私は自社の蒸留所にあの状況を作りたかったみたい。
ほんとはコンクリじゃなくて土間が良かったけど今はきっとこれがベスト。
私が本当に求めていたのは本体の見た目の美しさじゃなくてこっちかー。
へー。
と、木漏れ日が射す地べたに座ってトーストを食べながら見上げた竈門。
その向こうの空は青く、先っぽがツンツンで元気な飫肥杉が勢いよく伸びていた。
素晴らしい秋空の中で私の蒸留所の竈門は産声を上げましたとさ。
みなさんどうか私のこの可愛い竈門ちゃんに会いに宮崎に遊びに来てねー!!
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